指輪物語 6 王の帰還(下) J.R.R.トールキン

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とうとう物語が終盤を迎えてしまいました。  今回の読書では地図を片手に彼らの行程を確認しつつ、建物等々の構造を確認しながら、じっくりと読み直していたんですけど、それでもあっという間に終わってしまったような気がします。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

指輪物語 6 王の帰還(下)
著:J.R.R.トールキン 訳:瀬田貞二・田中明子  評論社

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巨大蜘蛛シェロブの毒針で気を失い、オークに連れ去られたフロドは、サムの決死の勇気で救出される。  モルドールにいたった今、フロドにとって指輪の重みは耐え難いものになっていた。  サムに励まされ、支えられながら、2人は、使命の最後の行程にさしかかろうとしていた。
そのころ、冥王との戦いの前哨戦に勝利したアラゴルンたち西国の王の軍は、モルドールの黒門前に押し寄せていた。  ガンダルフの進言で、指輪所持者から冥王サウロンの目をそらすため、自分たちが囮となるべく軍勢を繰り出したのだ。  数において圧倒的に劣るアラゴルンたちは、今にも闇の軍隊に呑み込まれようとしていた。  そのとき・・・・・
運命は終局に向けて突き進んでいく。  指輪の帰趨やいかに・・・・・・。  (単行本扉より転載)

第5巻ではまったく登場しなかったフロ・サム・コンビのその後から物語が始まります。  シェロブに襲われフロドが囚われちゃったところまでは第4巻で語られているので、この最終巻ではサムがフロドをキリス・ウンゴルの塔から救出するところからスタートし、指輪を廃棄し、そしてその後・・・・という流れが描かれます。

最近では映画ばかり観ていたので、原作本の印象がかなり薄れちゃっていたんだけど、その「フロド救出大作戦」の過程でサムはかなりの頻度で指輪を使っていたことを今回の読書で再認識しました。  映画の方ではオークどもに取られちゃいけないとばかりに「ちょっと預かっただけ」っぽかったけれど、実際にはサムはただ単にちょっと持っていただけに留まらず、何度も指にはめていたんですよね~。  そうであればこそ、サムも「指輪所持者」の経験を持つものという流れになっていくわけで、これは結構重要なポイントです。

と、同時に映画ではほとんど触れられることがなかった、実はガンダルフも「エルフの指輪所持者」だったというのが物語では描かれています。  エルロンドが所持していた3つの指輪の中では最強のヴィルヤ(風)、ガラドリエルが所持していたネンヤ(水)、そしてガンダルフが所持していたナルヤ(火)。  そして、その指輪所持者たちと共に、1つの指輪所持者だったビルボとフロドが灰色港から西方に旅だつことにより、いずれはサムにもその時が訪れることを暗示しています。

そしてその指輪と指輪所持者の運命が描かれていることにより、映画の灰色港以降の中でサムやフロドのモノローグにあった「二つに引き裂かれる」とか「欠けることのない1つのもの」という言葉がずっしりと響いてきます。  そして極めつけが最後の最後にある、フロドのセリフです。

私はホビット庄を安泰に保とうとした。  そしてホビット庄の安泰は保たれた。  しかしわたしのためにではないよ。  愛する者が危険に瀕している場合、しばしばこうならざるを得ないものだよ、サム。  つまりだれかがそのものを放棄し、失わなければならないのだ。  他の者たちが持っておられるように。  しかしお前は私の相続人だよ。  私が持っていたもの、持ったかもしれないものは悉くお前に残すからね。  それからお前にはローズがいる。  エラノールもいる。  (中略)  お前の手とお前の知恵は方々で必要とされるだろう。  もちろんお前は庄長になって、やりたいだけ勤めるだろう。  それから歴史に残る稀代の名庭師になるだろう。  そしてお前は赤表紙本の中からいろいろなことを読み、過ぎ去った時代の記憶を絶やさずに伝えるだろう。  そうすればみんなは大いなる危険を忘れることなく、それだけいっそう彼の愛する国を大事に思うだろう。  そしてお前はそうすることによって誰よりも忙しく幸せにやっていくだろう、物語の中でのお前の役割が続く限りね。

       

KiKi はね、何のかんのと言ってもやっぱり映画の方は「娯楽超大作」であり、「ホビット庄、きれい♪」 「バトルシーン、すごぉい!!」「フロド、使命達成、良かった良かった」「スメアゴルも可愛そうなヤツだった」で終わっちゃっていると感じるんですよ。  でも、実はこの物語はもっと哲学的で、言ってみれば「人間性とは何ぞや??」とか「本当に守るべき大切なものとは何ぞや?」というような、考えるだけで頭が痛くなっちゃうような、メリーの言葉を借りるなら「高尚なこと」を感覚的に語っている物語のような気がします。

だからこそ、映画では丸々割愛されちゃった「ホビット庄の掃討」が描かれていることに大きな意味があると思うし、そこで大活躍するのがフロドでもサムでもなくメリーとピピンなんだと思うんですよね。  マークの騎士であるメリーとゴンドールの騎士であるピピンはそういう意味ではやっぱり戦士で、ホビット離れしたホビット(旅の経験とエント水で得た身体的変化;要するにホビットらしからぬ身長の持ち主)で、人間やドワーフ、さらにはわずかに彼の地に残るエルフたちとの交流の中心的役割を果たしていくことになります。  

これに対して、この指輪物語では大きな役割を果たしたフロドは隠居老人みたいに隠棲しちゃうし、赤表紙本を残すためだけに帰ってきた感じ・・・・・。  そして、図らずも指輪所持者経験を持つに至ったサムは灰色港から旅立った2人のエルフと1人の魔法使いがかつて中つ国で果たしていたのと同じような役割(中つ国に生きとし生けるものの導き手であり、美しいものを美しく保ち、メリーが第5巻で語った「高尚なもの」を守る役割)を担うことになったのではないかな?と感じるんですよね~。

ロスロリエンでガラドリエルがサムにプレセントしたものが武器でもなければ映画のようにロープだったわけでもなく、「ガラドリエルが今なお与えることのできる恵みの土」だったこと、そしてモルドールへの苦難に満ちた旅の中でお料理セットを捨ててもサムが持ち運び続けたものがその土だったこと、そしてシャーキー(アイゼンガルドから落ち延びたサルマンのなれの果て)に蹂躙されたホビット庄復興の際にその土が果たした役割等々を思い返してみると、ひょっとしたらもっともエルフ的だった登場人物はサムだったのかもしれません。


それにしても映画の(特に第3部「王の帰還」の)ガンダルフは扱いがちょっと安っぽくなっちゃったような気がします。  ミナス・ティリスでのアングマールの魔王(指輪の幽鬼のボス)との1対1の対決ではちょっと敵わない風情だったし、最後の最後、黒門出動を決定する会議の席ではアラゴルンにセリフを取られちゃっているし、サウロンの口との交渉でもアラゴルンにセリフを取られちゃっているし・・・・・。  ガンダルフはもっと偉大で中つ国の導き手で、ガラ様曰く「ガンダルフが今までしてきたことの中で何一つ必要のないものはありませぬ。」というほどの魔法使いで、アラゴルン曰く「サウロンの唯一の敵」で、木の髭曰く「最も力のある者」なんですけどねぇ。  そうであればこそ、物語の方でゴンドールからホビット庄に向かう道すがら、ガンダルフの言うセリフが生きてくると思うのです。

「わしは今のところはお前さんたちと一緒におるが、まもなくいなくなるぞ。  わしはホビット庄には行かぬのじゃ。  ホビット庄のことはお前さんたちが自分で解決しなければならぬ。  それこそお前さんたちが今まで仕込まれてきたことなんじゃ。  お前さんたちにはまだわかっておらんのかな?  わしの時は終わったのじゃよ。  ことを正すことも、あるいは皆に力を貸してそうさせることも、もはや私の任務ではないのじゃ。」

映画の方の主役はフロドで灰色港のシーンの主役もやっぱりフロドだったけれど、物語を読むとあのシーンでの主役は実はエルフのエルロンドでもガラドリエルでもなく、ついでに言えば1つ指輪の廃棄に尽力したフロドでもなく、ガンダルフだったんじゃないかな?と感じます。    


それにしても・・・・・

この物語はやっぱり良い!  何度読んでも良い!!  決して飽きないし、再読するたびに違うことを考えさせられます。  これだけ深い世界観の物語は今後出て来ないんじゃないかしら?とこの物語を読むたびに思うんですよね~。  読んでも読んでも読みつくした感に到達できない物語。  来年もまた、読むことになるんだろうなぁ・・・・・。  

  


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