プー横丁にたった家 A.A.ミルン

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前作を読んでからずいぶん間が空いてしまったのですが、ようやくこちらの続編を読了しました。

プー横丁にたった家
著:A.A.ミルン 訳:石井桃子  岩波少年文庫

517PMW9KWDL._SX230_.jpg  (Amazon)

おなじみのクリストファー・ロビンと仲間たちが住む森へゆくと、わたしたちはいつでもすてきな魔法の冒険に出会えます―。  プーやコブタたちのところへ、はねっかえりのトラーがあらわれました。  『クマのプーさん』の続編。  (文庫本裏表紙より転載)

前作の Review でもちょっと触れたけれど、実は KiKi はこのプーさんの物語、若干の苦手意識がありました。  その苦手意識を醸成したのは間違いなく「クマのプーさん」の冒頭 及び 最後の「プーさん受難シーン」(要するにぬいぐるみのプーさんが階段を引きづられるシーン)にあるわけですが、そういう意味ではこの「プー横丁にたった家」の方は、その苦手なシーンを彷彿とさせるような描写がない分、気楽に、そして楽しく読むことができます。  

今回、前作を読了してから間を空けたのは実は意図的で、この年齢になっても未だに感じるあのシーンの違和感が冷めるのを待っていたっていうことがあったりします(苦笑)。

世間一般ではどうやら「ディズニー・アニメ」のプーさんの印象が強いみたいだけど、KiKi 自身はその有名らしい「ディズニー・アニメ」の方は観たことも聞いたこともないので、比較のしようもないのですが、幸いなこと(?)にディズニー・プーさんがプリントされたタオルとか子供用グッズなんかにはお目にかかったことがあるので、それと E.H.シェパードの挿絵の比較だけはできたりします。

個人的にはディズニー・アニメの妙に「意思の力」を感じさせるようなプーさんよりは、どこかとぼけていて作為がまったく感じられない E.H.シェパードのプーさんの方が好きだなぁ。  まあ、ディズニー・アニメの物語を知らないからそう思うだけかもしれないけれど、プーさんと仲間たちがみんな本当はぬいぐるみで、そのぬいぐるみを相手に「ごっこ遊び」をしている子供という物語の前提条件を見事に視覚化しているのはやっぱりシェパードの「クラシック・プー」の風情だと思うんですよね。

それにね、恐らくディズニー・アニメのプーさんは動きが滑らかだろうことが想像できちゃうんだけど、仮に原作と同じようにちょっぴりおつむが弱い設定はそのままだったとすると、それは本当に「頭が悪いクマ」に過ぎない存在になっちゃうと思うんですよ。  

でも「クラシック・プー」で描かれるプーをはじめとする森の仲間たちはどこか人形らしい硬直した、ぎくしゃくした動き、自由にはならない抑制された動きを感じさせるものだと思うんですよね。  で、そんな彼らが感じている気持ちやら彼らがしている行動はすべて、幼いクリストファー・ロビンの子供らしい発想の中の出来事だから「単なるおバカ」ではない存在、愛すべき存在になりえるんだと思うんですよ。

そしてそんなプーさんだからこそこの下巻に出てくるこんなセリフが似合うんだと思うんですよ。

「詩とか歌とかってものは、こっちでつかむものじゃなくて、むこうでこっちをつかむものなんだ。だから、ぼくらは、むこうでこっちを見つけてくれるところへ出かけるくらいのことっきり、できやしないんだ。」

これは読み方によってはとっても哲学的なセリフだけど、これぞ「無我の境地」「無作為の極み」だと KiKi は感じます。  そしてこんなセリフを吐くことができるのはプーさんがぬいぐるみだからこそなんじゃないかと・・・・・。

この巻で初登場するトラーがいい味出しています。  これが実際の大自然の中だったらトラとクマとコブタとウサギとカンガルーとロバがこんなに平和に共存するなんていうのは考えられないことのような気もするけれど、これが子供のぬいぐるみ遊びの延長線上にあるからこそ成立する関係であるところが何とも素敵です。 

トラーの登場したばかりの頃は、正直なところ「何もここで新たな登場人物を増やさなくても・・・・・」と思わないでもなかったけれど、トラーが登場したことによりウサギが成長するプロットを読んでいると心がホンワカしてきました。  きっとトラーはクリストファー・ロビンの一番新しいおもちゃだったんだろうけれど、登場当初はどことなくギクシャクした関係しか築けないトラーが少しずつ森の仲間たちと同化していく様は、子どもの柔軟性と大人が想像する以上に備わっている社会性みたいなものを感じさせます。

この巻の最後でクリストファー・ロビンがぬいぐるみ遊び(だけ)に興じていられた子供時代と決別する様子が描かれているんだけど、ここがとにかくすごい!!  クリストファー・ロビンがプーたちと別れを告げること ≒ プーもコブタもカンガもルーもイーヨーもトラーもが生き生きとした存在からモノに変わってしまう ということだし、「頭が悪いクマ」が「おもちゃ箱の中にしまわれた物体」「子供時代を象徴したモノ」に変わってしまうということなのが、このファンタジーが提示している最大のリアル感だと思います。  そう、所詮ぬいぐるみである彼らはクリストファー・ロビンと一緒に成長することはできないのです。


ぼくがいちばんしてたいのは、なにもしないでいることさ

ぼく、もう何もしないでなんか、いられなくなっちゃったんだ


もちろんクリストファー・ロビンが望めば、そしてその時間を惜しまなければ、プーさんも森の仲間たちもいつでもそこ(魔法の森)にいるわけだけど、そこは冷凍保存されたような別世界でクリストファー・ロビンをとりまくことになる「現実の世界」とはどこか隔離されることになるのですから。  


たとえ、どんなことがあっても、プー、きみはわかってくれるね?


プーさんにはクリストファー・ロビンが言っていることの恐らく半分もわかっていなかったかもしれないけれど、それでもやっぱりプーさんこそがクリストファー・ロビンの一番の親友であったことが切実に伝わってくるし、彼と過ごした時間がいかにキラキラした素敵な宝物だったかを物語ります。 それにしてもこの別離シーンで初めて知ったんだけど、プーさんってクリストファー・ロビンの1歳の誕生日のプレゼントだったんですねぇ・・・・・。

因みにこの物語のモデルだった森の仲間たちの実物はこんな顔ぶれ(↓)だったらしい。

clpofami.gif

コブタが見るからにコブタなのが嬉しいなぁ。  そしてトラーがイーヨーよりも(ひょっとしたらカンガよりも?)小さいのがいいなぁ!!(笑)


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