マルコヴァルドさんの四季 I.カルヴィーノ

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G.ロダーリの作品を続けて読んだということもあって、その流れでこちらの積読本にも手を出してみました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

マルコヴァルドさんの四季
著:I.カルヴィーノ 訳:関口英子  岩波少年文庫

41lm-YvDRlL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

都会のまんなかに暮らしながらも、心うばわれるのは、季節のおとずれや生きものの気配。  大家族を養うため、家と会社のあいだを行き来するマルコヴァルドさんのとっぴな行動とユーモラスな空想の世界が、現代社会のありようを映しだします。  (文庫本裏表紙より転載)

まずはこの表紙の腰をかがめたおっさんの何とも言えないとぼけた表情が◎です。  で、この表紙の絵やら本をパラパラとめくった時に目に入る挿絵を見る限りではどれもこれもどことなく風刺的 & おとぼけ風の印象を持ち、ほのぼの~としていつつもちょっぴりピりっと風刺が効いたお話、例えて言えば新聞なんかに掲載されている4コマ漫画的な物語を連想するわけです。  ところがどっこい、これが読んでみるとちょっと違うんですよね~。

物語のタイトルにもなっているマルコヴァルドさんはとある町(都会と言うべきか?)で会社勤めをしている中年の男性です。  会社勤めと言ってもいわゆる「ホワイトカラー系」ではなく「ブルーカラー系」の労働者です。  当然のことながら会社の廊下を風をきって颯爽と歩き、高収入を得ているタイプではなく、ま、はっきり言ってしまえば貧乏暮しを余儀なくされているおじさんです。

そしてこのマルコヴァルドさん、「貧乏子だくさん」の言葉通り、6人のお子さんを抱え、最初は半地階みたいな部屋に、次には屋根裏部屋に住むようなファッショナブルという言葉とは無縁の生活をし、言ってみればギリギリの生活を送っている生活者です。  借金まみれで家賃の滞納は当たり前、日々の食事もギリギリという生活ぶりらしい・・・・。  周りには豊かなものがいっぱいあるにも関わらず、それとは無縁の生活を送っていて、そのことに全く傷ついていないわけではないものの、基本的には「現代風」と呼ばれるものに関しては根っこの部分では興味を持っていない、ちょっと超然とした人物です。


かなりの夢想家で、四季折々の風物を愛でる溢れんばかりの心を持っているのですが、それが裏目に出て都会生活者としては失格と言えるようなドタバタ喜劇(悲劇?)を演じてしまう・・・・・そんな人物。  物語はそんなマルコヴァルドさんの「脱線物語」が20編(春夏秋冬 5回り分≒5年分)描かれています。

自然を愛する(それも観光としての自然ではなく、本来地球上に人間と共存している自然物をあるがままの存在として愛おしく思う)と言うと、現代では「人間性の回復」という言葉と一緒に語られることが多いわけだけど、マルコヴァルドさんのドタバタぶりを見ていると、単なる変人でもあり、「困ったちゃん」でもありというあたりが、この物語の最大の風刺部分なのではないかしら??

と言うのもね、この物語。  言ってみればある1つのパターンが20編全てで貫かれているんですよ。

四季折々の風物の描写
 ここは瑞々しい文章で時に詩的で時に音楽的。  何とも言えない風情を醸し出します。

マルコヴァルドさんが自然に触発され「変な行動」に走る
 「気持ちは分からないじゃないけど・・・」と思わせられる、でも「都会人としては常識はずれ」な行動に呆気にとられます。

想像以上に話が大きくなってしまいやれやれ・・・・・
 「ホント困った人だねぇ」と思いつつも、彼の努力(?)はいつも報われず、そんなマルコヴァルドさんのことをカラカラとは笑えなくて、そこに何かしらの「哀しみ」みたいなものを感じます。

というパターンです。  著者のカルヴィーノも解説文の中で、このマルコヴァルドさんの物語のことをこんな風にまとめています。

大都会のまんなかで、マルコヴァルドさんは、
1. 身のまわりのできごとや、動物や植物など生きもののかすかな気配に、季節のおとずれを感じとる。
2. 自然のままの姿にもどることを夢見る。
3. 最後には、決まってがっかりさせられる。

そしてそんな物語20編を読了した時にふと思うのは、これってかなりデフォルメされてはいるけれど、現代の日本にも通じる部分がある物語だよなぁ・・・・・ということです。

つまり、マルコヴァルドさんは、都会の暮らしにどこか居心地の悪さを感じていて、自然への憧れを持った人物なわけです。  でも、自然に帰ろうとすると必ず失敗してしまう可愛そうな人でもあります。  そんなマルコヴァルドさんの姿に垣間見えるのは「都会人というのは、マルコヴァルドさんと同じように、田舎に憧れてはいるけれど、実際には田舎では暮らせない人」のことを言うのかもしれない・・・・・という現実だったりするわけです。 

「夏、別荘は公園のベンチ」を読むと、自然に憧れるマルコヴァルドさんが、都会生活の中で手に入れられる自然というのは結局のところ「都会の真ん中の公園」、つまりは人工的に作られた自然でしかないことが描かれています。  そんな姿に都会生活に疲れはじめた頃、「六義園」とか「新宿御苑」とか「後楽園」を徘徊していた我が身がダブリます。  

又、「別の夏、牛とすごした夏休み」を読むと、都会の労働者が皆、同じような時刻に一斉に目覚まし時計でたたき起こされ、寝ぼけ眼のまま朝食をかっこみ、満員電車に揺られて同じ方向に向かって民族の大移動を始め、「相手のわき腹をひじでおしあいながら」前へ前へと進んでいく様子が描写されます。  これを読んでいる時、KiKi は随分昔、新宿駅で感じた「こんなに多くの人が脇目も振らず同じ方向にまるでベルト・コンベアに乗せられた部品の如くに動いているのって、ひょっとしたら変なことなんじゃないか?」という想いを、そして、その延長線上に今のLothlórien_山小舎生活があることを思い出させられました。

都市生活、文明社会、資本主義社会、拝金主義等々を揶揄しながらも、そこに何とも言えない優しいまなざしを注いでいるカルヴィーノの文章に、ある種の達観を感じつつ、「人間が生きている現代」「都会の中にもある自然」を感じ、一つ一つの短編をじっくりと味わうことのできた読書でした。  良書だと思います。  もっともこれ、子供向きの本かどうかはちょっとビミョーなところかもしれません。  少なくともさわやかな読後感、未来への希望というよりは、人生の現実・悲哀みたいなものがかなり表に出ちゃっているので・・・・・。  

でも、この年齢になった KiKi が読むと「自然」と「文明」の狭間の中で、飄々ともがいている(って変な日本語ですけど)マルコヴァルドさんの姿に、何とはなしに親近感を覚えてしまうんですよね~。  マルコヴァルドさん、都会で暮らしていた時代には決してお友達になれそうもなかった人物だけど、今の KiKi ならそれなりに仲良くできるかも・・・・・・(?)しれません。

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年9月11日 10:46に書いたブログ記事です。

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