高慢と偏見(上)(下) J.オースティン

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「フランバーズ屋敷の人びと」を読了し、いわゆる「イギリスのアッパーミドルクラス」の生活 & 恋愛模様の物語に久々に触れました。  でもこの物語には何となく「後味の悪さ」みたいなものが残ってしまったKiKi。  そこでその口直し(?)に・・・・・とばかりに、久々にこちらを手に取ってみる気になりました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

高慢と偏見(上)
著:J.オースティン 訳:小尾芙佐  光文社古典新訳文庫

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溌剌とした知性を持つエリザベスと温和な姉ジェインは、近所に越してきた裕福で朗らかな青年紳士ビングリーとその友人ダーシーと知り合いになる。  エリザベスは、ダーシーの高慢な態度に反感を抱き、彼が幼なじみにひどい仕打ちをしたと聞き及び、彼への嫌悪感を募らせるが...。  (文庫本裏表紙より転載)

高慢と偏見(下)
著:J.オースティン 訳:小尾芙佐  光文社古典新訳文庫

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ダーシーの屈折した恋の告白にエリザベスは反発した。  だが、ダーシーの手紙で己の誤解に気づき、数ヵ月後の思わぬ再会で彼への感情は変化していく。  そこへ、末妹の出奔、彼の叔母君の横槍が...。  恋のすれ違いを笑いと皮肉たっぷりに描く、英国文学の傑作、決定訳登場。  (文庫本裏表紙より転載)

この物語、恐らく KiKi は今回の読書が4回目だと思います。  最初に読んだのが高校生の頃。  当時の KiKi にはどこが面白いんだかさっぱりわかりませんでした。  そもそもあの有名な出だし

独身の男性で莫大な財産があるといえば、これはもうぜひとも妻が必要だと言うのが、おしなべて世間の認める真実である

It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune must be in want of a wife.

からして当時の KiKi には気に入りませんでした。  これはもう KiKi のような現代女性には夢物語としか言いようのないシンデレラ・ストーリーに違いないと冒頭から確信させられちゃうなんて・・・・・と言う感じで、ある種の思い込みからダーシーを毛嫌いしていたエリザベス同様、KiKi もどこか斜に構えたまなざしで読了したことを覚えています。

2回目の読書は大学時代。  一応「英文学」を専攻していた KiKi はこの作品を「英文学を学ぶ学生の必読書」という感覚で再読してみました。  相変わらず冒頭の一文は気に入らなかったし、高校時代には単なる道化にしか見えていなかったミセス・ベネットやウィリアム・コリンズ、さらには上流階級のプロトタイプみたいなレディ・キャサリン・ド・バーグなんかにいちいちイライラさせられ、やっぱりどうにもこうにも気に入らない物語でした。


   

そして3回目の読書はハリウッド・映画「ユー・ガッタ・メール」を観たことに端を発していました。  あの映画の中でメグ・ライアン演ずる主人公の愛読書が「高慢と偏見」であること、彼女がかなり質の良いタイプの小さな本屋さんを経営している女性であることに触発され、「長年毛嫌いしてきたこの物語にも KiKi がまだ気が付いていない良さが何かあるのかもしれない。  そもそも英文学の中の1つの名作とされているんだから・・・・・」とばかりに再読してみました。  当時読んだのはちくま文庫に収録されている「高慢と偏見」だったと思います。

因みに高校時代の読書は恐らく「岩波文庫」(あの時代、KiKi が暮らしていた田舎でこのテの本を読もうと思ったら選択肢は岩波文庫しかなかった)、大学時代は恐らく「新潮文庫」(学生時代の KiKi のお気に入りはとにかく「新潮文庫」で、たいていの本は新潮文庫で読んでいた)だったと思います。  それぞれがどんな訳だったかな~んていうことは全く覚えていないけれど、そういう意味では KiKi のこの作品の読書は 岩波 → 新潮 → ちくま → 光文社 という変遷を辿ってきたと思われます。

ま、それはさておき、映画に触発されてちくま文庫で読んだ「高慢と偏見」(つまり第3回目の読書)で初めて KiKi はこの物語の本当の面白さに気が付いたような気がします。  この物語は確かにアッパーミドルクラスの恋愛物語ではあるんだけど、本質はそこにはなくて、人間観察・人間描写の粋を極めた物語だったんだなぁ・・・・と。

そして今回の4度目の読書は「光文社古典新訳文庫」だったわけだけど、今回の読書でその想いは確信に至りました。  この物語は人間と言うしょ~もない生き物のいくつかのパターンを時にデフォルメしつつも普遍的な形で描きだし、その愛すべき愚かしさを抉りだし、それを苦笑したり失笑したりしつつも己や己の周りにある「似たもの」に思いを馳せることを余儀なくさせ、同時にそれらに対して自分が下してきたそれまでの評価を再分析してみる気にさせる、そんな物語だなぁ・・・・・と。

高校時代の KiKi にはこの物語は単なるシンデレラ・ストーリー、富豪で見かけは高飛車っぽいけど実は非の打ちどころのない青年に愛された才気煥発な女性の物語という以上でも以下でもありませんでした。  そしてそのわざとらしい人物背景に反感をさえ覚えました。  そう、まるでダーシーを「嫌な奴」と決めつけたエリザベスと同じように・・・・・・。

そして大学時代の KiKi もそれとは大差ない感覚でこの物語を読了し、「こういう物語を喜んで読むような人がシンデレラ・コンプレックスっていう人種なんだろうな」と思っていました。  この時代までの KiKi は生活の全てを親におんぶにだっこ状態。  ベネット家が抱える経済的事情を頭では理解していたものの実感覚としてはちゃんと理解できていませんでした。  そうであるだけにミセス・ベネットやウィリアム・コリンズの浅ましさ(当時は浅ましさとしか感じられなかった)に嫌悪感を覚えておしまいでした。

でも3回目の読書は社会人になり、経済的な苦労等々も我が身のこととして体感したせいもあって、ミセス・ベネットやウィリアム・コリンズの「そうならなければならなかった背景」みたいなものも斟酌できるようになり、逆にエリザベスの中に「秘められた高慢さ」があったことも見えてきたような気がしました。

この物語の原題は "Pride and Prejudice"。  これまでの日本語訳では「高慢と偏見」とか「自負と偏見」というように訳されていることが多いわけだけど、Pride には「高慢」という意味よりもどちらかと言えば「矜持、自尊心、誇り、傲慢、虚栄心、驕り、自惚れ」といった意味合いが強いと思うんですよね。  

「あの人はプライドが高い」という言い方をすればどちらかというとあんまりいい感情をもっていない時(傲慢とか虚栄心とか驕りとか自惚れといったような否定的な意味)に使うような感じがしないではないけれど、「もっとプライドを持ちなさい!」というような時には自尊心とか誇りといったような、人間の核となる価値観みたいなものをあらわしていると思うんですよ。

でもこのプライド、とっても厄介なことに人が人として存在するうえでとっても大切な核でありつつも、時に人の眼を曇らせる薄闇にもなりうるわけで、そのあたりが実に見事に描かれている物語だよなぁ・・・・と思うわけです。  高校時代の KiKi は「高慢≒ダーシー」「偏見≒エリザベス」というような表面的かつシンプルな構造でこの物語を捕えていたんだけど、実は違っていてこの物語に登場するすべての人に「高慢と偏見」の両方がその人の持っている資質なりの形で備わっている(あのミセス・ベネットやウィリアム・コリンズであってさえも!)ことに気がついた時、初めてこの物語が名作と呼ばれる由縁がわかったような気がしました。

そして今回の読書の「訳者あとがき」の部分で、あの夏目漱石がこの物語を野上彌生子に紹介し、その野上彌生子の愛読書の1冊だったことを知りました。  「夏目漱石」「野上彌生子」といえば高校時代の KiKi のアイドルでしたから、何とも懐かしい思いをしたのと同時に、彼らをアイドルだと思っていた KiKi のあの感覚の底の浅さを思い知らされたような複雑な気分になりました。  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年9月22日 08:23に書いたブログ記事です。

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