ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ編 村上春樹

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先日、このエントリーで予告した「図書館通い再開」の最大の原因をお話するタイミングがやってまいりました。  ま、もったいつけるようなお話でもないんだけど、それはこの度残念ながら(?)「ノーベル文学賞」を逃してしまった村上春樹さんの著作を可能な限り読んでみようと思いたったから・・・・・なんですよね~。

実は KiKi は大学時代はちょっとした村上春樹ファンでした。  田舎からぽっと出てきた冴えない女子大生だった KiKi にとって村上春樹さんの小説っていうのは、どこかくすぐられるものがあったんですよね~。  自分が何者なのかがよくわからず、その実態が何なのかよくわからないながらも持ち合わせていたある種の自尊心との狭間の中で、彼の書く言葉はどこか近しく、どこか眩しく、そしてどこか深く感じ入るものがありました。

社会人になって2~3年ぐらいの間、KiKi は学生時代から1冊ずつ揃えていた村上作品(翻訳ものを含む)の文庫本を大切に大切にマンションの本棚に並べていました。  そして折に触れそれを取り出してはパラッと開いた頁に紡がれている言葉を味わったり、きちんと再読したりということを繰り返していました。

そんな KiKi が村上作品の読書をパタリとやめ、ついでにそれまで大切にしてあった文庫本を一気に自宅近くの古本屋(当時はブックオフはなかった)に持ち込んで処分してしまおうという衝動に駆られ、実際にその行動に及んでしまったのは「ノルウェイの森」の発刊とほぼ時期を同じくしていました。  どうしてそんな衝動にかられたのか?を今思い返してみると大きく分けて2つの要因があったように思います。

1) もともと天邪鬼の気がある KiKi は「ベストセラー」という言葉にある種の嫌悪感に近い感情を持っています。  そしてマスコミが「ノルウェイの森」をとりあげる度に、自分ではよくわからない反発心のようなもの・・・・・を覚え、「ノルウェイの森だけは絶対に読むまい!」 → 「自宅にある村上本も、そろそろ卒業しようか?」 → 「ええい! この際全部処分しちゃえ!!」というプロセスを経て売却に至った。

2) それまでの作品で KiKi が感じていた村上ワールドのキーワードは「個人主義」、「アイデンティティの模索」、「社会通念とは相容れない個性」、「都会的な孤独」みたいなものだったんだけど、それって学生時代ならいざ知らず社会人、それも組織人としてはある意味で邪魔な感性なんじゃないか?と思い始めていた。

ということだったんですよね。  あ、念のために言っておくと上記の2)はこれが正しいかどうかはともかくとして、KiKi のアンテナに引っかかっていたキーワードっていう意味です。  

学生時代には概念的な世界に身を浸すのも結構、自我が確立される過程で自分の深淵を覗きこむのも結構、でも社会人となったらそうそう「自分、自分」とは言っていられない・・・・・。  「他の中の己」、「社会との関係性の中の自分」、「自分の果たすべき役割」みたいなものに拘らなくちゃいけないんじゃないか??  彼の扱う小説の題材は良くも悪くも「見逃しがちな小市民の個視点の小宇宙」というイメージで、それって深く考えているようでいて実は概念を弄繰り回しているだけなんじゃないか??  そんな風に感じちゃったんですよね~。

それが悪いと言いたいわけじゃないんです。  でも、ただでさえそっち方向には思考が向きがちな自分が敢えてそっちばかりに目を向けるような読書生活を送っていたら、KiKi 自身は社会に、組織に、そして他人に何ら能動的な関係性を築けない人間になってしまうんじゃないか??  そんな本能的な危機感みたいなものを抱いちゃったんですよ。

ま、てなわけで、それ以来どんなにバカ売れしていようが、村上作品とは距離を置いた生活をしてきた KiKi なんですけど、最近になってまた「久々に村上作品を読んでみてもいいかもしれない・・・・・」と思い始めたんです。  これは、今現在、KiKi が会社員生活をしていないことと関係があるかもしれないし、会社員時代にかなりディープな「社会的に責任ある立場」を経験してきたことによるある種の精神的余裕のせいかもしれません。  そこへここへきての彼の「ノーベル文学賞候補報道」です。

KiKi の個人的な感覚からすると KiKi が知っている彼の作品はノーベル文学賞に相応しい作品とはあんまり思えないんだけど、KiKi が見ないふりをしている間に何かが大きく変わったのかもしれないし、ここらでいっちょ読んでみようかな・・・・と。  でも、「一度は大々的に処分しちゃった本たち」なわけで、買うのはちょっと癪に障る・・・・・(苦笑)  ま、てなわけで、手っ取り早い所で図書館本ですませてみようかな・・・・・と。

とまあ、まえがきが長くなっちゃったんですけど、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

ねじまき鳥クロニクル 第1部 泥棒かささぎ
著:村上春樹  新潮文庫

417AfbamURL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

「人が死ぬのって、素敵よね」  彼女は僕のすぐ耳もとでしゃべっていたので、その言葉はあたたかい湿った息と一緒に僕の体内にそっともぐりこんできた。  「どうして?」と僕は訊いた。  娘はまるで封をするように僕の唇の上に指を一本置いた。  「質問はしないで」と彼女は言った。  「それから目も開けないでね。  わかった?」僕は彼女の声と同じくらい小さくうなずいた。  (本文より)  (文庫本裏表紙より転載)

久々の村上作品をこの「ねじまき鳥クロニクル」にしたのは、特にこれといった意味はなく、たまたま吾妻郡図書館に文庫本で全巻揃っていたのがこの作品だったからです。  でもまあ、ある意味でかつて「話題騒然」だった作品からスタートするのも悪くないかな・・・・・と思ったのは事実ですけどね。


今日の段階では全3部作のうち第1部のみなので、まだまだお話がどっちへ転がっていくのやら・・・・・という感じです。  村上作品なのに「ノモンハン事件」に関連するお話がちらっと出てきたのが個人的には意表をついていました。  もっともその「出し方」みたいなものはやっぱり村上春樹だなぁ・・・・・と。  登場人物の昔語り(≒ 伝聞)という出し方もそうだし、「だから何?」がはっきりしないあたりもねぇ。

とりあえずこの第1部では物語的な展開とでも呼ぶべきものが全くと言っていいほどありません。  行方知れずになった主人公夫婦の飼い猫、非常識といってもいいような電話をかけてくる謎の女、満月や日蝕に影響される馬の話、正体不明の占い師;加納マルタ、クレタ姉妹の謎めいた予言、プ~生活の中で知り合った近所に住む笠原メイという女の子、妻の実家と関係があった占い師の本田さんとのあれこれ、本田さんの形見分けで奔走する間宮中尉によるノモンハンの挿話、涸れた井戸の話、etc.etc. と、現段階では何のための話なのかよくわからないぶつ切りの挿話が繰り広げられてお終い・・・・・そんな雰囲気です。

ただこれらの一見脈絡のなさそうな挿話の中心にいる主人公、岡田亨の非社会性、ブラックホールのような底なし感の漂う精神的な闇、空虚さ・・・・・みたいなものはヒシヒシと伝わってきます。  情景描写、心象風景描写は「さすが村上春樹」と思わせるけれど、正直、今のところ「よくわかんない」感じ。  まあ1つはっきりしていることは、この雑多な混沌こそ村上ワールドだなぁ・・・・・と。  要するにどこか受動的というか、傍観者的というか、主体性がないというか・・・・・。

まあ物語はまだ始まったばかり。  第2部に進んでみたいと思います。



    

  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年10月30日 11:32に書いたブログ記事です。

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