モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番 K. 421

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今日はモーツァルトの「ハイドン・セット」の第2曲。  人口に膾炙された副題こそ持たないものの名曲の誉れ高く、ハイドン・セットの中で唯一の短調のカルテットです。  この曲、もう半端じゃなく KiKi は好きなんですよね~。  特にこの曲は秋という季節がとってもよく似合う・・・・。

モーツァルト 弦楽四重奏曲第15番 K. 421
ASIN: B0002Z83NO  ズスケ・カルテット

Mozart_SusukeQ.jpgのサムネール画像  (Amazon)

この曲、実はモーツァルトの妻コンスタンツェが第一子を出産するのとほぼ同じ時期に作曲された曲です。  現代人の感覚だったら喜ばしいはずの出来事を前に、どうしてこんな短調の曲を??と思わないでもありません。  しかもまるでモーツァルトの不安が的中したかのごとく、この時誕生した赤ちゃんは早世してしまいます。  でも、モーツァルトは決してその赤ちゃんの悲劇を予言してこんな曲を書いたわけではありません。

KiKi がまだまだお子ちゃまだった頃には、KiKi はその理由を当時の出産の危険度の高さを案じていたためか、はたまた父になる不安のためかと感じていたんだけど、今回この音楽を聴いていて別のことを感じました。

それはね、自分の子供が生まれてくるというその現実の前でモーツァルトが初めて我が事として認識した「新しい生命の誕生といずれは消えていく自分」というある種の諦念、もっと言えば「死」を初めて意識したその内心の吐露だったんじゃないのかなぁ・・・・と。

実際、この「ハイドン・セット」あたりからモーツァルトは聴衆に迎合しない・・・・と言うか、自己表現の世界に踏み込んでいったように感じるんですよね~。  要するに「職人音楽家」から「独立した芸術家」へ移行しようとしていた・・・・とでも言いましょうか。  これも現代的な言葉で言えば「自分がこの世で成し遂げるものを希求し始めた;存在意義を求めた」という感じ。  そしてそれは「死」という概念とは決して切り離せないものだったのではないか?と。

特にこの曲は全体のバランスもさることながら、瞬間瞬間の美しさの際立つ音楽だと思うんですよ。  まるで人間の一生と同じように・・・・・。  そうであるだけに KiKi はこの音楽には「ロマン派」に通じるものを感じるんですよね~。  ロマン派まではいかないにしても、古典派とロマン派の橋渡し的存在だったシューベルトにはかなり近しい音楽だなぁ・・・・・と。  

<第1楽章:アレグロ・モデラート>
聴いてみるとアレグロというテンポでイメージするような速さ・軽快さは感じられません。  どちらかというと落ち着いたテンポで、冒頭のソット・ヴォ―チェ(ひそやかに柔らかく)という指示そのままに静かに悲しげに始まります。  そしてあっという間にその悲しさ・寂しさ・辛さは頂点に。  このいきなりの高音への跳躍は聴く者をドキリとさせ、同時に彼の哀しみがいかに深刻なものであるかを切々と訴えます。  でもその哀しみを長々と訴えないのがモーツァルトです。  

第2主題では低音楽器の刻み音の上を第1ヴァイオリンが長調のメロディを奏でます。  もちろん底抜けに明るい長調の音楽ではなく、どこか憂愁を帯びています。  その後の展開部では第一主題が姿を変えながら時折姿を垣間見せるんですけど、その表し方の頻度というか、程度と言うかが実に絶妙なんですよね~。  忘れさせない程度にはチラっと出てくるんだけど必要以上に強弁しない・・・・そんな感じです。

<第2楽章:アンダンテ>
穏やかで優しさに富む音楽です。  何かに純粋に憧れている・・・・そんな風情の音楽。  休符の使い方が絶妙で、深く静かでたっぷりとした呼吸を思わせます。  一応、長調の音楽なんですけど、その裏には「不安」とか「淡い哀しみ」が隠されています。

<第3楽章:メヌエット>
内に秘めた激しさを表現したモーツァルトらしいメヌエットです。  そしてこの楽章の白眉は中間部のトリオだと思うんですよね~。  このトリオ部分はあまりにも有名でそこだけを切り取ってどこかで聴いたことのある方もいらっしゃるのではないかしら??  「天国的」っていうのはこういうのを言うんじゃないかしら??  KiKi はここに「生命が生まれ出づる神秘」みたいなものを感じて、時に「畏れ」みたいな感情をさえ抱いちゃうんだけど、ピツィカートに乗って奏でられる高音ヴァイオリンの調べには聴きほれるしかありません。

<第4楽章:アレグロ・マ・ノン・トロッポ>
最終楽章は変奏曲です。  この変奏曲がこれまた半端じゃなく素晴らしい!!  ここ、どんな言葉を使っても陳腐になり過ぎちゃうような気がするほど素晴らしいんですよ。  気高く、まるでエンドレスのワルツのように奏でられる第1楽章の哀しみ、第3楽章のトリオ部分の神秘さを保つ胸に染み入るような哀切な主題と変奏にはもう抵抗する術もありません。


この曲は若者には似合いません。  どこかで自分のエンディングを意識し始めた人間にしかわからない「何か」がこめられた音楽だと感じます。  まあ、それは KiKi 自身がたまたま今、そういう時期にさしかかっているから感じている「何か」に引き寄せてこの音楽に身を委ねているだけなのかもしれませんが・・・・・(苦笑)

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年10月18日 11:41に書いたブログ記事です。

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