モーツァルト 弦楽四重奏曲第14番 K. 387 「春」

| コメント(0) | トラックバック(0)

モーツァルトのカルテットを順番に聴きながらエントリーを書いてきているわけですが、今日から傑作の誉れ高い「ハイドン・セット」に突入します。  「ミラノ・カルテット」、「ウィーン・カルテット」とそれぞれの時期に6曲ずつのカルテットを書いてきたモーツァルトが「ウィーン・カルテット」から9年という年月を経て書いたのが「ハイドン・セット」の6曲です。  今日はその第1曲目、「春」という副題で呼ばれることもある K. 387 のカルテットです。

モーツァルト 弦楽四重奏曲第14番 K. 387 「春」
ASIN: B0002Z83NO  ズスケ・カルテット

Mozart_SusukeQ.jpgのサムネール画像  (Amazon)

子供が音楽教室などで習う曲もそうだけど、難易度が低い曲と高い曲を比較すると、もちろん曲の構成やら音の厚みやらという部分の違いも大きいけれど、わかりやすいところで言うと「曲の長さ」というヤツに1つの傾向があったりします。  もちろん「曲が長ければ難しい」というほどシンプルなものではないのですが、それでも短い曲は比較的技術的にも簡単なことが多い(誤解のないように言い添えるならこれは曲の良し悪しとは関係ありません)のはある種の真実だと思います。 

モーツァルトのカルテットにもこのシンプルな法則は見事に当てはまり、「ミラノ・カルテット」はその大部分が1曲全部を演奏しても10分弱、「ウィーン・カルテット」はその大半が15分強だったのに対し、このハイドン・セット第1番の K. 387 は約30分です。  

一つ一つの楽章が長く、凡そ考えられる限りのありとあらゆる技法がそれぞれの楽章で見事に駆使され、音の厚み、各声部の絡み合いもそれまでのカルテットとは一線を画していて、モーツァルトの成熟を否が応もなく感じずにはすまされません。  因みにこの「ハイドン・セット」、献呈された相手は当然の如くハイドンで、モーツァルトは以下のような献辞を書いたとされています。

親愛なる友ハイドンに!

自分の子供達を広い世間に送り出そうと決心した父親は、それを、幸運にも自分の最上の友人となった高名なお方の保護と指導にゆだねるのが当然のことと考えました。  高名なお方、そして私の最も敬愛する友人よ、これがとりもなおさず、私の6人の息子たちです。

これらは、本当に長い辛い努力の結実ですが、私の幾人かの友達から与えられた希望、つまり、私の努力がせめて幾分なりとも報いられるだろうと考える希望が、これからの私を励まし、そしてこれらの作品が何時かは私にとって慰めになるだろうと期待しております。   最も親愛なる友人よ。  貴方が前回この都に滞在された折り、貴方はご自身から私の作品について満足の意を表明して下さいました。  これによって私は何よりも勇気づけられ、これらの作品を貴方にゆだねても、貴方のご好意に不似合いにはならないものと思いました。

何とぞこれを受取って下さり、その父とも、案内者とも、友とも、なって下さいますように。  今後私はこの子供たちに対する一切の権利を貴方にお譲りいたします。  それゆえ、生みの親の私が見逃したかも知れない数々の過ちを、どうか大目に見てやって下さい。  そして貴方の寛大な友情をこんなに大事に思っている私に対して、貴方の変わりない友情をいつまでも賜りますようお願いいたします。

衷心から貴方の最も誠実な友  W.A. モーツアルト  1785年9月1日 


この文章からは当時の作曲家がいわば「音楽職人」であったにも関わらず、モーツァルトがお金のためにこの6曲を書いたわけではないということ、青年モーツァルトのハイドンに対する尊敬の念、そしてこれら6曲に対する並々ならぬ自信といったようなことが感じられると思います。

まあ、それはさておき、この曲に関してちょっと書いておきましょう。  この曲、さほど有名なことではないのですが「春」という副題で呼ばれることがあります。  このハイドン・セットの中でも同様に副題がついている曲がある(例えば第17番の「狩」とか第19番の「不協和音」とか)にもかかわらず、どことな~く「とってつけたような」印象があると感じるのは KiKi だけかしら??  同じ「春」というタイトルで思い出すのはベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタとかシューマンの交響曲だけだしねぇ・・・・。

恐らくは第1楽章の生き生きとした響きの中にそれまで眠っていたありとあらゆる生命が目覚める季節の喜ばしさ・・・・みたいなものを感じるからなんだろうと思うけれど、それにしてもねぇ・・・・。  第1楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ・アッサイ(非常に生き生きと) で一番印象的なのは強弱のコントラストとテーマの持つ雰囲気のコントラストにあると感じます。  そしてここまでモーツァルトのカルテットを若い方から順番に聴いてきた耳には各楽器の独立性、主張が際立ってきたことがやはり感動的です。

第2楽章のメヌエットはちょっと独特な顔立ちをしていて、ここだけを単独で聴くと「え?」とキツネにつままれたように感じたりもするんだけど、全体の中の一部として聴くと妙に安定感をもった存在として輝いています。  まあ、凡そ「舞曲」っていうイメージとはかけ離れているけれど・・・・・(苦笑)

そして KiKi の大好きな第3楽章:アンダンテ・カンタービレ。  考えてみると「アンダンテ」というテンポで美しく歌う名人の筆頭はモーツァルトなんじゃないかしら??  「アンダンテ」ってある意味ではちょっと中途半端なテンポだと思うんですよね。  たっぷり歌うには軽すぎるテンポのような気もするし、逆に急き込むような性急さには欠けるし・・・・・。  でもモーツァルトの音楽にはそういう中途半端感とか、もたつきとか、浅薄さとかを感じたことがないんですよね~。  逆に「こうでなくちゃ!」という納得だけがあるんですよ。  自然に腑に落ちる・・・・そんな感覚です。  ことにこの第3楽章の音楽は上質のベルベットをそっと撫でた時に感じるような不思議な気持ちよさに満たされます。

最終楽章:モルト・アレグロ はドキドキさせられる音楽。  出だしのフーガがまず意表をついているし、そこから始まる怒涛の音の洪水が躍動感を煽り、とにかくボケ~っと聴くことをはなから拒否している音楽だと思うんですよね。  一瞬の隙も与えられないまま、前のめりに音楽に巻き込まれていく・・・・そんな錯覚をおぼえる音楽だと思います。  そして全曲を聴きとおした時に感じるのはある種の「達成感」みたいなもの。  ただ聴いているだけなんですけどねぇ・・・・・(苦笑)  

う~ん、やっぱり「ハイドン・セット」は侮れません。  

    

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://poco-a-poco.chu.jp/mt/mt-tb.cgi/1340

コメントする

2015年2月

1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28

Current Moon

CURRENT MOON

東京のお天気


山小舎のお天気


Booklog



ブクログ

アーカイブ

ウェブページ

Powered by Movable Type 4.261

TrackbackPeople

クラシック・ピープルの Trackback People Site


チェロ ラヴァーズの Trackback People Site


Piano~ぴあの Trackback People Site


ピアノオススメ教本の Trackback People Site


ピアノ教室の Trackback People Site


Book Love Peopleの Trackback People Site


本好きPeople・ぴーぷるの Trackback People Site


今日読んだ本の Trackback People Site


ファンタジーが好き♪の Trackback People Site


この絵本がすごい!の Tackback People Site


児童書大好き♪の Trackback People Site


ハヤカワepi文庫の Trackback People Site


岩波少年文庫応援団の Trackback People Site


薪ストーブの Trackback People Site


週末は田舎暮らしの Trackback People Site


野菜育てPeopleの Trackback People Site


ガーデニングの Trackback People Site


パッチワークキルトの Trackback People Site


あなたの訪問は?


日めくりカレンダー


Real Time News


カテゴリ

ノルンはいくつ?

本が好き!


読書メーター

KiKiさんの読書メーター
KiKiさんの読書メーター

最近読んだ本

KiKiの最近読んだ本

今読んでいる本

KiKiの今読んでる本

読了目標





今やってるゲーム

KiKiの今やってるゲーム

このブログ記事について

このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年10月15日 11:30に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「田焼き」です。

次のブログ記事は「薪ストーブの初火入れ & 田んぼの鋤きこみ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

高速運賃





Edita

ブロガー(ブログ)交流空間 エディタコミュニティ

名言黒板


作家別タグ