オドの魔法学校 P.A.マキリップ

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マキリップの積読山崩し企画の第3弾。  前回ご紹介した本とは逆に、書影をご紹介するのが嬉しくなってしまうほど美しいこちらを読了しました

オドの魔法学校
著:P.A.マキリップ 訳:原島文世  創元推理文庫

51qGP3+MPML._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

孤独な青年ブレンダンのもとに、オドと名のる女巨人が訪れた。  魔法学校の庭師になってほしいというオドの求めに応じたブレンダンだったが、慣れない都の生活になかなかなじめない。  一方王と顧問官たちは、歓楽街で興行する魔術師の噂に神経をとがらせていた。  件の魔術師はただの興行師か、それとも本物の魔法使いなのか。  幻想の紡ぎ手マキリップの謎と魔法に満ちたファンタジー。   (文庫本裏表紙より転載)

まずはこの表紙の絵、美しいと思いません??  KiKi はねぇ、元々ブルー系の色には滅法弱いんですよ。  冴え冴えとした空に浮かぶ月のような弓なり形。  そこにくつろいで身を預けているかのような女性1人。  そのコスチュームがこれまた美しく彼女が手にしたお面は妖しく、それだけで KiKi の美意識をグリングリンと刺激してくれちゃいます(笑)  この表紙で存分に膨らませた妄想・イメージをそのまま言語化したような物語でした。

ただね、マキリップの物語ってどうも感想が書きづらい物語ですねぇ。  というのも何か主張したいものがあるか?と問えば恐らくそれがない作家さんのような気がするんですよね。  ある種の神秘を幻想的に美しく描く才には溢れているけど、テーマは何??と戸惑っちゃう・・・・・そんな印象なんです。

この物語、深読みしようとすると KiKi の頭を巡るのは、例えば「ケルトとローマ帝国の関係」とか「世俗権力と科学の対立」とか、「苦しいときの神頼みを得意とする人間」とか、そういうことに対するある種のアンチ・テーゼに読めないでもないような気がするんだけど、恐らくマキリップさんはそんなしょ~もないようなことを声高に主張したいと思っているわけではないような気がするんですよね。(苦笑)

普通の人間には駆使することができず、ついでに理解することができないある種の力と普通の社会生活を恙なく過ごしたいと欲する人間が共存する1つの方法論はこの物語のタイトルにもなっている「オドの魔法学校」のように世俗権力によるガジガジの管理下に置く・・・・・というのが手っ取り早い対処方法なわけだけど、それってある時間を経れば必ず歪が生まれるわけでして・・・・・・。 

原始的に「魔法」と呼ばれてきたものと、集団生活の規律というヤツはそもそも相性がよくないんだよなぁ・・・・・というある種当たり前のことを再認識する読書だったように思います。

それにしてもこの物語に登場する「黄昏区」という名前の歓楽街は何とも魅力的だなぁ・・・・・・。  個人的にはこの「黄昏区を持つケリオールという王都」≒「都市」≒「人工的な構築物とそこに住まう人々」 vs. 「古代からの絶大な力の眠るスクリガルド山付近」≒「田舎」≒「自然と共存しながら生きていく人々」というのと同じような対立構造を感じながら読んでいたんだけど、この2つの対立軸ではどちらかというと後者よりの生き方を選んだ KiKi をして幻惑されそうな魅力を放っていたのが「黄昏区」でした。

そこにあったのは表面的なきらびやかさとはどこか異質なもの。  どんなものをも受け入れる懐の深さとあらゆる事物をあるがまま以上に輝かせる人間が本能的に持っているあふれんばかりの期待感が満ち満ちていて、そこに希望・夢といったようなものを感じさせてくれたように思いました。  思い起こせば田舎育ちの KiKi が大学進学と同時に上京した際に感じていたある種の期待感はこれと同じようなものだったよなぁ・・・・・と。

本当の事件が起こるのは実はこの物語の後日譚になるのではないかと思うけれど、この物語が提示している「得体の知れない庭師 & 都を騒がす妖術師とケリオールという王都に暮らす普通の人々がどのように共存していくのか?」というお話は恐らく人類がこれまでの歴史の中で繰り返し行ってきたある種の選択と同義なのだと感じます。  

考えてみると「遺伝子組み換え技術」、「クローン技術」、「ips 細胞と医療」な~んていうのも、この物語の「魔法」とは別次元とは言え、やっぱり「神の領域に属する魔法みたいなもの」でもあるわけで、それらの技術と人間がどんな風に付き合っていくのか、私たちはある種の選択を迫られているわけです。  その時代、時代であるレベルの倫理観によって選択した共存の仕方を見直したりすることも出てくるのではないかと思います。  そんな時、オドという存在を持たない私たちがどんな風に何を考えどんな選択をすべきなのか・・・・・・。  

答はわからないけれど、少なくともこの物語に出てくるヴァローレン(魔法学校の優秀な卒業生で、現在国王の顧問官)のような思考停止状態になっていたくはないものです。  とは言っても、ヴァローレン、結構興味深い人物で、この物語の中ではけっこう存在感があったんですけどね(笑)

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