グリフィンとお茶を 荻原規子

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昨日、久々に「吾妻郡図書館」に行ってみました。  春から秋までは野良仕事が忙しいのでに返却期限という義務(ある期間内に読み終える & ある期日までに必ず出向く)を抱えた読書には向かないと判断し、ちょっと図書館通いから遠ざかっていたのですが、そろそろ野良仕事も一段落。  ようやく図書館通いが苦にならない目途が立ちました。  ま、それだけが理由じゃなくて、もう一つ別の理由もあったんですけどね(苦笑)  そのお話は近日中にいずれ又・・・・。  ま、何はともあれ、久々の図書館本1冊目の読了本はこちらです。

グリフィンとお茶を ~ファンタジーに見る動物たち~
著:荻原規子 徳間書店

51lPhTgc4gL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

「ナルニア国物語」のライオン王アスランは、なぜあれほど、特別な感じがするのか。  「ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち」が伝える、現代の人間とはまったく異なる生き方とは・・・・・。
子供の本の中だけでなく、古典や神話においても重要な役割をになっている、幻獣やさまざまな動物たち。  「勾玉」三部作、「RDG」シリーズなどで知られる、日本のファンタジーの旗手荻原規子が、幼いころから愛した「動物物語」を振り返りつつ、ファンタジーとは何か、物語が人の心にもたらすものは何かを掘り下げてゆく、珠玉のエッセイ。  ファンタジーや児童文学、神話や古典の読書案内としても楽しめます。  (単行本扉より転載)

以前からこのブログでは何度かお話しているように、荻原規子さんという作家さんと KiKi の相性は決してよいとは言えません。  とは言うものの、同世代の女性として彼女の活躍にはそこそこ興味はあるし、このブログに彼女のブログのリンクも貼ってあるしということで、この本のことは以前から知っていました。  この本は彼女の物語作品というよりはエッセイということなので、物語作品との相性はさほどよくなくても結構通じるものがあるかもしれない・・・・という淡い期待を胸に今回借り出してみました。

結論から言うと、どうやら彼女とは物語作品のみならず、エッセイであってもあんまり相性はよくないみたいです・・・・・(苦笑)  但し、やはり同世代に育った共通項というものはそこかしこにあるもんですねぇ。  彼女が幼少時代にご実家で揃えられていたという「少年少女世界の名作文学」というシリーズのお話なんかは KiKi にとっても実に懐かしい、身に覚えのある社会現象(?)のお話でした。

そうそう、あの頃は「岩波文庫」こそ既に存在していたものの「新書」なんていうのは世の中に存在していなくて、今ほど本の数や種類も多くなくて、その代わりと言っては何だけど「○○文学全集」というヤツが結構流行って(?)いてねぇ・・・・。  革装丁とまではいかないけれど、昨今のハードカバーの表紙よりはずっと厚紙の表紙、背表紙の金文字が豪華なハードカバーでサックに入っている配本形式の全集ものを1冊ずつ揃えていき2年ぐらいすると全集が自宅の本棚にド~ン!と居並ぶというパターンで購入する家庭がそこそこありました。

よくよく考えてみるとあれも敗戦で全てを失った人々が少しずつ文化的な生活を取り戻していく過渡期特有の現象だったんでしょうね。  KiKi の実家には荻原さんちの「小学館 少年少女世界の名作文学」はなかったけれど、従姉妹からのおさがりの「河出書房新社 少年少女世界の文学全集」とか、出版社は忘れちゃったけれど「少年少女 ノンフィクション全集」といった全集物がドドド~ンと本棚に鎮座していました。


出版社とシリーズ冊数こそ違うものの、収録されている物語にはさほど大差はなかったようで、彼女がこのエッセイで取り上げている作品の多くは KiKi も又、恐らく彼女と同じ時期(年代)に同じような遊びをしながら読み進めていった物語とほぼ同じだったことがよくわかります。  もっとも、どれもこれも「絶対読んだ!」という確信はあるのですけど、そのうちの何冊かは「はて?  どんなお話だったっけ??」と思わないでもなかったりはしたのですけどね(苦笑)

彼女が大学時代の「児童文学研究会」の合宿で好きな本3冊をあげている中で、KiKi がAmazon Market Place で購入して到着を待ちわびている「妖女サイベルの呼び声 P.A.マキリップ」があることにちょっとビックリしました。  彼女は KiKi よりほんのちょっとだけ年長のはずだから、大学時代は何気にかぶっているはずなんだけど、その時代には彼女はもうマキリップを楽しんでいたんですねぇ・・・・・  これは到着が更に更に楽しみ♪です。

さて、彼女のこのエッセイの切り口はファンタジー作品に数多く出てくる「モノ言うケモノ」を題材にして、それ以外にも自身の子供時代に接点のあった動物に関する考察(?)を述べるというスタイルをとっているんだけど、一つ一つの語りはどちらかというと「優等生的な語り」が多くて、あんまり共感することはできませんでした。  ただ、辿ってきた道のりが似通っている、「同じ時代を生きてきた同志」みたいな感覚だけはヒシヒシと感じられるもので、そういう意味ではそれなりに楽しめるものでした。

彼女やル=グウィン(ゲド戦記の作者)が追及している「ファンタジーとは何か?」というテーマは実は KiKi 自身も追及しているテーマの1つなんだけど、これって「ある世代特有の拘り」のような気がします。  恐らくは、TVゲームが当たり前のように存在している時代に育った人たちは「ファンタジーとは何か?」な~んていうことを敢えて突き詰めて考えようとは思わないんじゃないのかなぁ・・・・・。

荻原さんや KiKi の子供時代っていうのは、戦争の傷跡こそ身の回りに残っていないものの、まだまだ戦争体験を引きずっている人たちが健在で、同時に高度経済成長の波に乗っている真っ只中。  価値観の大転換が行われ、古臭いものは悉く否定してかかるような風潮がありました。  その環境を端的に言語化されていると感じるのは、内山節さんの「日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか」で、「キツネにだまされた」という話が日本人の中から消え始めた時期とその原因を6項目挙げて論じられている年代と合致しています。

そこには人間が自然を征服し、経済的存在になり、科学万能を信奉し、マスメディアにより与えられた情報を鵜呑みにし、合理主義に支配され、人の自然観・死生観が変わった年代と書かれていました。  そんな真っ只中で教育を受けてきた世代だからこそ、「ファンタジー」というものに強烈に惹かれる人間が誕生し、その「こんなに魅力溢れるファンタジーとは何なんだろう??  子供向けの荒唐無稽の物語であるはずがない!」と考えずにはいられない・・・・・・。  そういう世代なのではないかなぁと KiKi は思うんですよね~。

ル=グウィンさんは4~50歳ほど年長だけど、あの方は「先進国 アメリカ」の方ですから・・・・・。  KiKi たちよりは4~50年ほど社会文化的には先進的な環境で成熟されたと思うんですよね。  

つまりね、結論付けるにはまだまだ尚早だとは思うんだけど、極論すれば「自然を征服すべきものとは考えず」、「経済的な拘りを思考から除外し」、「現在の科学では捉えることができない世界を掴もうとし」、「合理的な考え方で結論を急がず」、「自然の中で生かされているちっぽけな存在が人間である」というスタンスにたった物語こそがファンタジーなのではないのかなぁ・・・・・とKiKi は思うんです。

今現在、KiKi 自身、「ファンタジーとは何か?」を定義できないまま多くの物語を手当たり次第に読んでいるわけだけど、今のところ「人間優位の目線には立たずに『人間というこのしょ~もない生き物は何ぞや??  どうしてこの世に生を受け、死んでいくのか?』という現代科学でも解明できていない『なぜ? どうして? どのように?』を仮定する物語がファンタジー」なのではないかなぁ・・・・・と考えています。  だからこそ「人間ではないモノ言うケモノ」が人間を語ってみたり、舞台を中世に移した物語が多いのではないかしら。

そういう意味では彼女の最後の結論、

科学的論理性しか認めないことで近代化した私たちの先代は、適合しないものを蔑むことで排除にととめたが、100%捨て去ることもできず、子供向けの娯楽として保ち続けてきた。

ファンタジーの水脈はそういうものの中にあるから、近代以降の学校教育となじまない。  言ってみれば教師の必要はない。  誰かが訓育など施さなくても魅力の存在は伝わるからだ。  そこで娯楽と同源だと強調されてしまう。

ファンタジーの出発点が、神話や昔話までさかのぼる古いものにあるということを、そして現代の私たちは、原始の人間とそれほど変わっていないということを、どこかで認めないとだめなのだろう。

には共感できました。  でも、そういうファンタジー論を展開したいなら、このエッセイは何気に中途半端な感じがします。  荻原規子さんの読書体験を披露したエッセイという読み方をすれば、彼女のファンは元より、同世代を生きてきた特に女性には楽しく読んでもらえる1冊だと感じました。     

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年10月28日 10:26に書いたブログ記事です。

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