ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編 村上春樹

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先日、吾妻郡図書館から借り出してきた5冊のうち、最後の1冊をようやく読了しました。

ねじまき鳥クロニクル 第3部 鳥刺し男編
著:村上春樹  新潮文庫

41ZdzgSy64L._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

僕の考えていることが本当に正しいかどうか、わからない。  でもこの場所にいる僕はそれに勝たなくてはならない。  これは僕にとっての戦争なのだ。  「今度はどこにも逃げないよ」と僕はクミコに言った。  「僕は君を連れて帰る」僕はグラスを下に置き、毛糸の帽子を頭にかぶり、脚にはさんでいたバットを手に取った。  そしてゆっくりとドアに向かった。  (本文より)  (文庫本裏表紙より転載)

いやはや長い物語でした。  そこかしこに何かしら感じるものはあったものの、全体としてみると結局よくわかんない物語でした(苦笑)

何となく・・・・・ではあるんですけど、話を広げすぎちゃっている印象を持ちました。  KiKi の知っていた「個人を突き詰め、その精神世界をどんどん深堀り(もしくは浮彫)にしていく」物語の顔を取りつつも、どんどん世界を横(半径、距離)にも縦(時間軸)にも広げすぎちゃっていて、どこか散漫な感じです。

印象的だったのは第2部の Review で KiKi は

「何になりたいかではなく何をするか?」 「何をするかではなく何をしなかったのか?」 結局、人間が行き着くところはそんな禅問答みたいなところなんじゃないかと、この物語を読んでいて強く感じました。

と書いたわけだけど、まるでそれに反論するかのようにこの第3部で村上氏が

何をしたかではなくて、何をしたはずかなのだ。

と書いていることで、ここを読んだとき思わず、「あ、そっち??」と思ってしまいました(苦笑)

彼がこの物語で何を描きたかったのか、生憎 KiKi にはチンプンカンプンだったけれど、村上氏の物語の中でここまで様々な「暴力」というか「個をねじ伏せる圧倒的な力」が描かれていることにはちょっとびっくりしました。  まあ、戦争という究極の「個をねじ伏せる力」のある一断面を描けば否応なくそんな力に触れずにはいられないわけだけど、その「ねじ伏せる力」の背後には無数の無関心や思考停止という状況があることはヒシヒシと感じられる物語だったと思います。

私たち現代人はこの世に生れ落ちてから、成長する過程でまずは「集団のルールを守ること」を徹底的に仕込まれます。  もちろん社会生活においてある一定のルールというのは必要なものだし、それを守る善意の人たちがこの社会を回していくのは事実だけど、子供のころから刷り込まれる「ある一定のルールを守る癖」というやつは時に「集団ヒステリー」に、時に「思考停止」にと好ましからず結果を生むことがあります。

この第3部の最後の部分で主人公の岡田亨が語る

「僕は基本的に、普通に生きていればいろんなことは適当にうまくいくはずだと思っていたような気がする。  でも結局のところそんなにうまくはいかなかったみたいだね。  残念ながら。」

というセリフには、「思考停止だった状態」が色濃く反映されているような気がしたし、それが村上さん以降の世代の1つの思想的(哲学的と言うべきかもしれない)特徴かもしれないなぁと感じました。  「普通」という言葉には人は弱いものだけど、じゃあ「普通って何??」を突き詰めて考える人って案外少ないと思うんですよね~。



そうですねぇ、あと印象に残ったことと言えば、クラシック音楽がBGMとして、ムード音楽として頻発するなぁということと、主人公は決して「かぼちゃの煮物」とか「さんまの塩焼き」とか「きんぴらごぼう」とか「ひじき」というような食べものを食さない人種なんだなぁ・・・・・ということぐらいでしょうか??  カティーサークの水割り(オン・ザ・ロック?)もいいけれど、もっと庶民的な飲み物も口にしようよと言いたくなる(笑)  少なくともおらが村の人たちはカティーサークのオン・ザ・ロックなんていう飲み物は日常的には飲んでいません。

そういう意味からしても、この作品は(というより村上作品はと言うべきかもしれないけれど ^^;)KiKi にとってはやっぱりどこか現実味の乏しい、地に足がついていない人間の生き方の物語という印象です。    ・・・・・・な~んてことを2012年の KiKi は感じたわけだけど、この物語の舞台となっている時代は1984年でしたっけね。  よくよく考えてみると、KiKi 自身もあの時代はバブルの真っ只中で、「やっぱりウィスキーはシーバスよね」な~んていうことを小生意気に口にしていた時代だったっけ・・・・(苦笑)  

そんな時代にかつら会社の工場に勤め、せっせと植毛作業に邁進している笠原メイと比較して何ともまあフワフワした岡田亨さん(& 当時のバブルに浮かれていた我が身)よ・・・・っていう感じがして苦笑せざるをせません。  物質的な、金銭的な優雅さに多くの人が憧れ、熱に浮かされたようになっていた時代。  そう言えばあのムーブメントも言ってみれば1つの「個をねじ伏せる力」に突き動かされていた社会現象とも見えなくもないなぁ。


日経平均株価が初めて10,000円の大台を突破。
三井三池鉱業所の有明鉱坑内火災
サラエボオリンピック開催
江崎グリコ・江崎勝久社長が何者かに誘拐される事件発生
東京芝浦電気が東芝へ社名変更
「プランタン銀座」開業
第二電電設立
ロサンゼルスオリンピック開催
スペースシャトルディスカバリー、初の打ち上げに成功
東京・永田町の自民党本部が放火炎上
「有楽町マリオン」が全面完成
インド首相、インディラ・ガンジーの暗殺
「1万円札福澤諭吉」「5千円札新渡戸稲造」「千円札夏目漱石」の新札発行
石油業界再編が始まる
マハラジャ麻布十番店がオープン
イギリスと中国が香港返還合意文書に調印

投資ジャーナル事件が発覚


1984年にどんなことがあったのか、ちょっとググって印象的なものを羅列してみたんだけど、世の中「金、金、金、遊び」だったなぁ・・・・・。  こんな時代背景だと赤坂ナツメグと赤坂シナモンみたいな親子がいてもおかしくなかったし、正体不明の「高級会員制クラブ」があったとしても「さもありなん」っていう感じだなぁ・・・・(苦笑)  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年11月 4日 12:01に書いたブログ記事です。

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