白狐魔記1 源平の嵐 斉藤洋

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昨日、読了した図書館本の返還 & 新たな借り出しのために吾妻郡図書館へ行ってきました。  主たる目的は村上春樹さんの著作を借りるため・・・・だったんですけど、そればっかりだと飽きちゃう(疲れちゃう?)かもしれないので、久々に児童書のコーナーに立ち寄り、今日の読了本を借りてきました。  この物語、どうやらシリーズもので6冊ほど出版されているようだったんだけど、面白いかどうかわからなかったので、棚にある左から2冊を借り出してみました。  今日の読了本はそのシリーズ第1巻であることは間違いなさそうなんだけど、もう1冊の方はどうやら第3巻だったみたい・・・・・・。  まあ、ちゃんと確認しなかった KiKi が一番悪いとは思うんだけど、こういう本を棚に入れる際には順番を守っていただきたいものです。

白狐魔記1 源平の嵐
著:斉藤洋  偕成社

51YRW56EBAL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

白駒山の仙人の弟子となり、修行ののち、人間に化けることができるようになったきつね、白狐魔丸の人間探求の物語。  第一巻にあたる本書では、世にいう「源平の戦い」にまきこまれたきつねが、兄頼朝に追われ落ちゆく源義経一行に同行、武士の無情を目のあたりにする。  (単行本扉より転載)

さほど期待しないで読み始めたんだけど、これがなかなか面白い!(笑)  人間という動物がどんな生き物なのかを狐目線で語ってくれちゃうというあたりが、なかなかいいなぁと思うんですよね。

「狐が人を化かす」とか「霊験あらたかな白狐」といった日本人が古来から大切にしてきた伝承をベースにしつつ、そこに源平合戦の「鵯越え」のシーンを挿入(しかもそれをあからさまには書いていない)してみたり、「義経千本桜」という歌舞伎演目に登場する「狐忠信」をいやでも思い出しちゃう「キツネと佐藤忠信の友情(?)物語」が描かれたりと遊び心も満載です。

この第1巻では巣立ち(独り立ち)を始めたばかりのフツーのキツネがどんな風に「人に化身できるようなフツーではないキツネ」になったのかにもかなりページを割いていて、その過程で人間の言葉を解するようになったり、人間に「狩られるもの」として追われたりと様々な経験をするんだけど、その一つ一つの経験の中でキツネが考えたり感じたりすることが実に「それらしくて」いいんですよね~。 


かなり面白いのがキツネが白駒山でとある仙人と出会い修行に励む(?)日々の描写の部分です。  「人間を理解するために人間に化けられる狐になりたい!」という一途な思いでやる気満々のキツネをこの仙人が茶化したり冷やかしたりするんですよ。  でも決してキツネをバカにしているわけではなくて、そこにはキツネの想いを真正面から受け止めている懐の深さがあります。  人里で聞いたお坊さんの説教から「人間に化けられる狐になるためには人智を超えたような修行が必要」と思い込んでいる狐に対し、この仙人は

「ぼうずのようなきつねだな、お前は。  こんなところにくるより、寺にでも行った方がよかったのではないか?  とは言え、この頃では、したい放題、やりたい放題の坊主が多い。  お前のような真面目な狐に来られては、坊主も迷惑するだろう。」

などとのたまい、「修行第一とそれを誇るようなヤツは厳しい修行を経たという自己満足に浸っているにすぎない」とバッサリ・・・・。  ことあるごとに「修行」というキツネを仙人は「坊主のようなヤツだ」と笑うんだけど、ちゃんとキツネの望みどおり、化身できるように導いてゆき、最後は「白狐魔丸」という立派な(?)名前まで授けてくれます。

この第1巻では修行の末にようやく自力で人に化けられるようになった狐だけど、最後のクライマックス・シーンまで、どうしても尻尾だけは消すこと(空にすること)ができずにいます。  その話が何気に説得力があると思うんですよね。  

「狐の前足が人間の手に、後ろ足が足に、胴体が人間の胴体に、毛は着物に、そして頭と顔が人間の頭と顔に、それぞれ化身させることは、うまくできるものなのだ。  だが、尾はどうだ。  尾は何に変わるのだ?」

そしてこの問いの後、仙人が語ることは日本の宗教観の中ではか☆な☆り重要な「空」とか「無」という言葉で、「それがわかるには、お前(狐)はまだ若すぎる。」と言うんだけど、これってキツネに語っているのと同時に読者である子供たちにも語っていると思えちゃうわけです。  で、禅問答みたいな「空」や「無」の講釈の後、又仙人は言うんですよ。

「ほら、おまえの好きな言葉があったろう。  修行と言う言葉。  お前は修行が好きなのだから、尾が『空』に変わるように修行してみたらどうだ。」

などと仰います。  この緩急の付け方が実に素晴らしいなぁと感じました。

ふとしたきっかけで義経の都落ち一行と出会った白狐魔丸は多くの疑問を感じます。

平家を滅ぼしたと言われる大将でも平家を皆殺しにしたわけではなさそうだ。  人間の、それも武士と呼ばれる人々がする戦とはいったい何なんだろう??

兄弟に追われるとはどういうことなんだろう??  そんな人間の兄弟と言うものはどういうものなんだろう??

人殺しを平気でやった武士が、落ちのびる過程で騎馬を放ち、「長生きしろ」などと言うのは、どうしてだろう??

忠信の兄は屋島の合戦で義経の身代わりになって死んだという。  主人の身代わりになって死ぬのが、どうして幸せなんだろう??

思い起こせば、子供時代に KiKi は白狐魔丸と同じような疑問を感じたことがありました。  そして、未だにこれらの疑問に上手く答えられる自信はないんだけど、そうであるだけに知らず知らずのうちに白狐魔丸の気持ちを我が物としていることに気が付かされました。  

忠信の首を賞金稼ぎの山伏どもから守り抜こうとする白狐魔丸の想いは「人間とは摩訶不思議な生き物よ」と考えていたキツネのものではなく、人間、それも武士っぽくなってきているように感じられます。  そして忠信の遺志を受け継ぎ、義経に偽装して賞金稼ぎどもを翻弄しているうちに、白狐魔丸は「尾を空に化身させること」ができるようになります。

まだまだ「霊験あらたかな白ぎつね」白狐魔丸としての人生(狐生?)は始まったばかりです。  彼がどんな風に「人間とは○○な生き物だ」という結論にたどり着くのか、興味は尽きません。  これは次作も楽しみな1冊だと感じました。  そのためにも今回、間違えて借りてきちゃった第3巻「洛中の火」に行く前に第2巻「蒙古の波」を読んでみたいものです。    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年11月 7日 09:59に書いたブログ記事です。

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