風の歌を聴け 村上春樹

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先日、ベストセラーだった「ノルウェイの森」を読了し、どうにもこうにも気に入らなかった KiKi。  あれ?  村上春樹ってこんなんだっけ??  昔(学生時代)、嵌ったはずのこの人の作品がこうまで鼻につくのはどうしてなんだろう??  あの頃の KiKi の感覚が今とはあまりにも違っているのか、はたまた村上春樹氏の方が変わったのか??  その答えが知りたくて、○0年ぶりぐらいにこちらを読んでみることにしました。

風の歌を聴け
著:村上春樹  講談社文庫

21JXNBHKBAL._SL160_.jpg  (Amazon)

1970年の夏、海辺の街に帰省した「僕」は、友人の「鼠」とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。  2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受け止めてやるうちに、「僕」の夏はものうく、ほろ苦く過ぎ去っていく。  青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。  群像新人賞受賞。  (文庫本裏表紙より転載)

結論からすると、村上春樹氏はほとんど変わっていなくて大きく変わってしまったのは KiKi の方だったようです。  そして、この KiKi の変化は「いい・悪い」は別として村上氏のどこか冷めた傍観者的な社会への視線に対し、学生時代ならいざ知らず、今の KiKi は人間社会の中にどっぷりつかって、そこで何等かのコミットメントを結びながら生きてきた年月の積み重ねでできているようなところがあるわけで、そのスタンスというか、立ち位置の違いにあるように感じました。

初めて村上作品に出会ったのは KiKi 自身が「まだナニモノにもなっていなかった時代」だったし、「ひとかどのモンにはなれそうにないことを骨身にしみて自覚し始めていた時代」だったし、「KiKi とはまったく関わりのないところで世の中は動いていると否応なく思い知らされていた時代」だったから、その虚無感みたいなものにストレートに感電することができたように思うんですよね。

と同時に、KiKi 自身も英米文学部に在籍し、村上春樹氏が好む「カポーティ」、「チャンドラー」、「フィッツジェラルド」、「カーヴァー」といった作家の作品に出会い、それまで読んできた文学とはちょっと違う香りのする文学にちょっと酔わされちゃっていた時代だったことも無関係ではなかったように思います。  

今この物語を「ねじまき鳥」や「ノルウェイ」を読了した後に読み返してみると、それらの作品のモチーフとなっている出来事、感覚、といったものは既にここに出ていることに驚かされました。  学生時代にこの作品は何度も何度も読み返していたはずなのに、先日「ねじまき鳥」や「ノルウェイ」を読んでみた時は思い出しもしなかったことにもかなりビックリしました。  

なぜ、それらの読中にこの作品のことを思い出さなかったのか?を考えてみると、要するにこの物語はある意味でサティの音楽にきわめてよく似ていて、「環境文学」というか「時代の空気を読む文学」ではあったものの、それ以外は自分に何も残さなかった文学だったんだということがわかります。  

物質的にはある程度恵まれていて(とは言っても携帯電話もモバイル端末もインターネットもなかったけれど)、普通に暮らしていれば恐らく衣食住に事欠く心配だけはないけれど、バブル経済の真っ只中にあってどんなに頑張っても普通の人では家一軒、マンション1つさえも買えそうになかった時代。  ようやく買える場所があるとすれば電車で片道2時間ぐらいの場所がせいぜいで、そんな買い物をしちゃったら何のための人生なのかわからないじゃないかと誰もが諦めモードだった時代。  就職の面接に行けばあからさまな男尊女卑を感じ、「子供のころに夢見ていた自分の将来はこんなはずじゃなかったのに・・・・・」と落ち込んだ時代。  あの時代の KiKi だったからこそ、彼がこの物語の中で手を変え品を変えて語る「閉塞感」、「無力感」に共感できたんだと思うんですよね。

そんな閉塞感にも関わらず巷は結構オシャレでねぇ。  雑誌やらドラマに出てくる写真や人々の生き方はどこか「生活臭」がなくて、日本人の食生活が和食から洋食にシフトしていて、街中が音楽にあふれている時代。  でも自分がナニモノなのか、その実感みたいなものだけが空虚な感覚。  みんなが持っているものを持てなければ何となく恥ずかしいんだけど、いざそれを手に入れても胸をうちふるわせるような満足感は得られない・・・・・。  そんな時代をこうまで淡々と冷徹に書いていることが当時の KiKi には新鮮だったし共感も覚えました。

でも逆に言えばそれだけ・・・・・とも言えるんですよね、この物語。  自分を保つために冷淡で刹那的・退廃的であろうとする生き様みたいなものに、「そこまでして保ちたい自分っていったい何??」と思わずにはいられないのは KiKi が歳をとったからなのかなぁ・・・・。  何か本質的な命題に肉薄しているようでいて、そこですっと引いてしまう執着心のなさというか、逃げというかそんなものを感じました。  まあ、この作品が書かれた80年代というのは重苦しく思考するのはダサイ時代だったからそれをオシャレに書いただけ・・・・・とも言えるけど(苦笑)。

せっかくの機会なので、かつては感動したはずの何作かも読み直してみたいと思います。


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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2012年11月14日 11:51に書いたブログ記事です。

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