水滸伝 2. 替天の章 北方謙三

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北方水滸第2巻の2周目です。

水滸伝 2. 替天の章
著:北方謙三  集英社文庫

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梁山湖に浮かぶ天然の寨には、世直しを志す者たちが集まっていた。  しかし頭領である王倫の堕落により、今は盗賊同然の集団となっている。  宋江の命を受けた林冲は、安道全とともに寨に入りこんだが、そこには幾多の罠が待ち受けていた。  一方、晁蓋は、巨額の税が賄賂として宰相に贈られることを知る。  民の苦しみの結晶であるその荷を奪うための秘策とは。  熱く血がたぎる「北方水滸伝」、第二巻。  (文庫本裏表紙より転載)

せっかく第1巻でもやってみた各章のサブタイトルと、そのサブタイトルが示す人物の相関図からまずは記録しておきたいと思います。

天傷の星: 行者・武松
地幽の星: 病大虫・薛永
天暗の星: 青面獣・楊志
天間の星: 入雲龍・公孫勝
地耗の星: 白日鼠・白勝
天異の星: 赤髪鬼・劉唐
地妖の星: 摸着天・杜遷
地魔の星: 雲裏金剛・宋万

この第2巻の物語としては武松の悲劇 & 虎退治、楊志 vs. 林冲の戦い、公孫勝 & 劉唐による致死軍の創設、梁山泊乗っ取りのためのあれこれ(白勝、杜遷、宋万の働き)といったあたりなので、このサブタイトルと中身がほぼ一致しているといってもいいのではないかしら?

梁山泊に集まってくる一人ひとりの背負う問題、反乱軍に属さなければならない事情といったようなものが浮き彫りにされ、キャラを読ませるという手法で描かれた物語になっていると思います。

基本的に KiKi は水滸伝で集まる108人の豪傑という輩は、国家権力側から見れば単なる反乱軍(一揆と呼んだ方がいいかもしれない)で、実際のところは志もへったくりもなくて、替天行道(天に替わって道を行う≒世直し)な~んていう大きな Vision なんかなかっただろうと思うけれど、あの頼りない宋江(梁山泊のリーダー)の存在意義を高め、説得力をもたせるために「志」なんちゅう実態のよく分からないものを持ってきたあたり、なかなか考えたもんだと感心することしきりです。

そしてこのちょっと鬱陶しいまでに出てくる梁山泊側の「志」の対抗馬として出してきたのが、青蓮寺なる体制擁護派の頭脳集団(別の呼び方をすれば諜報機関)であり、その依って立つ思想が「王安石の新法」ときましたか!!  これは巧い!!  時代的にもピッタリマッチしているだけに妙な説得力があります。


さて、この巻でちょっと前に読了した「楊家将」 & 「血涙」の楊家軍の末裔(「楊家将」で不遇の死を遂げた宋国建国の英雄・楊業と「血涙」で楊家軍最後の生き残りとなったその息子六郎・延昭の裔を継ぐ者)として登場しました。  もちろんあの伝家の宝刀「水毛剣」をひっさげています。  六郎までは独立した軍閥だった楊家だけど、どうやらその子孫たちは宋国の武挙を受けていわゆる「国軍」に組み込まれる軍人として生きてきた模様です。

ちょっと時代背景と物語のプロットを振り返ってみると、「楊家将」は五代十国の後期、宋が北漢を併合するところから宋の遼への親征までが扱われ、「血涙」ではその親征の2年後から澶淵の盟が結ばれるまでの物語が描かれていました。  大雑把に言ってしまえば、群雄割拠状態の多くの国がお互いの「国家主権」とでも呼ぶべきものを軍事力で脅かしあっていた戦国時代から、宋・遼という2大国家に集約された時代、さらにその2国間でも同盟が結ばれ平和が訪れたという時代にあたります。  

そんな時代の流れの中で、軍に求められる役割が劇的に変化していったことは想像に難くありません。  弱肉強食・群雄割拠の時代には重要な役割を担っていた「精強な軍閥」はもはや必要なくなり、中央政府の扱いやすい軍が求められていく・・・・・という風に。  そうであればこそ、「澶淵の盟」を結ぶ直前に宋と遼の2国の最強の軍閥であった楊家軍、耶律休哥軍の決戦が命じられ、楊四郎(=石幻果)も楊七郎もその闘いの中で命を落とすことになってしまった・・・・・そんな風に感じるんですよ。

まして、かつて「世界史」の授業で学んだように宋という国は徹底した文治主義の国家です。  そんな時代背景の中で、この物語に描かれる軟弱な禁軍、腐敗した軍機構(含む地方軍)という状態があるし、青蓮寺みたいな頭脳集団の暗躍もあるし、かつての軍閥の裔である楊志のモヤモヤがある・・・・・と考えると、なかなか練りに練られた勢力図をベースに書かれた物語であるように KiKi には感じられました。  

林冲と楊志の対決場面で楊志が「水毛剣」を出さなかった理由だけがちょっととってつけたような印象があったけれど、まぁ、まぁ、家宝ともいうべき剣をふるう場所は戦ではあっても盗賊征伐であってはならないわけで、それもありかなぁ・・・・・と。  そして、本人が決して納得していないにも関わらず、AさんからBさんへの賄賂を運ぶ護衛となり、悶々としつつも「下された命令を果たすのが軍人の本分」と拘り続ける楊志の姿に、楊業や六郎の抱えていた苦悩が思い出され、「血は争えないなぁ」という感慨を抱きます。

KiKi は何度もこのブログでお話しているように「正義とは立場が変われば変わるもの」という考えを持っていて、さらに言えば「耳触りの良いスローガンだけの、人によってどんな風にも解釈できるキャッチコピーは実は危険」とさえ思っている人間なので、本来ならこの物語のように「志」「志」と最初から連呼されちゃうと斜に構えちゃうようなところがあるんだけど、この物語でそうならずにすんでいるのはやっぱり梁山泊の対立軸に据えられた「青蓮寺」が存在しているから・・・・・だと思うんですよね。

言ってみれば梁山泊はかなりアナーキーな集団で、テロリストと根本のところは大差なく、結局は力で現政権を倒そうと考え、行動する人々なわけです。  そこに「志」という実態のわからないものが出てきただけで単なるテロリストではなく革命軍と認識されている・・・・・・というような。  でも、実際のところは現状をすべて破壊して新たなものを創るのではなく、今ある枠組みは生かしながら改革をするという考え方は一方にあるべきだし(それが平和ボケと呼ばれちゃうにしろ)、やはりそのせめぎ合いがなければ「結局最後は力でしょ。」となってしまったりもするわけで・・・・・・・。

さて、ようやく梁山泊に替天行道の旗が掲げられました。  でも、まだまだ宋という大国と対決するには人的にも経済的にも生産力的にもあまりにも貧弱な反乱軍です。  第3巻に進みたいと思います。  

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年7月23日 14:25に書いたブログ記事です。

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