水滸伝 4. 道蛇の章  北方謙三

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北方水滸第4巻の2周目です。

水滸伝 4. 道蛇の章
著:北方謙三  集英社文庫

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馬桂は愛娘を殺され、悲嘆にくれていた。  青蓮寺は彼女を騙して梁山泊への密偵に仕立て上げ、ひそかに恐るべき謀略を進めていく。  一方、宋江は、民の苦しみと官の汚濁を自らの眼で見るため、命を懸けて過酷な旅を続けていた。  その途中で、純真さゆえに人を殺してしまった李逵と出会う。  李逵は次第に宋江に惹かれていくが、そこに思わぬ悲劇が待ち受けていた。  北方水滸、波乱の第四巻。  (文庫本裏表紙より転載)

ではまず恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。

天退の星: 挿翅虎・雷横
地鎮の星: 小遮攔・穆春
地孤の星: 金銭豹子・湯隆
天寿の星: 混江龍・李俊
天殺の星: 黒旋風・李逵
天速の星: 神行太保・戴宗

第3巻に至るまでは「志」とは関係なく何となく梁山泊に参加しちゃうことになった人物として、安道全(医者)、薛永(薬師)、白勝(養生所 & 薬方所の管理者)がいたけれど、この巻ではさらにそこに湯隆(鍛冶屋)、李逵(怪力男)が加わりました。  李逵はちょっと例外として、実際に武器をとって戦う男以外で梁山泊に入ってくる人はどちらかと言えば「志」には無頓着な人が多いようです。

いわゆるスペシャリスト・個人プレイヤーには極論すれば「志」なんちゅうもんはさほど必要なく、自分のスペシャリティを活かせる機会・場所がまずは優先されるというのは現代社会においても同じです。

逆に自分の命をかけて体制と剣を交えて戦う男(しかも指揮官になろうかというような人間)には「志」というようなある種の Vision が必要になるのは無理もありません。   実際、命令一下でひたすら戦う戦士たちの命を預かるうえで、「何のために戦うのか?」がないような指揮官では単なる無鉄砲、殺人鬼と同じと言っても過言ではありません。

因みに宋江さんの志がどんなものなのかはこの物語の中ではほとんど明記されていないけれど、

自分が駄目だと思っていない人間とは、ほんとうは話し合える余地はなにもない。
自分が駄目だと思っている男の方が、駄目ではないと考えている者よりずっとましだ。  人には、どこか駄目なところがあるものなのだからな。
志は、志なりにみんな正しい。  そして、志が志のままであれば、なんの意味もない。

というような発言から察するに、今風の言葉で言えば「現状に問題意識を持ち」、「その問題を解決するために自分にできることは何かを考えそれを実行する覚悟を持ち」、「実際に動く時には可能な限り無駄なことはせず」、「自分一人がヒーローになろうとするのではなく」、「人と一緒に何かをする(自分にできること、人に任せることをちゃんとわきまえる)」というようなことなのかなぁ・・・・と。


さて、この巻ではとうとう国軍から離脱して梁山泊に合流してくるものあり、現状に不満を持ちながらも結局は単なる暴れん坊と化している者たちの目覚めあり、戦をする上で武力・糧道と並んで重要な情報網に携わる者の活躍ありと少しずつ梁山泊という反乱軍が「一揆勢力」から「革命勢力」に発展していきます。

国内の不満分子を統合化するオーガナイザーだった魯智深が遼に入ってしまったことにより、彼に代わって宋国内を歩き回るオーガナイザーが必要になったわけだけど、それをこともあろうに梁山泊のリーダーである宋江が始めちゃいます。  そして大方の読者には彼の魅力がどこにあるのかあまりよくわからない(でもこれは北方氏の責任ではなく、原典での宋江自体がそういう人物なわけだけど)にも関わらず、彼に(もしくは彼の「志」に)魅了されて多くの人が「梁山泊同志予備軍」となっていきます。

その一方で、この時点で梁山泊内で実質的リーダーであるはずの晁蓋は鍛冶屋の湯隆に弟子入り(?)して、刀鍛冶の真似事なんぞをしています。  この「水滸伝」で楊志が佩いている楊家の家宝「吹毛剣」も楊業が自ら鍛えた剣ということになっていたけれど、この時代、ひとかどの武将というのは自分で自分の剣を鍛えていたんでしょうか??  まあこのての話は古代中国のみならず、KiKi の大好きなワーグナーのオペラ「ニーベルンゲンの指輪」の中でもあの英雄ジークフリートは自分の剣を自分で鍛えていたから、そういうものだったのかもしれません。

さて、この巻で KiKi にとって印象的だった人物は?と言えば、飛脚屋の総元締め、戴宗です。  原典では不思議なお札の力で空を飛ぶように歩いた(2枚のお札を両脚にくくりつけると、一日に500里、4枚のお札をくくりつけると800里も歩くことができた)ということになっていたわけだけど、この「北方水滸」ではもちろん彼自身足が速いという設定は残されているものの、「飛脚屋」というビジネスを営み、彼の個人技ではなく集団の力で梁山泊を支える情報線を構築します。

この設定が例の「闇の塩の道」(≒ 糧道)と同じぐらいにこの物語にリアリティを与えていると思うんですよね~。  そしてこの「飛脚屋」の存在があって初めて、宋江はのんびりと(・・・・・でもないけれど)旅をすることができているわけだし、青蓮寺との読みつ読まれつという情報戦の緊張感も存分に伝わってきます。

そしてこの敵方がなかなかいいんですよ。  特にこの巻では青蓮寺の切れ者、李富の魅力が光っています。  この時点での李富は単に賢いだけではなく、どこか青臭さみたいなものを残していて何とも人間的で「得体の知れない老獪な青蓮寺の長老・袁明」との対比が際立っています。  この袁明がいなかったら彼の良さはここまで印象的にはならなかったと思うけれど、この後の成長が楽しみな人物です。

さて、宋江が南方の江州に入り、そこには戴宗がいて、さらには青蓮寺から派遣された先乗り要員・黄文炳がいます。  黄文炳は男の第六感(?)で戴宗に目を付けました。  同時に李富に手なずけられた梁山泊と青蓮寺の二重スパイ馬桂が楊志の妻子に近づき、それを見張りに李富本人が本拠地を離れ南方入りしました。  2つの不穏な空気を漂わせ、第5巻に進みます。

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