楊家将 下 北方謙三

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介護・介護の毎日から解放された瞬間から、本人が予想していた以上のペースで読書が進む KiKi です。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

楊家将 下
著:北方謙三  PHP文庫

5123Y67B5NL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

青面獣楊志、楊令に流れる誇り高き血を育んだ楊業の運命は......。  伝説の英雄の前に立ちはだかる「白き狼」。  天はいずれに味方するのか。  滅びゆく者たちの叫びが切々と旨に迫る慟哭の終章。  (文庫本帯より転載)

国境を挟み、宋遼二国は一触即発の状態に。  伝説の英雄・楊業と息子たちの前に、遼の名将・耶律休哥が立ちはだかる。  白い毛をたなびかせて北の土漠を疾駆するこの男は、「白き狼」と恐れられていた。  宋軍生え抜きの将軍たちも、楊一族に次々と難問を突きつける。  決戦の秋!  運命に導かれるようにして戦場に向かう男たち。  滅びゆく者たちの叫びが戦場に谺する。  北方『楊家将』、慟哭の終章。  (文庫本裏表紙より転載)

この物語。  一言で言ってしまえば「滅びの美学」の物語です。  「滅びの美学の物語」が好きなのは日本人だけかと思いきや、中国人にもその傾向があるのかしら??  それともこれは「北方版 楊家将縁起」だからこういう物語になったのかしら??  残念ながらこの本を読むまで本家本元の「楊家将縁起」についてまったく知らなかった KiKi には判断のつかないところです。  

上巻の Review で KiKi は楊業さんの息子たちの書き分けがちょっと粗いと書いたんだけど、コレ、実は全部が全部じゃなくて7人のうち4人に関してはそこそこ書かれていたんですよね。  かなりあっさりとまとめられちゃっていたのは次男、三男、五男の3人で、結果この3人はこの下巻でもキャラが立たないうちにお亡くなりになってしまいました。  お亡くなりになっても印象が薄いのはやっぱり描き込みが少なかったから・・・・・と言わざるをえません。

一家の柱である楊業さんと長男も非業の死を遂げることになるわけだけど、彼らはさすがに頭領とその後継ぎということで、上巻でもかなりの頁を割いて描かれていただけに、最期の時の描写には胸がジ~ンとしてきます。  「生粋の武官の生き様というのはこういうものか!」と思わずにはいられません。  

それにしてもこの楊家の悲劇は宋の国でもっとも精強な兵を抱えた軍閥でありながらも、所詮、外様であったこと。  そして宋国恩顧の武家たちにロクなのがいなかった(少なくともこの物語のうえでは・・・・ですけど)ことに尽きるような気がします。  そして宋国の帝も国のトップである以上 Vision は必要だけど、「先代から受け継いだ悲願(≒ 燕雲十六州の奪還)」という得体の知れない魔物に憑りつかれちゃったのが残念でなりません。  もっともこの「燕雲十六州の奪還」というヤツは「北方水滸」でも「楊令伝」でもその背景に根強く残っているわけで、そうであればこその悲願ということで帝がダメということでもないんですけどね。  少なくとも「北方水滸」の帝よりは遥かにマシですから(苦笑)。

さて、上巻からもそこそこ描きこまれていた楊業さんの四男、六男、七男は宋遼戦を生き延び(もっとも四男は虜囚となったきり行方不明だけど)、そのまま次の作品「血涙」に突入するようです。  こういう作りの物語だとやっぱり続編は素通りできないと読者に思わせるあたり、北方謙三さん、実に商売上手です(笑)    


さて、この物語を読んでみて KiKi が一番感じたこと。  それはこういう混沌の時代であればあるほど「男という生き物は『意味ある死』を目指すものなのか?!」ということでした。 

戦後の平和教育にどっぷりつかって育った、まして♀である KiKi にしてみると「生きているだけでも崇高」、「生き続けることこそ大切」、「命あっての物種」みたいな考え方が基軸にあるんだけど、やっぱり武家に生きる男となるとそんな平和ボケみたいな考え方はその思想の根底にはなさそうな雰囲気です。

もちろん現代社会みたいに医学が発達しているわけでもない(それでも宋代は医学の進歩があったらしいけど)、戦も多く死が身近ということもその背景にはあるんだろうけれど、どこかに「良く生きること、即ち意味ある死を迎えること」というような哲学を KiKi が想像する以上に強く、堅く持っているように感じられました。


「どちらか死んでくれ」  「はい」

「延平、お前には死んでもらうことになる」  「光栄です」


そんなセリフで戦場に散っていく男たちの姿は、物語として読めば美しさのようなものも感じないわけではないけれど、やはり哀しい・・・・・・・。  

武門というのはそういうものだと言ってしまえばそれまでだけど、「死を美化する」ことにはどこか抵抗を感じる KiKi には


本当にいいのか?  それで??


という想いが付き纏います。  そんな KiKi の甘っちょろい感覚を見事に吹き飛ばしてくれたのは、楊家軍の好敵手・遼国の名将・耶律休哥の以下の独白でした。


殺したくなかった。  あの場で、なぜかそう思った。  戦は、殺し合いだけではない。  勝負がついたら、闘った者同士で酒を酌み交わすことはできないのか。  (中略)  北平寨の将(楊業の四男)は、まさに酒を酌み交わしてみたい男だった。  楊業とも、その息子たちとも、力の限り闘ったあと、酒を酌み交わしたい。  男は、それでいいではないか。


なるほど、♂というのはそういうモンですか??  だからそれでいいんですか??  

こういう時代に生まれたわけではなく、まして部門の誉れの高い家に育ったわけでもなく、さらに言えば♀である KiKi にはよくわからない感性ではあるけれど、何となくこの一文のおかげでこの物語を「単なる滅びの美学の物語」とはちょっと別次元のオハナシに誘ってもらった・・・・そんな不思議な読後感になっているような気がします。  

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