水滸伝 11. 天地の章  北方謙三

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北方水滸第11巻の2周目です。

水滸伝 11. 天地の章
著:北方謙三  集英社文庫

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梁山泊の頭領の対立が深刻化していた。  兵力をもっと蓄えたい宋江。  今すぐ攻勢に転じるべきだと主張する晁蓋。  しかし、青蓮寺は密かに暗殺の魔手を伸ばしていた。  刺客の史文恭は、梁山泊軍にひとり潜入し、静かにその機を待ち続ける。  滾る血を抑えきれない晁蓋は、自ら本隊を率いて、双頭山に進攻してきた官軍を一蹴し、さらに平原の城郭を落とした。  北方水滸、危急の十一巻。  (文庫本裏表紙より転載)

まずは恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。

地然の星: 混世魔王・樊瑞
地全の星: 鬼瞼児・杜興
地楽の星: 鉄叫子・楽和
天地の星: ???

あれ?  あれれ???  天地の星って、このリスト(↑)を作成する際に KiKi がいつも利用しているこちらのサイトにまったく登場しないんですけど???  ついでに岩波少年文庫の第59章「百八の英雄、忠義堂に集まって誓いをすること」に記載されている水滸百八星一覧にも登場しません。  どうやらこれ、どさくさに紛れて(?)北方さんが設定しちゃった「晁蓋の星」らしい・・・・・。  なるほど~、こうやって辻褄を合わせたって言うことですね?  ここまでの Review で水滸百八星の皆さんが次々と亡くなっていく過程で「(水滸百八星に数えてもらえない)晁蓋さんは相変わらずピンピンしています。」の一言で済ませてきた KiKi ですが、実はどんな風に落とし前をつけるのか、ず~っと気になっていたんですよ(苦笑)  そしてこの巻のまさにその「天地の星」の章で晁蓋さんは史文恭さんによって暗殺されてしまいました。

えっと、お話を進める前に実は前巻の Review でその巻で亡くなってしまった人リストを書いていたんですけど、そこに1人欠落している人物がいたことに気が付いちゃったのでそれを修正しておきますね。

地伏星: 金眼彪・施恩
地鎮星: 小遮攔・穆春
地走星: 飛天大聖・李袞

地囚星: 旱地忽律・朱貴

前巻は「呼延灼戦」がメインだったので、その戦で亡くなった方にばかり目がいっちゃって、それとは別のところで亡くなった朱貴さんのことはすっかり失念してしまっていました。

そしてこの巻で亡くなったのは以下のお2人です。

???: 托塔天王・晁蓋
地刑星: 菜園子・張青

全19巻の11巻目にして梁山泊側の108星に数えられる立場の人(+ 晁蓋さん)の中で死者数18名。  それなりの戦を経てきた割には少ないと言えるのかもしれません。  でもでも、早くに亡くなってしまったことにより星に数えてもらえなかった晁蓋さんの前に16名も亡くなっちゃっていたんですよねぇ・・・・・・。  (地刑星: 菜園子・張青さんは晁蓋さんが亡くなった直後、晁蓋さんと同じ史文恭により殺害)  まあ、物語としての説得性はこの「北方水滸」の方が高いからいいんですけど、相変わらずちょっと気になる KiKi です。


さて、この巻の KiKi の Review は本編・・・・・というよりは巻末の「解説」に関してです。  ここで KiKi の「岩波少年文庫版 水滸伝」を読んだ際の疑問が1つ氷解したのでそのお話をしておきたいと思います。  実は KiKi は「岩波少年文庫版 水滸伝 下巻」の Review でこんなことを書いていました。

KiKi にしてみると「時の権力」 vs. 「抵抗勢力」ということで読み始めたつもりだった物語がいきなり皇帝の下っ端になるという展開に目がテンになってしまい、そっちの残念感の方がより大きかったかもしれません。  北方水滸では最後の最後まで梁山泊は梁山泊だったのにねぇ・・・・・。  ま、時代ということを考えれば分からないわけじゃないけど、ホンネを言えば

「何だよ。  反乱軍かと思いきや、それはタテマエで要するに就職活動みたいなものだったのかよ??」

っていう感じ?(苦笑)   宋江に至っては梁山泊のリーダーでありながら

「じぶんは不幸にして罪人とはなったが、朝廷に対していささかの異心を抱いたことはなかった。」

な~んて言っちゃって、天子さまからの招安を受けると有頂天っていう風情だし、そして詔勅を受けて向かったいくつもの戦で仲間たちをどんどん失っちゃうしで、KiKi がメンバーだったらこんなリーダーの下はご遠慮被りたいっていう感じです。

これに対し、この「北方水滸 第11巻」の解説を書かれた岡崎由美さんはこんな風に仰っています。

北方「水滸伝」はこうした中国的情念の世界を、革命に向かって組織的に邁進する行動原理で再構築した。  宋王朝を潰し、新しい国を作るという理想のもと、北方「水滸伝」では決してありえない結末、それは敗北ではなく「招安」である。  招安とは、朝廷が賊軍に恩赦を下し、慰撫によって鎮圧する政策である。  (中略)  晁蓋の後継者として梁山泊のリーダーとなった宋江は、百八人の好漢が一堂に会した忠義堂で施政方針演説をぶつ。  それこそが朝廷の招安を受け、尽忠報国に努めるというものだった。  悪いのはご政道を歪めた奸臣どもであり、「替天行道」はそれを正すために唱えたもので、その忠心を汲んで国のために力を尽くさせてほしい、というスタンスである。

反乱軍が官軍に転身するとは、赦す方も受ける方も節操がない、と思う方もいるであろう。  (中略)  しかし、反乱の頻発した宋代に招安が大判振る舞いされたのは史実なのである。  (中略)  原典の宋江が梁山泊の好漢をとりまとめて招安を待っていたというのも、当時の事情からすればゆえないことでもないのである。  (中略)  しかし、むろん反権力の志に命を懸けた北方「水滸伝」の好漢たちに、「招安」はありえない。  それはいくさの敗北以上に人間としての大きな敗北になるであろう。

なるほど~。  どうやら KiKi は岩波少年文庫版読書の直前まで「北方水滸」 & 「楊令伝」を読んでいたので、頭の中のイメージとして「時の権力」 vs. 「抵抗勢力」ということで読み始めたつもりだった物語という刷り込みがガッチリとできてしまっていて、だからこの「招安」というヤツがしっくりこなかったんだけど、これって時代背景的には充分ありうることだったし、ある意味では「討伐されて全滅するよりは・・・・・」という考え方をする人物が宋江だったということなのかもしれません。

まして、中華思想(↓)バリバリの宋代のお話なんですから・・・・・・。

300px-Tianxia_ja.svg.png
↑ 中華思想の概念図(Wikipedia より転載)

話は肝心の物語に戻って、この巻のメインのお話は「晁蓋暗殺」なんだけど、その他のお話もなかなか興味深いものでした。  仲間の死を目の当たりにすることにより「生死を分けるもの」に並々ならぬ興味を抱き始めた樊瑞のお話。  梁山泊入りする前まで培ってきた自分の生きる道を皮肉にも梁山泊入りすることにより見失ってしまった杜興の苦悩のお話。  梁山泊軍の中で「1人慰問団 兼 将校」として存在を際立たせる楽和のお話。  どれもこれもが物語に深みを与えるエピソードとなっていると思いました。

さて、晁蓋の死により梁山泊が抱えていた最大の懸念事項、2トップの衝突(慎重派・宋江 vs. 行動派・晁蓋)が立ち消えた格好になりました。  この先梁山泊はどっちの方向へ向かってひた走ることになるのでしょうか??  そして晁蓋暗殺に成功した史文恭の次のターゲットは誰になるのか?  12巻へ進みます。    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年8月11日 06:41に書いたブログ記事です。

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