水滸伝 16. 馳驟の章  北方謙三

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北方水滸第16巻の2周目です。

水滸伝 16. 馳驟の章
著:北方謙三  集英社文庫

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梁山泊は戦によって、潰滅寸前にまで追い込まれていた。  回復の時を稼ぐため、侯健と戴宗が偽の講和案を持って高俅に近づく。  また、晁蓋を殺した史文恭が再び動き出した。  名を変え、商人になりすまし、次なる標的のそばで暗殺の機を待ち続けている。  それに対し、公孫勝は袁明の首を狙っていた。  堅牢な守りをかいくぐり、いま、致死軍が青蓮寺を急襲する。  北方水滸、暗闘の十六巻。  (文庫本裏表紙より転載)

まずは恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。

天貴の星: 小旋風・柴進
地雄の星: 井木犴・郝思文
地壮の星: 母夜叉・孫二娘
地数の星: 小尉遅・孫新
天牢の星: 病関索・楊雄
地陰の星: 母大虫・顧大嫂

大戦直後、しかも回復の時を稼ぐための「講和」を模索している真っ只中のお話ということで、表面的には梁山泊 vs. 官軍のお話はちょっとなりをひそめた1巻だったと思います。  こういう時に発生するのは当然のことながら裏工作のお話・・・・となるわけで、晁蓋を暗殺した史文恭が再登場。  隠居生活を送っていたような老人(しかも健康食品やらジム通いで若さを保つ余裕がある現代の老人ではない!)が30代ぐらいの若者に化けるというのは時代的にもちょっと難しいんじゃないかと思わないでもなかったけど、まあお話の世界だからいいでしょう。

で、この史文恭、さすが・・・・と言うべきか何と言うべきか、宋江や呉用には結局手が出せずじまいだったけれど、今では梁山泊の兵站・物資のすべてを担っていると言っても過言ではない序列第10位の小旋風・柴進と第47位の鉄面孔目・裴宣の暗殺をやり遂げてしまいます。  もっともその直後に史文恭暗殺をライフワーク(?)としていた赤髪鬼・劉唐にやられちゃうんですけどね。  「暗殺者」というお仕事はさておき、個人的には敵陣の中でかなりお気に入りの人物だった史文恭の死というのはちょっと・・・・というか、かなり残念な気がしました。 

 

そしてもっと残念だったのは公孫勝による袁明の暗殺でした。  禁軍の元帥・童貫が表舞台に出てきてしまった今となっては青蓮寺の出る幕はほとんどない・・・・と言っても過言ではないわけで、逆に梁山泊とはアプローチこそ違えど「理想国家」を目指して裏組織を牛耳り、業務改革・軍制改革と幅広い分野で大活躍をしてきた袁明にはもうちょっと長生きして欲しかったなぁ。  やっぱり袁明と比較すると李富にしろ聞煥章にしろこの時点では小粒感が拭えません。

特に聞煥章は華々しく登場し、前半ではそこそこの存在感を見せつけたもののここへきてまったくと言っていいほど出番がない印象です。  出てくるたびに扈三娘に執着しているだけ・・・・と言ってもいいような風情だし、もっと言えば彼が青蓮寺と関わるようになったのは宰相・蔡京の推薦という形だったはずなのに、その蔡京との繋がりもほとんど感じられず半ば捨てキャラと化しているような印象です。  強いて言えば少しずつ青蓮寺や李富と距離を置きつつあるということで「潜伏期間突入中」ということなのかもしれませんけどね。

袁明暗殺の決め手となったのは間違いなく通常であれば袁明の護衛として常に側近くに控えているはずの洪清が梁山泊側の体術の熟練・燕青との一騎打ちで忙しかったことがあるわけですが、この一騎打ちシーンは描写が決して長くはなかったものの、かなり緊迫して胸をドキドキさせながら読むことができました。  特にこの洪清には混世魔王・樊瑞が敗れているだけに、燕青の実力がどうであれ決して侮れるような相手ではないことがわかっていましたし・・・・・。

袁明と公孫勝の最後の会話は本巻の中でもっとも印象に残った会話だったと思います。

「袁明殿ですな。  公孫勝と申します。」
「長い、闘いであったな、公孫勝。」

(中略)

「梁山泊には人材が揃っておるな」
「ずいぶんと欠けましたが」
「新しいものをつくろうとすれば、仕方のないことであろうよ。」

(中略)

「私は、青蓮寺が梁山泊を強くした、と思っております」
「いい国を目指せ、公孫勝。  梁山泊が、そうやって闘えば、宋もまたいい国になる」
「袁明殿、おさらば」

この2人のやりとり(↑)からは立場が異なることによる正義の違い、ただ目指すゴールは決してかけ離れたものではなかったことがよく表れていると感じました。

重い話が続く中で決して面白いわけでもないけれどそれでも思わずクスリと苦笑いしてしまったのは、矮脚虎・王英の浮気現場に刀を手に乗り込んでいく一丈青・扈三娘の場面と共に夫を失ったばかりの母夜叉・孫二娘 & 母大虫・顧大嫂の二女傑の酒盛り場面。  豪快でありながらも女性らしい悲しみを感じさせるこれらのシーンは同じ♀で男社会の中で精一杯頑張ってきた KiKi にはどこか甘酸っぱい感傷を呼び起こさせるものがありました。  もしも物語の中に入り込むことができるなら、是非あの酒盛りには参加したかったなぁ(苦笑)

さて、王進スクール卒業生でここまで負け知らずと言っても過言ではなかった九紋龍・史進を相手にあっさりと勝利してしまった宋国最強の童貫軍。  ここの描写を読んだだけで「この戦、梁山泊には勝ち目無し」と思わずにはいられません。  残り3巻でどこまでこてんぱんにやられちゃうのか、読むのが辛いこと間違いなしのラストに向かって次は第17巻です。  

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