水滸伝 8. 青龍の章  北方謙三

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北方水滸第8巻の2周目です。

水滸伝 8. 青龍の章
著:北方謙三  集英社文庫

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解珍・解宝父子は、祝家荘に大量の兵が入っていることに気づく。  官軍が梁山泊の喉元に、巨大な軍事拠点を作ろうとしていたのだった。  宋江、呉用らはそれを阻止しようとするが、堅固な守りと、張りめぐらされた罠によって攻め切ることができない。  勝利を確信した官軍に対し、梁山泊軍が繰り出した秘策とは。  最初の総力戦が、いま幕を開けようとしていた。  北方水滸、緊迫の第八巻。  (文庫本裏表紙より転載)

まずは恒例の各章のサブタイトルとその星が表す豪傑の名前の列挙からです。

天暴の星: 両頭蛇・解珍
地異の星: 白面郎君・鄭天寿
天富の星: 撲天鵰・李応
地悪の星: 没面目・焦挺
地勇の星: 病尉遅・孫立

この巻の白眉は何と言っても「祝家荘の戦い」なわけだけど、実は KiKi の印象に一番残ったのはその梁山泊にとって死ぬか生きるかというような戦いが始まる前に、戦ではなく言ってみれば事故で命を落とした豪傑のお話でした。  彼の名は鄭天寿。  この北方水滸では長きに亘って清風山に籠り「闇の塩の道」を守り続けた1人でした。  その清風山の皆さんの活躍はここまでさほど語られることもなく、「厳しい戦いを強いられ続けている」というような言葉であっさりと片付けられちゃってきていた物語的には不遇な1人だったんだけど、ここで思いっきりスポットライトが当たりました。

それにしても彼の人生は哀しい。  子供時代も不遇なら、青年時代も不遇、流れ流れて清風山に辿りつきふとしたことから晁蓋と、さらには晁蓋の仲介で盧俊義と出会い、「闇の塩の道」に関わるようになります。  そして梁山泊に合流。  で、これから・・・・・・という時にまさかの事故死です。  

高熱を出して苦しんでいる楊令の薬になる蔓草を任務の合間合間に探し続けていた鄭天寿は、祝家荘戦の前哨戦とでも呼ぶべき戦で見事に勝利をおさめた直後、その戦場だった岩山の崖の途中に探しても探しても見つけることができていなかったその蔓草を見つけます。  用心深く崖を降り、その蔓草を懐一杯に採集し立ち上がったところで足場が崩れ崖から落ちて落命。  しかもその蔓草がようやく楊令の手元に届くころには楊令は回復していて、「彼の死は何だったんだ??」状態という間抜けぶりです。

でもね、「戦で雄々しく死ぬのだけが梁山泊の男じゃない!」という北方さんのメッセージがそこにあるような気がしました。  何が哀しいって彼の最期の独白が何とも言えず哀しいんですよ。  彼は崖から落ちながら、高熱に苦しむ楊令を思い浮かべ、いつしかその楊令の顔がずっと昔に飢えで亡くした弟の顔と重なります。  そして

いま、持って帰ってやる。  食い物を持って帰ってやる。  兄ちゃん、やるだろう。

と心の中でつぶやくんですよ。  こんな間抜けな死に方はないだろうというような死に方だけど、戦の中で華々しく命を散らす男たちの姿よりも何倍も強烈な死として KiKi の心に残りました。  ホント、惜しい人を亡くしたものです。

           

さて物語的には一番の山場は冒頭にも書いたように「祝家荘の戦い」です。  梁山泊、二竜山、双頭山という梁山泊側の大三角形地帯のちょうどど真ん中付近に位置するのが「独竜岡(どくりゅうこう)」と呼ばれるエリアで、ここは「祝家荘」、「扈家荘」、「李家荘」という3つの勢力が独立を保ちながら治めていました。  その中の「祝家荘」に青蓮寺 & 官軍地方軍 が梁山泊を牽制するために兵力を送り込み、梁山泊の大三角形の連携を崩す足がかりとしようとしたことに端を発する戦です。

青蓮寺から送り込まれたのはあの知恵者・聞煥章。  そしてこの「祝家荘」への梁山泊側からの秘策というやつが言ってみれば「中国版・トロイの木馬大作戦」です。  ま、使われたのは木馬じゃなくて猪とか鹿とか熊だったりするんですけどね(苦笑)  木馬に隠れて・・・・ではないけれど、祝家荘へ獣肉を引っ提げて潜り込んだのが「祝家」にひとかたならぬ因縁を持つ猟師親子(解珍・解宝)とその猟師親と親戚関係にある官軍離脱軍人(孫立)一家です。

そして更には独竜岡内の「同盟関係」に縛られつつも官軍が大嫌いという李家の頭領・李応、その李家のバトラー・杜興といった興味深い人物が次々と登場し、梁山泊と内応します。  その影には例によって例の如く、あの片腕オーガナイザーの働きアリ、武松 & 李逵の無敵コンビの活躍アリと毎度おなじみとなりつつある逸話が多々紛れ込んでいます。

少なくとも「宋江さん捕縛作戦」で信じられないような兵力差で勝利を収めた梁山泊軍ですが、今度の戦いは青蓮寺の「本気モード」は雲泥の差だし、ついでにじっくりと準備を進めたプロジェクトだけに傍目にはかなり「梁山泊・危うし!」というムードなんですけど、あれだけの修羅場を乗り越えさせてもらった宋江さんは肝っ玉だけは鍛え上げられちゃったようで、結構平然としています。  そして祝家荘に潜り込んでいた内応者たちの活躍もあって梁山泊軍は勝利を収めます。  でも、犠牲はやっぱり多くて、この巻で命を失った豪傑はさらに増えてしまいました。

地異の星: 白面郎君・鄭天寿
地進の星: 出洞蛟・童威
地魔の星: 雲裏金剛・宋万
地妖の星: 摸着天・杜遷
地悪の星: 没面目・焦挺

鄭天寿は最初にお話したように事故死。  童威、宋万、杜遷の3人は戦死。  そしてもう1人可哀相な最期を迎えちゃったのが焦挺です。  彼は祝家荘戦に勝利した後、戦場をくまなく歩き回り官軍が遺して行った武器を拾い集めたり、荘の立て直しなんかに尽力している過程で聞煥章たちが脱出した非常口を見つけ出したもののそこに仕込まれていた矢に射られて落命。  相変わらず晁蓋さんはピンピンしているのに水滸108星に数え上げられている死者は数をどんどん増やしています。

さて、話は変わって・・・・・・・

この物語にはなかなか美味しそうな食べものの話が色々と出てくるんですけど、この物語の中の描写がどんなに美味しそうでも KiKi はちょっと眉を顰めちゃうものも多々あります。  例えば熊肉。  例えば猪肉。  例えば蛇肉。  まぁ、猪の方は KiKi も食べられないというほどじゃないけれど、熊肉はいけません!!  だって KiKi にはこんな経験があるんですよ。  梁山泊の皆さんって・・・・・・って言うか宋代の皆さんって、あんな獣臭のする食べものが平気なんですねぇ・・・・(苦笑)  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年8月 4日 10:47に書いたブログ記事です。

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