指ぬきの夏  E.エンライト

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北方水滸を読了したので、ここからは暫くの間 KiKi のライフワークの1つ、「岩波少年文庫全冊読破企画」に戻って読書の秋は児童書三昧で過ごしていきたいと思います。  久々の岩波少年文庫の1冊目はこちらです。

指ぬきの夏
著:E.エンライト 訳:谷口由美子  岩波少年文庫

51LoA4Wq5PL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

ガーネットは、ぐうぜん川で銀の指ぬきを見つけます。  その日から、すてきなことや冒険でいっぱいの夏がはじまりました。  森の中にある石灰炉に泊まったり、ヒッチハイクして家出をしたり...。  農園の暮らしのみずみずしい描写が光る秀作。  (文庫本裏表紙より転載)

久々の岩波少年文庫ということで、何から手をつけるべきか結構迷いました。  未読(このブログ上はという意味ですけど)の大作シリーズもの(例えばドリトル先生とかナルニアとかゲド戦記とか)にもかなり心惹かれたんですけど、あれこれ考えて選んだ1冊は結局かなり地味目のこちら(↑)となりました。  この物語は初読です。  

そしてこの本を選んだ理由は実にシンプルで、今現在ばぁばのひざかけを作成中の KiKi にとって「指ぬき(シンブル)」はとっても身近な物体だったから・・・・・ ^^;  実は読み始めるまでは「針さしの物語」みたいに針さし、指ぬき目線の人間観察の物語を想像していたんですけど、実は全然違う構造の物語でした。  「指ぬきの夏」というタイトルではあるけれど、ガーネットという少女のひと夏の経験の物語で指ぬきはその冒頭にチョロっと出てくるに過ぎません。  

ただこの指ぬきを拾った時からガーネットの周りではいろいろな信じられないような出来事が発生し、ガーネットは「やっぱりこれは魔法の指ぬきだったんだ。  この指ぬきが運んでくれたこの素晴らしい夏をこれからず~っと『指ぬきの夏』として記憶していこう!」というお話で、タイトルが「指ぬきの夏」。  そういう意味では KiKi の期待をあっさりと裏切ってくれちゃったプロットの物語だったんですけど、これがなかなかにいい味の物語だったんですよね~。


物語の舞台となっているのは1930年代のアメリカの小さな谷間の村です。  イマドキのアメリカ、それもニューヨークとかワシントンとかシカゴとかサンフランシスコみたいな都市部の華やかな舞台ではなく、どちらかというとローラ・インガルス・ワイルダーの「農場の少年」に近い雰囲気の舞台で繰り広げられる物語です。  

その村ではここ何週間というもの雨が全く降っておらず、その日の気温も43度。(猛暑日なんていうモンじゃありません!)  そんな状態がこれ以上続いたらエン麦もトウモロコシも収穫できなくなってしまうというのに家に届くのは請求書ばかり・・・・。  齢9歳半のヒロイン・ガーネットも家計の苦しさを知っていてとても心配していました。

ところがその日の夕食後、11歳の兄のジェイと一緒に川に泳ぎに行ったガーネットは、長引く日照りのため水が減って川底が現れたところで砂に半分埋まっていた本物の銀の指ぬきが落ちていたのを見つけました。  その美しさに魅入られたガーネットはその本物の銀の指ぬきを宝物として大事にすることにし、同時に彼女はそれを「魔法の指ぬき」だと信じます。  実際、ガーネットがその指ぬきを拾ったまさにその晩、何週間ぶりで雨が降り、ようやくガーネットも彼女の家族も人心地。  そこからガーネットの楽しい夏の日々が始まりました。

もう何年もお父さんが「お金が溜まったら建て替えたい」と考えていた納屋を建て替える目途がついたり、その建て替え準備の作業をしているところへひょっこりと各地を放浪してきたエリックという孤児の少年が現れ、住み込みで働くようになったり、ふとしたことで夜の図書館に閉じ込められる羽目に陥ったり、ちょっとした兄妹喧嘩がもとで家出してヒッチハイクの冒険旅行に出ることになったり・・・・・・。  現代の都市生活が当たり前の現代っ子には想像できないだろうほど不便な生活の中にいるガーネットなんだけど、そんなガーネットを見つめる周囲の大人の目が温くて、包みこまれるようで、「古き良き時代のアメリカ」というのはこういう国だったんだろうな・・・・と感じさせられます。

自然描写や農村特有の品評会の描写が素晴らしく、眠っていた五感の全てが揺り動かされるようなそんな感想を抱きました。  特に好きだったのは以下の記述です。

暗くなってからただよいだすにおいは、昼間はけっして気づかせない、とくべつなにおいです。  まるでトウモロコシらしくなく、教会にいるときに感じる、ふしぎな、スパイスのようなつんとするにおいです。  道ばたの溝に咲いているシャボンソウが、うす暗闇の中でぼうっと浮きあがって見え、きついあまいにおいをあたりにまきちらしています。

わかる、わかる。  この感覚。  夜の闇で視界が遮られることによって何故か嗅覚みたいな他の感覚が鋭敏になって「昼間とは何かが違う」と感じられる不思議さ。  実はその匂いは昼間も同じように漂っていたかもしれないものでもあれば、昼夜の寒暖差が産む特別なものかもしれないわけだけど、慣れ親しんだはずの場所もまったく異なる表情を見せる不思議にワクワク・ドキドキする感覚。  これって夜も照明の力で昼間並みに明るく、人いきれで寒暖差も少なくなってしまった現代の都会では絶対といっていいほど感じられることのない特別な感覚だと思うんですよね~。

そういう意味ではこの物語、とっても良質な児童書ではあるものの、イマドキの子供たちがどれくらいこの内容に興味を持ったり、この物語世界をイメージすることができるのか、ちょっと不安に感じました。  KiKi のようにもともと田舎モンで子供時代に土に触れた経験があり、そして今もLothlórien_山小舎で世捨て人みたいな暮しをしている人間にとっては余りにもリアリティに溢れた素敵な物語だったんですけどねぇ。

さて、この物語が結構気に入ったので、せっかくのこの機会に岩波少年文庫にもう1冊収録されているエンライト作品に読み進んでいきたいと思います。  次の作品は「土曜日はお楽しみ」です。

 

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年9月 8日 08:44に書いたブログ記事です。

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