まぼろしの白馬 E.グージ

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The brave soul and the pure spirit shall with a merry and a loving heart in herit the kingdom together.

雄々しき魂と清らなる心をもてるもの、ほがらかなる精神とやさしき愛をもてるものとともにこの王国を継承すべし

本日の KiKi の読了本はこちらです。

まぼろしの白馬
著:E.グージ 訳:石井桃子  岩波少年文庫

51UsumiICpL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

古い領主館にひきとられた孤児の少女マリアは、館にまつわる伝説に興味を抱き、その謎を解こうと大はりきり・・・・・。  活発で明るいマリアは、暗い館の生活を一変させ、周囲のおとなたちを事件にまきこみます。  ロマンチックな物語。  (文庫本裏表紙より転載)

この本は初読だったんですけど、一読して感じたのは「ああ、この本を子供の頃に読んだら今よりももっともっと夢中になっていたんだろうな」ということでした。  とにかく女の子が憧れるだろうありとあらゆるものが美しい言葉で描かれているんですよね~。  舞台となる古風なお城然り。  少女のサイズに作られた入口(つまり大人は入れない)の自分だけの部屋然り。  美しい家具・調度の数々然り。  毎日誰かが用意してくれる綺麗な洋服や美味しそうな食べ物の数々然り。  館を取り囲む美しい庭園とのどかな田園風景然り。  登場する地名や人の名前までもが、きれいなものを連想させます。  シルバリーデュー(銀のしずく)村とか、パラダイスの丘とか、ムーン・エーカー館とか、とか、とか・・・・。

ま、逆に言えば思春期の男の子だったらこの物語の描写は甘ったるすぎて「とてもじゃないけど読んじゃいられない!」という気分に陥る可能性大なのかもしれません。  もちろん美しい物語であることに変わりはないんだけど、やっぱり「少女の夢」っていう雰囲気があまりにも濃厚な作品だと感じました。

特にそれを感じるのは、物語の中盤から出てくる悪役たちの描写なんですよ。  色彩鮮やかな荘園の中で暗い松林に潜んでいるという明暗の対比とか「黒い男たち」という呼び方でその残虐さや不気味さを象徴しようとしているんだけど、そんな彼らの描写がどこか中途半端というか精気に乏しいというか・・・・・・。  いかにも女の子が空想の中で描く「不気味で悪い奴ら」という感じで、真に迫ってくる存在感・現実感みたいなものが希薄なんですよね~。  彼らの生業が強奪であることは所謂伝聞の形でそこかしこに描かれるんだけど、その割には荘園で暮らしその被害を被っている一般人の生活の悲惨さみたいなものもほとんど描かれていないし・・・・・。

訳者である石井桃子先生の解説によると「(この物語の作者は)学校にいかず、その教育は、いっさい家庭教師に任されていました。  (中略)  家庭教師による教育が、まことにむらで、作者がかなり大きくなっても、代々の王様の名前や九九算くらいしか知らないでいることがわかり、父親のグージ博士を驚かせたそうです。」とのこと。  つまり、作者自身が裕福な階級の生まれであること。  更にはどちらかと言えばあまり親には顧りみられなかった少女だったことが推察されます。  それってつまり、主人公の孤児マリアにどこか似ていると思うんですよね。  そういう意味ではマリアは恐らく作者の分身であることは間違いないことのように感じられます。

物質的には豊かな環境に暮らしつつも、どこか現実感に乏しい少女。  ある意味で俗世間にはほとんど汚されず、美しい空想の翼を広げることを心の喜びとしていた少女。  この物語に濃厚に漂うどこか夢見がちな雰囲気はそんな作者の実生活の中で純粋培養された結晶みたいなものなのかもしれません。

この物語の中で特に気に入ったのはイギリスの田舎での貴族の暮しぶりが、豊かな情景描写と共に詳細に描かれているところと、「お偉い貴族様」も元を正せばバイキングというあたりが実にさり気なく描かれているところです。  でもそんな「元バイキングとその末裔たち」も貴族と言う立場を得れば「家訓」な~んていう高尚なものを掲げるようにもなれば、noblesse oblige (財産、権力、社会的地位の保持には責任が伴う)とはどういうものかを体現する存在ともなることをロマンチックにファンタジックに、それでいてリアルに描いています。

この本をかなり愛好している(らしい)中川李枝子さんによればこの物語を読むには少しばかり魔法が必要なのでそうです。  そしてその呪文は

「時は1842年 マリア・メリウェザー13歳 ちちんぷい」

というものだとか(笑)  確かに素直にこの物語に共鳴するためには少女の心が必要かもしれないけれど、「昔、少女だった」記憶とその当時に持っていた「美しいものへの純粋な憧れ」を忘れていない大人にも楽しめる美しい物語だと思いました。  はてさて、この物語、世の男性諸氏にはどんな感想を抱かせるものやら・・・・・(笑)


・・・・・という興味もあり、最後にこの本の宮崎駿さんの推薦文をご紹介しておきましょう。


敬愛する先輩から、すすめられた本です。  おまけに、訳者の石井桃子さんはとても素晴らしい方で、つまらない本を訳すはずがありません。
おもしろくなかったらどうしよう・・・・。  読む前から充分なプレッシャーがありました。  結果として、夢中でおわりまで読みました。  何かの結晶がキラキラかがやいている本です。  まるで先輩のように健康ですこやかな少女の内面の世界のようにも思えました。

あ、やっぱり印象は「結晶、キラキラ」ですか?  何だか KiKi と同じような感想で嬉しいなぁ!

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