二年間の休暇 (上)(下) J.ヴェルヌ

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沼津への帰省中に割り込んできた「電子書籍積読本読了企画(? 企画というほどのものでもなかったけれど ^^;)」によりちょっと中断されて思いのほか時間がかかってしまったけれど、再び「岩波少年文庫」に戻ってきました。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

二年間の休暇 (上)
著:J.ヴェルヌ 訳:私市保彦  岩波少年文庫

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休暇で六週間の航海に出るはずだった寄宿学校の生徒たち。  ところが船が流され、嵐のはてに無人島に漂着してしまう。  少年たちは力を合わせて、島での生活を築きあげていく。  「十五少年漂流記」として知られる傑作冒険小説。  完訳。  (文庫本裏表紙より転載)

二年間の休暇 (下)
著:J.ヴェルヌ 訳:私市保彦  岩波少年文庫

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さまざまな困難にもめげず、無人島の生活を充実させていく少年たちだったが、ブリアンとドニファンが対立を深めてしまい・・・・・。  そんなとき、島に悪漢が上陸し、ドニファンに危機がせまる。  少年たちは、無事に故郷に帰ることができるのか?  (文庫本裏表紙より転載)

最近ではこの物語の標題も「二年間の休暇; Deux Ans de Vacances」という著者がつけたタイトルどおりに翻訳された本が多いようですが、KiKi の子供時代にはもっぱら「十五少年漂流記」というタイトルで知られていました。  だから恥ずかしながらこの本が出版されたのを知った時、KiKi 自身はこの物語があの「十五少年漂流記」であることをちゃんと認識していませんでした ^^;  ま、それはさておき、子供時代に KiKi が読んだその「十五少年漂流記」は先日ご紹介したこの「世界少年少女文学全集」の中の1冊で抄訳版でした。  ですから今回が「全訳版」の初読体験となります。

以前、「ロビンソン・クルーソー」の Review にも書いたけれど、あの本といいこの本といい、KiKi の子供時代にはどちらかといえば「男の子向き」の本としてカテゴライズされていたように思うんですよね。  実際、KiKi も抄訳版の「十五少年」を楽しく読んだけど、当時の自分とは異なりやたらと生活力旺盛な彼らにどこか「できすぎ」的な感想を抱いたうえに、「冒険」とか「自活」というお話にはあまり興味がなかったせいもあって、何度も何度も繰り返し読むには至りませんでした。

その後、大学時代に W.ゴールディングの「蠅の王」に出会い、どうやら KiKi の頭の中ではこれら2冊の本がごっちゃになってしまっていたようです。  時代設定も、ストーリーも、「漂流記」という共通点こそあれ全然違うのにね・・・・・(苦笑)  だから今回の読書では時折、「あれ?  こうだっけ??」と戸惑うことも多く、そういう意味では初読と同じくらいの驚きや意外性に楽しませてもらいました(笑)

   

さて、子供時代には漠然と感じていた「できすぎ」感・・・・のようなもの。  今回もこれに近いものはかなり強く感じました。  下は8歳から上は14歳までの少年15人が無人島に漂着したわりには、やたらと創意工夫の能力が高い・・・・。  ロンビンソン・クルーソーのような大人ならいざ知らず、彼らが漂着した際に乗っていたスルギ号の部材で生活環境を整えていくあたりは、彼らが子供であることをほとんど感じさせません。  さらに言えば子供たちが自分たちで「学校もどき」を作り上げるあたりは、いかに極寒に閉ざされる冬の暇つぶしという環境がさせたこととは言え、やっぱり「できすぎ」感を感じずにはいられません。  しかもいかにメンバーの中に手先の器用な子がいるとは言え、漂着先でスケート靴を作ってスケートに興じるなんて・・・・・(苦笑)  

漂着したスルギ号から持ち出した燃料だけでは暮らしていけないから・・・・とアザラシから油をとることを考えるのもビックリ仰天。  そもそも KiKi にはそんなことは思いつけないだろうし、もっと言えば仮に必要に迫られて何とか思いついたとしても、アザラシの解体なんてできそうにない・・・・・(苦笑)  もっとも・・・・・。  彼らは1人を除くと一様にいわゆる上流階級に属する子供達なんだけど、当時の物質文化は現代の一般家庭の子供と比較してもさほど恵まれていたわけではなかっただろうから、そういう意味では「自然の中で生き抜くには何が必要か?」に関しては知識も、さらには「自らの手で何とかする」度胸・覚悟といったものも日常生活の中で自然と備わっていたのかもしれません。

この物語の中で KiKi がもっとも「できすぎ」感を感じるのは、彼らが着るものにまったく困っていないところです。  8歳から14歳までの少年と言えば「育ちざかり」です。  とりあえず漂着した時点で着るものにさほど不自由していないのはいいとして、二年間という長いようでいて比較的短期間の自給自足生活で済んだことを考慮に入れたとしても、身体の成長に手持ちの衣類が追いつかなくて、ついでにやっている生活はサバイバリストのそれだから、あちこち破けたり綻んだりして着るものがなくなっていってもおかしくないのに、何故かみんなこざっぱりとしています。  特にこの本の挿し絵(レオン・ブネット)を見ると、まるでハイキングか狩りに行く時みたいな恰好です ^^;  あ、でもこの挿絵、雰囲気があって好きなんですけどね。

彼らが漂着した島を「植民地」と呼んだり、みんなのリーダーを選ぶのに選挙をするんだけど、一緒に漂着した黒人の見習い水夫には選挙権がないというような描写は時代を感じさせます。  ただ選挙権がないことを除くと、この見習い水夫君はかなり有能な人物として描かれているうえに、尚且つ、他の少年達も彼を隷属させているような意識はないように描かれているので、そういう意味ではなかなか先進的な考え方の少年達の集団だったのかもしれません。

漂着した彼らはニュージーランドから来たことになっているんだけど、国籍は様々で、フランス人2名、アメリカ人1名、イギリス人11名、黒人(国籍不明)1人で、当時のニュージーランドが植民地であったこと、現在もイギリス連邦加盟国であり、英連邦王国の一国であることを改めて思い出させます。  そして KiKi にとってかなり印象的だったのが唯一のアメリカ人であるゴードンがこの島の植民地化に他の少年達とは比べものにならないほどずばぬけて熱心だったことです。  ヨーロッパの列強が帝国主義に邁進していた時代に、二流国として彼らを追いかけ続けていたアメリカの姿がここにやんわりと揶揄されているように感じました。

イギリス人の中のリーダー的存在であるドニファンとフランス人のうちの兄であるブリアンの確執は、彼らの性格によるもの・・・・・というように描かれているけれど、英仏2国の歴史的な関係の縮図みたいな印象があります。  ヴェルヌ自身がフランス人のためか、どこかブリアンを「良い子」扱い、「人気者扱い」しているのがちょっと笑えます。  でも、よくよく読んでみると、ブリアンにもどこか小賢しいようなところ、計算高いところが見え隠れするのはやっぱりお国柄でしょうか・・・・・(笑)

いずれにしろ、どこか似ている「蠅の王」では少年たちの中に死亡者が出てしまうのに、こちらの物語では15人が1人も欠けることなく本国に帰還します。  その帰還直前に、彼らの植民地に後から漂着した「極悪人」設定された大人たちとの戦いのシーンがあるんですけど、「極悪人 ≒ 殺されても仕方ない人種」という描き方には若干の抵抗を覚えます。  もちろん「やるか、やられるか」の世界なわけだから必要以上に美化することもないとは思うけれど、こういう端々に「善悪二元論」的な価値観が見え隠れして、何となく落ち着かない気分になります。

最後の一文が印象的です。


しかし - どの子供達にも知っておいてもらいたい - いかに危険に満ちた難局であろうと、秩序と熱意と勇気をもってすれば切り抜けることができるのである。  とりわけ、「スルギ号」の少年漂流者たちのことを思い、次のことを忘れないでほしい。  少年たちは試練によって成熟し、生きるための厳しい修練を積み重ね、帰国した時には、下級生たちはほとんど上級生のように成長し、上級生はほとんど大人のように成長していたのである。


ヨーロッパ(特に英国では顕著)では「子供」を日本ほど「子供扱い」せず、「小さな大人扱い」する傾向があります。  この物語に出てくる15人の少年たちはまさにその「小さな大人」を具現化したような存在だと感じられました。  

    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年10月24日 09:52に書いたブログ記事です。

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