え? そうだったの??  完全看護 その5

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さて、齢88のじぃじの付き添いのまま、何とか継続されていたばぁばの隔離病棟入院生活。  ダーリン & KiKi はその間、午前と午後の2回(それぞれ2時間ずつ)のお見舞い(実家と病院の往復の移動を合わせると3時間半ずつぐらい)を続け、その合間合間に役場へ行ったり、地域統括支援センターに行ったりしつつもばぁばの帰宅準備のための大掃除 & お部屋の引っ越しに取り掛かりました。  

ばぁばの入院までじぃじとばぁばは2階の和室に和布団を敷いて就寝していたのですが、無事帰宅となっても階段はできるだけ使わない方がいいし、まして大腿骨を骨折した人は和の生活はもうできないと病院から言われていました。  そこで1階の空き部屋(と言っても色々な物が雑多に置かれていた)を退院後の2人の寝室と決め、そこに KiKi が子供時代に使っていたベッドを入れたり、昼間に過ごす部屋にゆったりしたタイプの椅子を新たに購入したりと大改造です。  同時に家中の段差という段差を調べ上げ、後日打ち合わせすることになるリホームの資料を作ったりと大忙し。

そうこうしているうちに、ばぁばのリハビリは着々と進み、ようやく病室にポータブル・トイレを入れるまでに回復してきました。  例の尿取パッドを使用中の「おしっこ問答」には誰もが辟易とし始めていた頃だったので、病院の理学療法士さん & 作業療法士さんから

「そろそろ、お部屋にポータブル・トイレを入れましょう。」

と言われた時には、ようやくこれであの「おしっこ問答」からは解放されると家族一同、ほっと胸をなでおろしました。  でも、そんなに事は単純ではなかったことをあっという間に思い知らされることになりました。

多くのことを忘れちゃっているばぁばなわけですが、変な(?)ことは覚えているんですよね~。  その筆頭が「これまで自宅で使用していたトイレは水洗だった」ということでした。

ポータブル・トイレが病室に運び込まれた時は、それを持ってきてくれた作業療法士さんにも丁寧にお礼を言ったし、「これで尿取パッドとはさよならできるわね?」と声をかけられると曖昧に頷いていたばぁばでしたが、今度はそのポータブル・トイレが自分の寝るベッドの脇に置いてあること、用を足した後に流す水道栓がついていないことにすさまじい抵抗を始めました。

もちろん、相変わらず自分が骨折をしたことも、手術を受けたことも、術後のリハビリのために入院中であることも忘れちゃっています。  そしてそのトイレで用を足すことを拒否します。  とは言え、ばぁばの病室は相変わらず看護婦さんが言うところの「隔離病棟」です。  「療養病棟」のトイレからはもっとも距離のある部屋にいる以上、まだそこまで通うことができるほどには回復していません。

少しだけ幸いだったのは以前の「おしっこ問答」では「今はまだ歩けないという話」と「尿取パッドを装着中という話」、更には「尿取パッドは優秀だ」という3つの組み合わせを全て理解しないといけなかったのがポータブル・トイレに変更になったことにより後の2つは言わなくても済むようになったこと(要は話のポイントが以前よりシンプルになったということ)・・・・・ぐらいでしょうか?

只、その代わりに今度は

「水はどうやって流すの?」

「このトイレは水は流れないの。」

「じゃあ、出しちゃったものはどうやって始末されるの?」

「ヘルパーさんか私がちゃんと片付けるから心配しないで。」

「いやよ、そんなの。  私はちゃんと水が流れるトイレに行けますから・・・・・。」

という会話にとって代わられただけ・・・・・だったんですけどね。  以前の「おしっこ問答」では1回につき30~1時間だったのが、今度の「おしっこ問答 Ver 2」では20~30分ぐらいに短縮されたことぐらいが良かったこと・・・・・だったでしょうか?(苦笑)  

ま、てなわけで、せっかく病室に運び込まれたポータブル・トイレは唯一の利用者にその利用目的を最後まで理解されないまま、病室に置かれていることになりました。  一応、家族が「おしっこ問答 Ver2.」の末に使用を促すことにより、ちゃんとその役目は果たしてくれましたけど・・・・。  ただ、ばぁばが病室にあるポータブル・トイレの存在を最後まで理解することができなかったという現実が次の大事件の遠因となったのも確かなことでした。


ある日、いつものように午前のお見舞いに行った KiKi をじぃじが病室の外に連れ出しました。  その間、ばぁばの話し相手はダーリンにお任せです。  廊下に出たじぃじは弱り切った表情で切り出しました。

「あのな、夕べ・・・というか今朝がたのことなんだけど、あの人、またベッドから抜け出してウロウロしちゃったんだよ。」

「え?  拘束は外されていたの?」

「いや、寝る前に確認した時にはちゃんと縛ってあったんだよ。  でも、どうやったかはわからないんだけど、ミトンを取って、拘束紐も解いて、柵も乗り越えちゃったらしいんだよなぁ・・・・。」

「らしい・・・・って。  お父さんは気がつかなかったんだ。」

「うん、情けないけど熟睡していたらしくて、まったく気がつかなかった。」

「でも、それで転んだりしなくて良かったね。  ただ、夜中に拘束を解いて歩き回ったんなら、又、病院から色々言われちゃうね。  覚悟はしておかないと・・・・・。  で、騒いだりはしなかった?」

「うん、騒いではいないんだけど、何だ・・・・その。  歩き回っただけじゃなくて・・・・・・・。」

「どうしたの?」

「うん・・・・・・。」

どうにも歯切れの悪いじぃじです。

「どうしたの?  騒ぎはしなかったけど、何かしたの?」

「うん、ウロウロした挙句、他の人の病室に入っちゃったんだよ。  ふと気がついたらあの人がベッドにいなかったんで、探しに行ったら3つ先の病室にいたんだ・・・・・。  で、なぁ・・・・・。」

「あらま、そりゃ大変!  で?」

「うん、その病室でしゃがみ込んでいたんで『何してるんだ?』って声をかけたんだけど、ほら、暗くてよく見えないから・・・・・。  そしたら・・・・・・・。」

「うん、そしたら、どうしたの?」

「その部屋のゴミ箱の上でしゃがんでいたんだよ。  で、そこで・・・・・・  おしっこをしていたんだ。」

「はぁ!!  おしっこ?!」

「うん。  すぐに夜勤の看護婦さんに伝えて始末はしてもらったんだ。  で、病室の方は寝たきりの患者さんでほとんど周りの状況がわからない人らしくて、無反応だったし、怒っているとかそういうことはないんだけど・・・・・・。  謝ろうにも、わからないらしいし・・・・・・。  あの人はそこが人様の病室だってことは理解していないし・・・・・・。」

これを聞いた時、再び KiKi は唖然としてしまいました。  ばぁばの入院以来、茫然として思考停止に陥ったことは数あれど、この時ほどそのショックが大きかったことはかつてありませんでした。  これまではどちらかと言えば「家族の問題」「ばぁばと家族の間の問題」で茫然とさせられることがほとんどでした。  でも、今回は「他人様を巻き込んだ問題」の発生です。  

「わかった。  分かったからと言ってどうすればいいのかはまったく分からないけど・・・・・。  でも、最悪のことを覚悟しなくちゃいけないかもしれないってことも、判ったから・・・・・・。」

「いや、今回はさすがの私も参ったよ・・・・・。」

「うん、ご苦労様。  ごめんね。  お父さんにそんな・・・・・  お父さんも疲れていたんだよね。  それなのに付き添いの交代さえしてあげられないんだから、情けないよ・・・・・。」

「いや、そんなことはいいんだ。  それに、付き添いで疲れていたわけじゃないんだ。」

じぃじが何と言おうが、齢88の爺様が病院の簡易ベッドで寝泊まりしていて、疲れていないはずはありません。  できることなら、KiKi だって交代してあげたいし、じぃじは家で休ませてあげたいとも思っていました。  でも、KiKi が付き添えば又「深夜の大乱闘」が発生するかもしれません。  それはそれでご近所の病室(と言ってもそこは「隔離病棟」ですから、少しは離れていたのですが)の方にご迷惑だったわけで、だからこそ念書まで要求されたうえでの「じぃじの付き添い付き継続入院」だったのです。

もう、何をどうすればいいのか、KiKi には判断ができない状態でした。  じぃじを病室に帰らせ、入れ違いでダーリンを呼び出し、今聞いた話を伝え、どうすればいいか相談したのですが、さすがにこの事態に関してはダーリンも「う~ん・・・・・。」と腕を組んで考え込んでしまいました。  そこへ案の定・・・・の婦長さん登場です。  再び KiKi は婦長室に連れていかれました。

「あの、父から聞きました。  昨晩のこと。  本当に申し訳ありませんでした。  で、そのお部屋の方にどんな風にお詫びすればいいか、婦長さんにご相談・・・・・・。」

と言いかける KiKi を婦長さんは押しとどめました。  そして

「あちらへは何もしなくていいんです。  幸いなことに・・・・と言ってはなんですけど、ご本人は何も気がついていないし、何も感じていらっしゃいません。  ご家族の方も滅多にいらっしゃらないし、昨晩のことはご存知ないからこのままの方がいいんです。  ただ、今回のことはやはり重大なことであるということはご理解いただけますよね。  まず、お父様の付き添いですが、付き添いをしていただいても今回のようなことがあるようではあまり意味はありませんし、ましてご高齢でこちらも別の心配を抱え続けることになるわけですから、お引き取り頂いた方がいいだろうということになりました。  で、娘さんが付き添っても前回のような騒ぎになってしまうことはじゅうぶん考えられるので、娘さんの付き添いも無理。  ご主人ではもっと無理だろうと思わざるをえません。  ですから、付き添いはもう結構です。  ただ、こんなことが再びあってもいけませんし、お母様だけが患者さんではありません。  私どもとしては他の入院患者さんの安静も保たなければいけません。  まして、あのあたりはすべて個室です。  それなりの金額も皆さんにお支払いいただいています。  もちろんお母様も・・・・ですけど。  でも、それでこのようなことが繰り返されて他の患者さんの入院生活が脅かされてもこちらとしては困ってしまうんです。  ですから、とにかく介護認定を急いで、できるだけ早くご自宅へ帰ることができるように手配してください。」

との最終通告を頂いてしまいました。  そしてこの時点ではあの役場のあんちゃんと不愉快極まりない会話を終え、認定調査の予定日の連絡を待っている状態で、KiKi にできることは役場を急かすことぐらい・・・・・? という感じでした。  もっともあの役場のあんちゃんも言っていたように、単なるメッセンジャー以外の仕事をしていない役場に詰め寄ったところで、「役場の委託先」とやらが動いてくれない限りはまた「面倒くさいことばかり言ってくる迷惑家族扱い」されるのがオチでした。

もはや KiKi にできることは神頼みぐらいか・・・・・・

病室に戻ると自分がしでかしたことはまったく覚えていないうえに、もちろん故意でもなかった(恐らくばぁばの認識としてはその他人様の病室をトイレだと信じていたのだろうし、自分がしゃがみ込んだものは便器だと思っていたのでしょう。)わけだから、何ら恥じることもなく、反省することもなく、純粋に家族との会話に興じているばぁばがいました。  社会的には大きな問題であることをしでかしつつもその自覚のないばぁば。  その姿が哀しいような、そのことに気がついていないことにほっとするような不思議な気分をその日は味わい尽くすことになりました。

もう、ばぁばには「普通の生活」「一般社会の中で暮らす生活」が困難なんだ・・・・・そう思わずにはいられませんでした。  「いつ、何のきっかけで、何をしでかすかわからない・・・・」  それが家族の間だけで済むならまだいいけど、そうとは限らない。  アルツハイマー型認知症という病気の本当の怖さを実感した1日でした。



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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年10月10日 10:41に書いたブログ記事です。

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