ゲド戦記1 影との戦い U.K.ル=グウィン

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一応大学では「英文学」なんちゅうモンを学んだ KiKi が児童文学を自分の後半生のライフワークの1つと思い定め「岩波少年文庫全冊読破企画」をぶち上げた頃、残念なことにこの作品は岩波少年文庫のラインナップには含まれていませんでした。  「何故??」と思いつつもないものはしょうがない・・・・と諦め、こちらのソフトカバー版で Box 入り全冊を買い揃えました。  その後数年してジブリ映画の影響もあってかこのシリーズが岩波少年文庫のラインナップに含まれた時、KiKi がどれほど歯ぎしりしたことか!!  商売って言うモンはこういうモンと思い知らされた1つの印象深いエピソードとなりました。  ま、てなわけで本日の KiKi の読了本はこちらです。

ゲド戦記1 影との戦い
著:U.K.ル=グウィン 訳:清水真砂子  岩波書店

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アースシーのゴント島に生まれた少年ゲドは、自分に不思議な力がそなわっているのを知り、真の魔法を学ぶためローク学院に入る。  進歩は早かった。  得意になったゲドは、禁じられた呪文を唱えてしまう。  (ソフトカバー版扉より転載)

ゲド戦記1 影との戦い
著:U.K.ル=グウィン 訳:清水真砂子  岩波少年文庫

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少年ゲドは、自分に不思議な力がそなわっているのを知り、ローク学院で真の魔法を学ぶ。  血気にはやる高慢なゲドは、修業中あやまって死の影を呼びだしてしまい、きびしい試練にのぞむ.  (岩波少年文庫HPより転載)

ルイスの「ナルニア」、トールキンの「指輪」と並んで、三大ファンタジーと呼ばれることもあるこの作品。  実は KiKi が初めて出会ったのは大学時代でした。  もっともこの作品に子供時代に出会っても何が何やらチンプンカンプンだったかもしれません。  それはとりもなおさず、子供時代の KiKi がゲドと同じように「明るさ」、「カッコよさ」、「美しさ」に惹かれ、物を測る尺度のかなり大きな部分が「役に立つか否か」だったことに寄っていたからです。  そう言う意味では子供時代の KiKi にはゲドが出会う師たちの言葉の1つ1つがゲド同様にピンとこなかったような気がして仕方ない・・・・・ ^^;  と、同時に影の正体が何なのか?は分からずじまいだった可能性もあるような気がしています。

でも、幸いなことに KiKi がこの物語に出会ったのは大学時代でした。  そういう意味ではユングやフロイトも少しは聞きかじっていたし、哲学的な思考というやつもわずかながら芽生えていたし、更には自分の身の回りで起こっていることを懐疑的に考え直してみるという姿勢も少しずつ生まれていた時代に読んだことにより、印象に残る作品の1つになっていたように思います。

  

今回、久々にこのシリーズを手に取ってみたけれど、やはり多くのことを考えさせられる読書体験となったように思います。  まず、この物語の中で扱われている「魔法」の概念が素晴らしいと思うんですよね。  魔法をかけるためにはそのものの真の名前を知らなくてはいけくて、例えば魔法で食べ物を出すこと、それを食べて味や香りを楽しむことも、満腹感も得られるけれど、所詮その正体は「言葉」でしかなく飢えた人間を本当の意味で癒しはしない、言葉を食べているだけのこと・・・・・という考え方。  

又、自分の都合の良いように魔法で天気を変えるのはたやすいことだけど、それはいかにも利己主義的な考え方で、その行為が別の場所での天気をも左右し、いわば宇宙の均衡を崩しかねないものであるという考え方は素晴らしいと思いました。  結果、真の賢者と呼ばれるレベルの魔法使いになればなるほど魔法を使うことに躊躇するようになるというこのプロットは実利主義、科学万能主義、効率主義で成り立っている現代の私たちの生き方に与える1つのアンチテーゼであると感じられました。

さらにはまだまだ幼さが残るゲドが類まれな魔法使いの資質と思春期特有の過ぎた虚栄心から、大いなる災いである「影」を招いてしまうというプロットにも多くを考えさせられます。  「地位」、「名誉」、「金」、「才能」というようなある種の「力」を手にすると、人間というこのしょ~もない生き物はとかく高慢になりがちで、それゆえに陥りがちな「妬み」、「自尊」、「虚飾」というものがあり、結果的にはそれに踊らされてしまう自分にある時ふと気がつかされる・・・・・。  そういう体験は多かれ少なかれ誰にもあるもののような気がします。  逆にそれらの「力」と無縁であればあったで「嫉妬」、「不公平感」に苛まれるのもこれまた人の性です。  

ゲドが恐れる「影」は、ゲドが抱える驕りや不安、劣等感や恐怖、未熟さや喪失、さらには死というような負の力の集合というように解釈できると思うんだけど(もっと言うなら自分が見落としてきたこと、自分が蔑んできたこと、自分が排除してきたこと、そういうものの全体かもしれない)、それらは決して「善 vs. 悪」とか「光 vs. 影」というように対立するものではなく、片方があれば必然的にもう片方も同時にあるというようなものに過ぎなくて、それから目を背け逃げようとすべきものではなくまして立ち向かい受容すべきもの(克服するというのともちょっと違う)という考え方にも共感が持てます。  結局はその影自体も最初からゲドの一部なんだということが、実に見事に描かれていると感じられました。  ゲドがその自らの「影」を狩りに行く前に彼の師であるオジオンの語る言葉が、齢5xを迎えた今の KiKi には実に真実味のある言葉として響きます。  曰く

「もしも、このまま、先へ先へと逃げて行けば、どこへいっても危険と災いがそなたを待ち受けておるじゃろう。  そなたを駆り立てているのはむこうじゃからの。  今までは、むこうがそなたの行く道を決めてきた。  だが、これからはそなたが決めなくてはならぬ。  そなたを追ってきたものを、今度はそなたが追うのじゃ。  そなたを追ってきた狩人はそなたが狩らねばならぬ。」

一時期、女性誌なんかには「自分探し」とか「本当の自分」とか「自己実現」という言葉が躍っていた時代があったけれど、KiKi にはこの精神こそが本当の意味での「自分探し」、「自己実現」だと感じられます。

さて、今回の読書までほとんど気に留めたことがなかったんだけど、今回の読書で実に印象に残ったことがあります。  それはゲドが最初から何故か敵愾心を燃やし、「影」を呼び出す禁断の呪文を使うきっかけを作るに至ったヒスイという魔法学校の先輩のことです。    ゲドをあざけるような慇懃無礼な態度や、育ちの違いから滲み出る洗練された(というよりキザな?)物腰、ゲドより年長でより多くを学んでいるために実際以上に輝いて見えたであろう魔法の力などが、ゲドの対抗意識を煽ったわけですが、結果的に彼の行く末は「いっちょまえの魔法使い」ではなく、アースシーの中の1つの島の「領主お抱えのまじない師」レベルでした。  最初から、ゲドやカラスノエンドウ(ゲドの親友)の敵ではなかったわけですが、彼はゲドが「影」を呼び出すきっかけを作ったのみならず、彼の存在そのものがゲドの「影」の一部を具現化した存在だったのかもしれないと感じられました。


さて、最後にこの本の宮崎駿さんの推薦文をご紹介しておきましょう。

 

この物語ほど竜を見事に描いた本はありません。  人間よりはるかに古い生き物。  壮大で邪悪で、気高い長虫。  鋼のウロコにおおわれた身体の中では炎が燃えています。  この竜を形にすることが今でもできません。  ありきたりのコーモリの翼をもったトカゲにしたくないのです。  かと言って日本や中国の竜とも違います。  竜がこの物語の世界をとても奥深くしているのです。  


それで息子さんにこの作品のアニメ化を任せて、結果、ああなっちゃった(KiKi はジブリアニメは観ていません。  ここで言う「ああなっちゃった」とはスタジオ・ジブリと著者のスッタモンダの話です。)んでしょうか??  結果的にどういう映画だったんですかねぇ・・・・・。  Lothlórien_山小舎の近くにはレンタル・ビデオ店な~んていう洒落たモンはないので、なかなか観る機会がないんですけど、一度は観ておきたい気がしないでもない・・・・・(苦笑)    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年10月29日 12:32に書いたブログ記事です。

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