ゲド戦記3 さいはての島へ U.K.ル=グウィン

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今日は「ゲド戦記」の3巻目の Review です。  巷の噂によればジブリのアニメ「ゲド戦記」はこの巻の内容をベースにしているとか・・・・・。  その映画は観ていないし、これからもたまたまつけた TV で放映されていて他には観るものもないような状況にでも陥らない限り、特に観る予定もないので「だから何だ?」っていう感じですが、もしもジブリ映画に関する何らかの情報を期待される方が何かの間違いでこのエントリーにお立ち寄りいただいたとしたなら、このエントリーでは全くそれには触れていないことを最初にお断りしておきます。

ゲド戦記3 さいはての島へ
著:U.K.ル=グウィン 訳:清水真砂子  岩波書店

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大賢人ゲドのもとに、ある国の王子が知らせをもってきた。  彼の国では魔法の力が衰え、人々は無気力になり、まるで国中が死の訪れを待っているようだと。  ゲドはアレン王子を連れ、見えない敵を求めて旅に出る。  (ソフトカバー版扉より転載)

ゲド戦記3 さいはての島へ
著:U.K.ル=グウィン 訳:清水真砂子  岩波少年文庫

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アースシーを治める大賢人となったゲドは、災いの源を断つため、若い王子をともなって最果ての地におもむき、死力を尽くして戦う。  (岩波少年文庫HPより転載)

第1巻では若造ゲド、第2巻では青年ゲド、そしてこの第3巻では初老のゲドという感じで老成していっています。  それに伴い、「才能ある魔法使いの弟子」 → 「竜人(竜と話せる人)」 → 「大賢人」と称号が変わってきています。 

さて、第2巻でゲドは世界に平和をもたらすとされる「エレス・アクベの腕環」を復元しました。  その時、KiKi は

ゲドのようにお気楽に

「見よ!  私は闇で光を見つけたぞ。  光の精を見つけたぞ。」

とか

「この人のおかげで、古き悪は滅び、 (中略) この人のおかげで、壊れたものはひとつになり、この人のおかげで、憎しみのあったところに平和がもたらされるんだ。」

な~んていう風には思えないんですけど・・・・・ ^^;

と書いたわけですが、案の定(?)、アーキペラゴ全域において魔法使いが大切にしてきた均衡が失われ、秩序とモラルが崩壊し始めていました。  そして、どうやらこの第3巻のメインプロットは「世界を平和に統治する優れた王の育成」ということになったようです。

物語によれば過去にアースシー全土の王となったマハリオンという方が、「暗黒の地を生きて通過し、真昼の遠き岸辺に達したものが私の後を継ぐであろう」と言い残したということになっています。  そして、このマハリオン亡き後、これまで800年玉座は空っぽだったとのこと・・・・・・  そして、この第3巻ではゲドを訪ねてきたエンラッドの王子アレンがゲドと共に異変の原因をつきとめ、処置をほどこす旅に同行することになるところから物語は始まります。  これはどうやらグウィン版「行きて帰りし物語」となる気配プンプンです(笑)。


エレス・アクベの腕環が戻ったにもかかわらず、魔法と均衡が失われ、いっこうに平和が訪れないのは、統治者である王が不在であることと、王不在の間隙を突くようにして邪なるものが動き出したことが原因だったということのようです。  そして、その邪なるものは己の欲望のままに禁じられた忌むべき魔法を使い、本人自身が「死を克服した」と錯覚し、又「死は克服できる」という甘言をもって民を惑わしていた・・・・・ということのようです。(実はこの解釈にちょっと自信がない ^^;)

この邪なる者が「クモ」と呼ばれていた魔法使いで、全編にクモとクモの巣の比喩表現がチラチラと出てきます。  そうなって思い出されるのがトールキンの「指輪物語」のシェロブ、ローリングの「ハリー・ポッター」のアラゴグ達。  どうやら英米系の人たちはクモがよっぽど苦手らしい・・・・・(苦笑)  

さて、このクモさん。  忌むべき魔法を使ったことにより生と死の世界を行き来することができる扉を開け、自分自身は生きている者も死者も自由に操る力を持つに至った王だと信じこんでいました。  結局アースシーに暮らす人たちも竜さえもそんなクモさんに太刀打ちできなかったのですから、彼の錯覚・思い違いも致し方ない部分はなきにしもあらずです。  でも、ゲドただ1人がそんなクモが抱え込んでいるのは栄光とはまったく正反対の「虚無」に過ぎないことを暴きます。  

クモは、己の死を否定したが故に、真の名も、自分の生と死も、アイデンティティをも失い、実体をともなわない虚ろな影になりさがってしまっていた・・・・・ということのようです。  そして、ゲドはそんなクモの犯した過ちにケリをつけ、均衡と平和をもたらすために、生と死の間を行き来できる闇の扉を閉めるために、彼の持つ魔法の力の全てを使い果たします。  後に残されたのがゲドとさいはての島まで同行した「暗黒の地を生きて通過し、真昼の遠き岸辺に達したものが王者アレンというのが物語のメイン・プロットらしい・・・・・・(実はこの解釈にもあまり自信がない ^^;)

この物語、全体としてはこんな風(↑)に KiKi は解釈したんだけど、途中で何度もカッコ書きで書いたように実はあんまり自信がありません。  と言うのも、そういう全体の流れよりもとかく細部に引っかかり過ぎて全体像を見失いがちになりそうな読書体験だったんですよね。  そしてその細部でひたすら描かれていたのは「生とは」ということ、そして「死とは」ということ、もっと言えば「いかに生きるべきか」ということに尽きるような気がするんですよ。


死を拒絶することは生を拒絶することでもあるんだよ。
いいかい、アレン。  そなたはいつかは死ぬ。  いつまでも生き続けるなどということはない。  誰だって、何だって、そうだ。  永久に生き続けるものなど、ありはしないのだ。  ただ、わしらだけは幸いなことに、自分たちがいつか必ず死ぬということを知っておる。  これは人間が天から授かったすばらしい贈り物だ。  (中略)  それというのも、わしらが持っているのは、いつかは失わなければならないとわかっているものばかり、喜んで失っていいものばかりだからさ。
生を拒否することによって死を拒否し、永遠に生き続けようだなんて!  だがなアレン、この言伝はわしには聞こえてこない。  わしが聞く意志を持たないからだ。  わしは絶望から発した助言など、受け付けはせん。

自然はいつも自然の法則にのっとってあるものだ。  今度のは、だから、どう見ても均衡を正そうというのではなくて、それを狂わそうという動きのように思われる。  そんなことができる生物は、この地上には一種類しかいない。  (中略)  (人間の)生きたいと思う、その願望に際限がないからだ。  (中略)  ただ生きたいと思うだけではなくて、さらにその上に別の力、たとえば、限りない富とか、絶対の安全とか、不死とか、そういうものを求めるようになったら、その時、人間の願望は欲望に変わるのだ。  そして、もしも知識がその欲望と手を結んだら、その時こそ、邪なるものが立ちあがる。  そうなると、この世の均衡はゆるぎ、破滅へと大きく傾いていくのだよ。

持つに値する力はたったひとつしかない。それは、何かを獲得する力ではなくて、受け入れる力だ


これらは全て、ゲドが旅の途中でアレンに語る言葉なんだけど、これらの言葉こそがグウィンが言いたかったこの物語の肝なんじゃないかなぁ・・・・・と。  で、これらの言葉を噛みしめていると全体の物語が何だったのかがわからなくなる・・・・・・そんな読書体験だったように思うのです。  でも、恐らくそれはアレンも同じで、ゲドが語るこれらを深く胸に刻む時間があってはじめてアースシーの世界に平和をもたらす王になる・・・・・・ということなのではないのかな・・・・と。

読んでいて時々感じたのはグウィンさんはどうやら「東洋思想」にちょっと近しい感覚を持つ人なのではないかしら?ということでした。  このゲドの言葉なんかを読んでいると、どうしてもこの絵のイメージ(↓)が自然と頭に浮かんでくるんですよね~ ^^;  そういう意味ではアメリカ人っぽさが希薄な物語だなぁと思うんですよね。  少なくともアングロサクソン的な哲学はベースになっていない・・・・・。  でもね、同時にそれを大賢人から若造へのありがた~いお説教ご指導という舞台にしないと語れないあたりはいかにも「アメリカ的」だなとも思うんですけどね(苦笑)


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