ゲド戦記 別巻 ゲド戦記外伝 U.K.ル=グウィン

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以前、このエントリーでも書いたように、KiKi が「ゲド戦記」を購入した頃、このシリーズは岩波少年文庫のラインナップには含まれていませんでした。  で、仕方なく今手元にある「ソフトカバー版」を Box Set で揃えたわけですが、その後だいぶ経ってから発刊された岩波少年文庫版とこのソフトカバー版の一番大きな違いは、こちらのソフトカバー版では外伝扱い(事実、外伝ではあるんだけど)で第5巻が「アースシーの風」となっているのに対し、岩波少年文庫版では第5巻がこの「ドラゴンフライ アースシーの五つの物語」と位置付けられ、「アースシーの風」は第6巻扱いになっていることでした。

で、調べてみると実際のところル=グウィン女史が書いたのも岩波少年文庫に収録されている順番だし、Wikipedia を見ると

「ドラゴンフライ」は「アースシーの風」と深いかかわりがあり、先に書かれたこちらを読むと理解が早い。

とあったので、KiKi もそのオススメに従ってまずはこちらを読んでみました。

ゲド戦記 別巻 ゲド戦記外伝
著:U.K.ル=グウィン 訳:清水真砂子  岩波書店

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アースシーを鮮やかに照らしだす五つの物語「カワウソ」「ダークローズとダイヤモンド」「地の骨」「湿原で」「トンボ」と、詳細な解説を収める番外編。  ル=グウィンの構想した世界の全貌が見えてくる一冊。(ソフトカバー版扉より転載)

ゲド戦記 ドラゴンフライ アースシーの五つの物語
著:U.K.ル=グウィン 訳:清水真砂子  岩波少年文庫

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5つの物語(「カワウソ」「ダークローズとダイヤモンド」「地の骨」「湿原で」「トンボ」)と、作者による詳しい解説を収める〈外伝〉。  作者の構想したアースシー世界の全貌が鮮やかに見えてくる、「ゲド戦記」ファン必見の一冊。  (岩波少年文庫HPより転載)

この本に収録されている作品は以下の通り(Wikipedia より転載)です。


「カワウソ」
ロークの学院開設の功労者にして、初代守りの長、メドラ(カワウソ/アジサシ)の一生を通じて、学院の黎明期を描く。

「ダークローズとダイヤモンド」
エシーリ(ダイヤモンド)とローズの恋物語(ローズの方は真の名が明かされない)。

「地の骨」
アイハル(ダンマリ、のちにオジオン)がヘレス(ダルス)に師事した時と、二人が協力してゴントの大地震を鎮めた時の顛末。

「湿原で」
ロークから逃げ出した魔法使いイリオス(オタク)と、彼を匿った未亡人エマー(メグミ)、そしてイリオスを追ってきた大賢人ゲドの物語。

「トンボ」
「アースシーの風」の重要人物オーム・アイリアン(ドラゴンフライ)の幼年期と青春時代、ロークへの旅と呼び出しの長達との対立、竜への覚醒までを描く。

アースシー解説
アースシーの世界観について、文化や歴史、伝説などの、作者による解説。


それぞれに大筋としてはなかなか読みごたえのある物語だったとは思うのですが、正直なところ KiKi にはあまり気に入りませんでした。  今日はその「気に入らない」ことに関して Review を書きたいと思います。  

この「ゲド戦記」のシリーズ。  第3巻までの物語は「魔法使い」な~んていうファンタジーにはお約束の人々が活躍し、同時にその人たちが「賢人」と呼ぶに相応しい知性・謙虚さを持ち、人の欲望に端を発している「ご都合主義的な魔法の使い方」を拒否し、世界の均衡を保つことを大切にしているお話だったと思うんですよね。  そんな中で「生と死」とか「本当の自由」というような命題について、現代社会に生きる我々に与える1つの視座を提示する奥深い物語だったように思うんです。  そして「生死」を扱うことや世界の均衡を扱うことにより、その精神性と極めて近いところにある「信仰」、特に「アニミズム的な宗教」というものにも触れ、それとのギリギリの共存のあり方を描いた物語にもなっていたというのが KiKi の印象でした。

でも第4巻の「帰還」あたりから、そういう大きなテーマを扱っているようでいながらも、どこか「フェミニズム色」が強くなってきて、「その色が強くなってきた」とか「舞台背景として漂っている」程度だったらまだいいんですけど、ことこの外伝に至って、

世界の均衡を歌うアース・シーにおいてもっとも均衡を崩していたのは男性中心主義の魔法使いたちだった。

というようなお話にすり替わってしまったような印象があります。  何て言うか、3巻までの世界観を強引に歪めて自分の社会的主張を声高に叫んでいるような不自然さを感じずにはいられなかった・・・・・そんな感じでしょうか?  

一つ一つの物語の細かい筋立てをちょっと無視して、もう一度ここに収録されている作品を俯瞰してみると、第1作の「カワウソ」では、ローク学院創立の歴史の第一頁として一対の男女の愛が描かれます。  でも、少しずつ少しずつ女性が存在しづらい場所にロークが変化していきます。  その後、「ダイヤモンドとダークローズ」では恵まれた魔法使いの才を持って生まれながらも、女性との接触を禁じられる魔法使いの世界に背を向けて幼馴染との愛と音楽に生きたダイヤモンドの生涯が描かれます。

その次には「湿原で」で女性絡みではないもののロークから逃げ出さざるを得なくなった魔法使いが身を寄せる場所として「伝統的な価値観に縛られた善良な女性 ≒ 未亡人エマー(メグミ)」が描かれます。  しかも物語の中では「社会的には軽視され侮蔑されているけれど実は才能豊かな女呪い師」がチラチラと登場するのに対し、出てくる普通の男どもは誰も彼もがどこかに粗野さ・下卑さみたいなものを漂わせています。

そして極め付けが「トンボ」でここに至って、何等かの力を持って生まれたアイリアン(トンボ)♀を、女人禁制のロークに送り込むことを画策した男、ソウゲは学院に女性を連れ込んだ前科持ち。  自分が何者かを探しているトンボは男装して学院に入り込もうとするも、それを一瞬で見破られ、それでも「守りの長」は受け入れてくれた・・・・・。  ところが反対運動が起きて、学院の長や院生を二分する「社会問題」になって、どうたらこうたら・・・・・・。  ここまでくると、「え?  これ、いったい何のお話ですか??」てな気分にさせられます。

このゲド戦記。  メインの登場人物は有色人種だし、白人はどちらかというと乱暴で侵略が生業みたいなカルカド人の設定だし、そういう意味でル=グウィンさんは「マイノリティ」とか「社会的弱者」に共感を覚えるタイプの人なんだろうなぁ・・・・とは、最初から感じていました。  まして彼女のお父さんアルフレッド・L・クローバーは世界的な文化人類学者で、お母さんは彼の研究をベースにあの「イシ 2つの世界に生きたインディアンの物語」を描いた作家です。  白人優位主義とかアメリカお得意の「力が全て」みたいな姿勢にはどこか懐疑的なものを持たずにはいられない人であることは理解できるような気がします。

でもねぇ・・・・・そこから発展していった行き先がフェミニズムですか??  しかも、どことなくその主張が表層的に感じられちゃうのは KiKi の気のせいでしょうか??  もっと言えば、これってこのシリーズの中で語ることなんでしょうか??  そういう意味では??ばかりが大きく残る読書だったというのが正直な感想でした。    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2013年11月12日 11:50に書いたブログ記事です。

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