星からおちた小さな人/天狗童子 佐藤さとる

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おでかけスケジュールがある中で児童書を読むと、Review が追いつきません ^^;  ま、てなわけで本来なら一つ一つ別建てエントリーでお話したいところ・・・・ではあるのですが、今回はまとめてエントリーです。  読了したのは佐藤さとるさんの作品2点です。

星からおちた小さな人
著:佐藤さとる 絵:村上勉 講談社青い鳥文庫

51KybKQZuyL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

「矢じるしの先っぽの国、コロボックル小国」は、人間の世界からいろいろなことを学んで、めざましくかわりはじめていた。  学校をつくり、新聞を発行し、科学も学んだ。  ただ、なるべく人間とかかわらないよう、ひっそりと暮らしていた。  だが、新型飛行機の試験飛行の日、コロボックルの1人がついに人間にみつかってしまう。  コロボックルのことなど、何も知らない少年に・・・・。  (単行本扉より転載)

本朝奇談 天狗童子
著:佐藤さとる 絵:村上豊 あかね書房

51Y5854F2PL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

「ややややや。」 そんな声をあげたのも、無理はない。  月の光の中で起きあがったのは、たしかにカラスだったが、ただのカラスではなかった。  飛んでいる時はわからなかったが、今見るとカラスの頭には、山伏のつけるような小さな兜巾(ときん)がある。  背中に立派な翼があるのに、肩の両脇からかわいい手が出ている。  そしてほとんど全身が、黒い羽毛に包まれているから、こんな夜には、まずカラスと見分けがつかない。  もちろん尾羽もある。  (単行本帯より転載)

相模大山のカラス天狗・九郎丸が、戦国時代の夜空を翔る壮大なファンタジー。  (Amazon 内容紹介より転載)


どちらの作品も楽しい物語でした。  今日は2冊まとめての Review なので一つ一つの作品の Review は短めです。

まずは「コロボックル物語シリーズ」の第3作。  「星からおちた小さな人」です。  相変わらず小さな人間じみたコロボックルは人間社会の発展をなぞるかのように文明的発展(?)を遂げ続けています。  でもさすがに著者の佐藤さんもコロボックルという存在が人間模倣生き物ではいけないと感じられていらしたらしく(?)ところどころに、人間のやることをひたすら真似ているわけではないというような趣旨の記述がみられます。  

そんな作者の迷いのようなものに接してみて、KiKi もちょっと考えさせられました。  よくよく考えてみればこの物語が書かれた時代は、それまでとは見違えるような変化が生活のあらゆる面で目まぐるしかった時代だったわけです。  しかもそれまでは「夢物語」と思われていた様なことが日常生活レベルで実現できるようになってきた進歩の時代。  さらには進歩≒良いことという価値観が大きかった時代でもあるわけで、KiKi が前作の Review で書いた

「どうせなら擬人化した小人ではなくどこか人間とは価値観とかものの考え方に大きな差がある生物であってくれた方が異文化交流の雰囲気が出てきてハチャメチャかもしれないけれどもっともっと楽しい物語になったんじゃないかと思わないでもありません。」

というような感想は後出しじゃんけんみたいな意見なのかもしれないなぁ・・・・と考えさせられました。  実際、KiKi もある年齢までは都会でバリバリ働いて、必要なものは稼いだ金で買えばいいという価値観で生きてきたわけで、ここ何年かで初めてそんな生活スタイルに「待った」をかけるようになったわけです。  そういう意味ではあの都会生活時代であればコロボックル社会の発展する様を「よし、よし」と上から目線で納得していたかもしれないなぁ・・・・と。


さて、そんなプチ人間化しつつあるコロボックルたちが飛行機まで作っちゃって(と言ってもそのスタイルは人間社会の飛行機黎明時代の人力・脚漕ぎ飛行機そのままだけど 苦笑)テスト飛行と洒落こんでいる時に大事件発生。  ちょっとしたトラブルで墜落しちゃったテスト・パイロットがコロボックルの味方である「せいたかさん」でもなければ「ママ先生」でもない、別の人間の子供に捕まってしまいます。

この子が実にいいんですよね~。  KiKi の子供時代にはこういうクラスメイトが少数ではあってもいたっけなぁと思わせるやんちゃぶりです。  捕まっちゃったコロボックルの方もこの子のことがだんだん好きになっていって、仲間のコロボックルたちに救出された後には「たまには又遊びに行くよ。」と約束するぐらいになっていきます。  こうしてコロボックル達の存在は少しずつ人間に知られていくようになるんですねぇ。

因みにその「捕獲されたコロボックル救出作戦」の中で意外な働きを見せるのが「せいたかさん」と「ママ先生」の間に生まれた愛娘のおチャメさん。  この子は両親からもコロボックルたちからもちゃんとコロボックルのことを教えられたわけではないのに、彼らの存在を日常的に感じ、尚且つそれを「秘密にすべきこと」と心に決めている繊細な神経の持ち主です。  このおチャメさんのアップの挿し絵があるんだけど、その挿し絵がこれまた素晴らしい!  いかにも日本人の小さな女の子。  しかも邪気のない顔をしていて、挿し絵ながらもギュッと抱きしめてあげたくなっちゃうような可愛らしさです。

さて、こうして少しずつ人間の知り合いが増えていくコロボックル達の今後はどうなるのかしら?という疑問を残し、第3作は幕となりました。  次に図書館に行ったらこの続編の「ふしぎな目をした男の子」と「小さな国のつづきの話」を借り出してこの物語の完結をちゃんと我が目で確認したいと思います。


2冊目は「天狗童子」。  こちらは佐藤さとるさんの待望の新作なのだそうです。  とは言っても手元にある初版本の発行は2006年ということなのでもう10年近く前の作品です。  こちらはコロボックルのような小人ではなく半分天狗で半分人間の九郎丸という少年の物語です。

九郎丸は元はと言えば人間のしかも由緒正しい血筋の嫡男だったんだけど、乱世の中、とにかく生き延びることだけを目的に人間社会的に言えば捨てられたところを天狗に拾われ、カラス天狗として生き延びてきた(但し本人は生まれながらのカラス天狗だと信じてきた)という少年です。

この九郎丸が人間の与平爺様の元に笛の修行のために預けられ、情が移った与平爺様の手によりカラス天狗に戻るための必須アイテムを燃やされて、結果半天狗になっちゃうという物語。  学校で戦国時代の歴史を学んでもほとんどちょっとしか名前が出て来ない関東地方の戦物語を背景にしているので、KiKi なんかは歴史的バックグラウンドはわかったような、わからなかったような・・・・・。

伊勢宗瑞とか三浦道寸な~んていう名前が出てきてもチンプンカンプン。  でも後で調べてみたら伊勢宋瑞って北条早雲のことだったんですねぇ・・・・。  しかも最後には「南総里見八犬伝」で有名な里見家の名前も出てきます。  因みに九郎丸は関東の名門、三浦氏の出身らしい・・・・。  ちょっと関東の歴史を詳らかにしたい欲求がくすぐられます。    

この物語はそんなバックグラウンドもさることながら、登場するキャラクターが実に魅力的です。  どこかとぼけた味のある飄々とした雰囲気の与平爺様が特に素晴らしい!!  九郎丸の仲間のカラス天狗たちもそれぞれ個性があるし、九郎丸と父親の再会をとりもつために動く人なのか天狗なのかよくわからない人たちのキャラクターもそれぞれ魅力的です。  そしてやっぱり楽しいのは天狗たちが使う妖術(?)の記述です。  特に KiKi のお気に入りはかなりの長距離を移動する際にスピードアップするための「縮地法」というヤツ。  大地を縮めて時を稼ぐというのは何だか楽しそうです。  もっとも KiKi なんかは一辺で酔っちゃいそうだけど・・・・・。

でね、そんな技を駆使する天狗様に与平爺様が投げかける質問が溜息が出ちゃうほど素敵だと思うんですよね。  曰く

「天狗様はこんなすごい術を知っていなさるのに、何で人間をのさばらせておくんだべ。  侍が何千人集まろうと、天狗様にかかっちゃ、手も足も出なかんべえによ。  戦ばっかりして、みんなが難儀しているっちゅうに・・・・。  ほんとになんとかしてもらいてえもんだのう。」

これに対する天狗様の答えは・・・・と言えば、

「因縁のない人を攻めるために術を使うと、その術がいたむ。  一人の天狗だけではないぞ。  全ての天狗の、その術がいたむ。  それをとりもどすのは容易でない。  それで厳しく戒められているのだ。  ただし護りに使うのはかまわない。」

のだそうです。  わかったようなわからないような話だけど、何だか自然の自浄作用に似ているなぁと感じました。

いずれにしろ、児童文学と侮ることなかれ、なかなか大人にも印象深い面白い読み物でした。  読後感も実に爽やかです。

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