J.R.R.トールキン 或る伝記 H.カーペンター

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図書館から借り出してきた本のうち、ランサム関連本はほぼ挫折本となることが確定し、我ながら情けないなぁと自己嫌悪に陥りかけていた KiKi。  そんな KiKi を救ってくれたこの本を楽しく読了することができました。

J.R.R.トールキン 或る伝記
著:H.カーペンター 訳:菅原啓州  評論社

511GM65ZT8L._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

トールキン自身の手紙、日記、その他の文献、そして家族や友人の回想をもとに編まれた唯一「公認」の伝記。  (Amazon 内容紹介より転載)

いや~、ある程度は想像していたことではあったんだけど、やっぱりトールキン先生は変な人でした。  あ、でもここで言う「変」というのは決して悪い意味ではなく、「人並み外れた」とか「一般人とは多くの面でかけ離れている」というほどの意味なんですけどね。

生い立ちから始まり、交友関係、奥様との出会いから結婚、時代背景、学問上の功績、作品の出版の経緯ととにかく詳しく描かれているんですけど、その折々で思わず苦笑してしまうようなエピソードが満載です。  あの素晴らしい作品群はこういうどこか偏屈で、どこか極めつけのマイペースさを持った人であればこそモノにできたものなんだなぁ・・・・と妙に納得してしまいました。

KiKi にとって何よりも驚きだったのは、あの一連の作品の中で使われていたクゥエンヤ語やシンダール語と言った私製言語を言語学者となった後で作り始めたのかと思いきや、それよりもはるか昔、まだ少年期と言ってもいいような時代から作り始め、それを所謂ライフワークの如く老年に至るまで創成・ブラッシュアップし続けたという事実です。

しかもこの伝記の著者によれば、その作業はトールキン先生にしてみると「作り出している」というよりは「見つけ出す」作業だと本気で思っていたらしいという点がかなりの驚きでした。  「見つけ出す」という言葉にある心理の中には「発掘する」というようなニュアンス、つまり過去には絶対に存在していたものを探り出す、存在そのものは疑いのないものという確信があるように感じるんですよね。

    

我が日本国でも例えば「古事記」などを読んでみると、「これが同じ日本語かいな?」と思えるような音の使い方・文字の使い方に出会うことがあるわけだけど、それを文化圏という観点や自然音と絡めながら、この地に生まれ、暮らしていた人たちが古代に使った言語はこうであったに違いないと推論していく作業にそれこそ人生の大半の時間を使うな~んていうのは、KiKi にしてみれば正気の沙汰とは思えません(苦笑)  残されていたものを鑑賞し、愛でるというだけならいざ知らず・・・・・。

トールキン先生は「ノルマン・コンクエスト」を単なる歴史的出来事という以上に古代の時代にイングランドの地に息づいていたはずの言語・文化・生活の尽くに対して及ぼしたであろう影響に関して、どちらかといえば「憂い」に近い感情を持っておられたようです。  その憂いの感情から始まり「本来伝承されたであろう古来のものはどういうものであったか?」に執着する姿はいかにも学者的ではあるけれど、見方を変えれば何か滑稽さ、思い込みの激しさ、執念深さみたいなものも同時に感じずにはいられません。

でも、そんな彼の確信が、探求が、あの素晴らしい物語・現代神話を生んだことには感嘆と驚異と大きな恩恵を感じ、「ありがとう!」と声を大にして言いたいと感じているのも又事実なんですけどね。(笑)


それにしても・・・・・


トールキン先生、やっぱりどこか普通の人と比較してズッコケたところを多々お持ちだったようで・・・・・。

資料探しやら改訂作業の合間についつい脇道へそれてしまい、どちらかと言えば些細なところにこだわる余り、いつまでたっても完成という日の目を見ない作品の数々。  特にそれが顕著なのはあの大作「指輪物語」を出版するに際し、「シルマリルの物語」も出版するという確約を出版元に求め続け、ようやくその約束をとりつけたにも関わらず、結局彼の生前には完成させることができなかったとは・・・・・。

まあ、今とは出版事情も異なるのだろうし、トールキン先生が「シルマリルの物語」に費やした年月の数だけを数えれば莫大なものだから、「ライフワークを世に出したい」という気持ちはわからないじゃありません。  そして恐らく彼の中では「物語の Vision」 みたいなものはかなり明確になっていた(あとはそれを言語化して整理してタイプを打つだけだった?)のだろうから、出版に拘るところまではいいんですよ。  でも、その後のトールキン先生の生活描写を読む限りでは「さっさと完成させろよ!」と言いたくなるほどの、牛歩の歩み・・・・・・ ^^;

だいたい肝心の作品の執筆よりもファンレターの返事書きに没頭してしまうなんて、「ファン・サービスの鑑」とでもいうようなエピソードかもしれないけれど、KiKi の立場からしてみればそれよりは未完の作品を仕上げることに精力や時間を費やしてほしかったと思わずにはいられません。  まあ、でもそのおかげで著作権という権利の所在が曖昧だった当時のアメリカで発刊された非正規版「指輪物語」(権利の所在が曖昧だったため厳密な意味での海賊版にはあたらないらしい)の普及を妨げてくれたのはファンの行動だったという何とも素敵なエピソードがついてくるわけですが・・・・・。

今、この時代の日本に生きる私たちは彼の息子、クリストファー・トールキン氏の努力のおかげで「シルマリルの物語」を読むことができます。  因みに KiKi はこの物語に関しては拾い読みはかなりしているけれど通し読みという観点からは何度も挫折しています。  今回、この伝記を楽しく読了した今、久々に「シルマリルの物語、完全読破」に挑戦してみようかと考え中。  なんせ、1人の人間がほぼその一生をかけて探求した創作神話の物語集なのですから。  


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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2014年6月21日 12:31に書いたブログ記事です。

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