ふしぎな目をした男の子 佐藤さとる

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次々と読了してきた「ランサム・サーガ」はちょっとお休みして、これからしばらくは先日図書館から借り出してきた本を読み進める予定です。  その第一弾は先日第1作~第3作まで Review を書いた「コロボックル物語 第4作」です。

ふしぎな目をした男の子
著:佐藤さとる 絵:村上勉  講談社青い鳥文庫

147035-1.pngのサムネール画像  (Amazon)

コロボックルのどんなすばやい動きも見えてしまう、ふしぎな目をした男の子タケルと、へそまがりのコロボックルの老学者ツムジのじいさまが友だちになった。  タケルが小さいころ遊んだ池が、すっかりあれてしまった。  この池をすくおうとする少年たちと、かげでそれを助けるコロボックルたちとの楽しい物語。  (講談社青い鳥文庫HPの内容紹介より転載)

第3作「星からおちた小さな人」の Review で KiKi は

次に図書館に行ったらこの続編の「ふしぎな目をした男の子」と「小さな国のつづきの話」を借り出してこの物語の完結をちゃんと我が目で確認したいと思います。

と書いたんだけど、残念ながら我が吾妻郡図書館にはこの「ふしぎな目をした男の子」は収蔵されているけれど「小さな国のつづきの話」はないらしい・・・・・。  ま、てなわけでいずれどこかの古本屋さんか Net Off で見つけない限り、この公約(?)は果たせそうにありません。  このシリーズは結構楽しい物語だと思うし、佐藤さとるさんの暖かみのある文体にそこそこ魅力は感じるものの、現段階では積極的に「これは是非蔵書にしよう!」という意思までは持ち切れずにいる KiKi です。

さて、そんな「コロボックル物語」の中で KiKi にとって一番読み応えがあったのはこの第4作かもしれません。  もっともそれは KiKi 自身が既に齢50を超えているからこそ感じる感慨であって、これが子供時代に読んでいたのだったら、ひょっとしたら一番つまらなく感じてしまった作品だったのかもしれません。    

そう思うのは、今回のメインキャラがツムジィというコロボックルの老人だから・・・・・ということと無関係ではないような気がします。  まぁ、KiKi の子供時代は今と比べるともっと地元のお年寄り(要するに身内ではないお年寄り)と子供の距離が近かった時代なので、見知らぬおじいさんと子供が友達になるという設定にさほど違和感はなかったとは思うのですが、それでもやっぱりある種のテンポ感、ノリみたいなものが、やっぱり前3作と比較するとどこか枯れています。  しかもこのツムジィ、職業が古いものを調べてきちんと記録する学者さんときています。  そういう意味では「発展」がキーワードだったこれまでの作品とは異なり、「振り返り」がキーワードになっている印象があります。

さて、そんな筋金入りのつむじまがりの学者ツムジィは物語冒頭ではコロボックルと人間がトモダチになることに猛反対の立場をとっています。  ところが、さすがつむじまがりのじぃさま、やることが面白い!!  怒りに任せてコロボックルたちの王国がある山から飛び出し、こともあろうに人間の住む街に行くというのですから、その偏屈ぶりには苦笑するしかありません。  でも、つらつらと思い返してみると、KiKi の子供時代に知り合った偏屈なおじぃさんも「冷静に考えてみると言っていることとやっていることが矛盾している」人が数多くいたような気がしないでもない・・・・・・・。

こうして、人間嫌いなはずのツムジィは何となく人間のそばで暮らすようになり、そこで動体視力の著しく優れた2歳児と出会い、俄然その子供に興味がわいてきて、物語冒頭ではあんなに反対していた「トモダチ」に自分がなってしまうのです。  しかもその子供、タケルの成長を暖かいまなざしで見守っているうちに、まるで守護霊のような、心の友とでも呼びたいようなそんな存在になっていってしまうのですから、世の中何が起こるかわかりません。

物語ではそんな「トモダチ関係」がツムジィの老いと共に変化していき、最後は次の世代(ツムちゃん)に引き継がれていきます。  そんな物語の流れがとても素晴らしいと感じました。  ただ1点だけ、このシリーズでずっと登場してきたせいたかさん一家はコロボックルたちにとって「味方」であるのに対し、タケルは「トモダチ」という立場なのだそうですが、KiKi には「味方」と「トモダチ」の違いがよくわからなくなってしまったのですが・・・・・。  

作中ではコロボックルが王国を作るほどの集団であり、矢じるしの先っぽの国に大勢が暮らしているというコロボックル最大の秘密を知らされているのが「味方」でそれを知らされず、ただひとりのコロボックルとだけ親しくなる人間が「トモダチ」だという定義が書かれているのですが、タケルはせいたかさんちのおチャメさんと同じようにコロボックルの秘密を感覚的に察知しているようなところがあるし、しかもコロボックル2世代と「トモダチ」になるわけで、そういう意味では「ただひとりのコロボックルとだけ親しい」わけではありません。  それでも最後まで「味方」には昇格できないのはなぜなんだろう??  タケルとせいたかさん一族とはどこが違うんだろう??

ま、それはさておき、この第4作で KiKi を唸らせた最大のポイントは、物語の終盤でコロボックルと人間がかつてお互いにそうとは知らないまま共に開き、大切に守ってきた水場が汚染されてしまい、その水場を守るために人間界ではタケルとタケルの人間のトモダチ、ヒロシが頑張る一方、コロボックルたちもツムジィを筆頭にツムジィの後を継いでタケルとトモダチになったツムちゃんたちが頑張るというお話の奥深さです。  

このヒロシ君。  実に素晴らしい環境観察者で、かつては綺麗だった水場から自分の部屋の水槽に環境一式を移植して、それを前にタケルに「自然の循環」を熱弁するんですが、その内容たるや、小難しい学者先生のご弁舌よりもはるかにわかりやすく、本当に素晴らしいと感じました。  と、同時に、これまでこの「コロボックル物語シリーズ」で描かれてきた「人間とコロボックルの共生」というテーマは、つまるところ「人間と自然の共生」というテーマだったのだなぁと深く感じ入りました。

ちょっと長いけれど、この時のヒロシ君の熱弁を転載しておきましょう。

「なあ、タケルちゃん、このガラスの中の水はね、ちゃんと生きているんだ。  みじんこたちは、水の中に落ちた細かいごみや、藻の切れっぱしなんかを食べて増えていく。  そうすると、そのみじんこを食べて、くちぼそ(魚)が生きる。  みじんこの死んだのやくちぼその糞は、水草や藻のこやしになる。  だから水草なんかもずっと生きていける。  水草や藻は植物だ。  だから、日にあたると水の中の炭酸ガスを吸って、きれいな酸素を吐きだす。  その酸素を、みじんこやくちぼそが吸って炭酸ガスを吐きだす。  な、この水の中で命が回っているんだ。」

「ちょうどいい数だけみじんこが増えて、ちょうどいい数だけくちぼそが育って、ちょうどいいだけの水草や藻があって、うまくつりあいが取れているんだよ。  だからこうして、いつまでたっても、水はきれいに澄んでいる。  海や湖や川やきれいな池なんかは、このガラスの中の水と同じで、命がうまく回っているんだ。  それがほんとなんだ。  ところが、人間が薬をまいたり、ごみをぶちこんだり、やたらに魚を取り過ぎたりすると、つりあいがぶっ壊れる。  そうなると、もう命はうまく回らなくなるんだ。  どこかで止まってしまう。  水が死ぬのさ。  水が死ねば命も死ななくちゃならない。」

この水槽(熱帯魚用の立派な水槽)はヒロシ君がそれまで何年もかかってためたお小遣いを全部はたいて、遠くの大きな町のデパートまでわざわざ出かけて買ってきたのだそうです。  そんな彼の純粋さまで描かれているので、妙な説教臭さを感じさせません。  

自然界の不思議に「神」を見てきた日本人。  そんな「神族」の1人である「スクナヒコサマ」はコロボックルの御先祖様なのだそうです。  第1作から出てきたこのお話が見事にここで帰結したように感じます。  

最後に、ヒロシのお爺さんがヒロシとタケルを連れて、水場の水の神様にお供え物をあげに行くシーンが描かれます。  コロボックルにも世代を超えて受け継ぐべきものがあり、人間にも世代を超えて受け継ぐべきものがある。  そして人間がそれを忘れなかった時、いろいろなことのつりあいが保たれ、水場の環境は再生し物語は幕となりました。  良書だと思います。

   

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2014年6月14日 10:36に書いたブログ記事です。

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