天山の巫女ソニン 4. 夢の白鷺 菅野雪虫

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この本の前に「ハウルの動く城 2. アブダラと空飛ぶ絨毯」を読了しているので、本来ならそちらの Review を先に書くべきところなのですが、せっかく昨日図書館から借り出してきたこのシリーズ。  まずはこちらをやっつけてから「ハウル」の Review を手掛けたいと思っています。  もっともその頃には「ハウル」の感想を覚えていられるかどうかチト不安・・・・ ^^;

天山の巫女ソニン 4. 夢の白鷺
著:菅野雪虫 講談社

51oJ9sW3F1L._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

「江南」を大嵐が襲い、人々の暮らしは大きな打撃を受けた。  「沙維」のイウォル王子は災害の援助のために、「巨山」のイェラ王女は密かな企みを胸に、相次いで「江南」に向かう。  「江南」のクワン王子を交えた三人は初めて一堂に会し、ある駆け引きをする。  一方、ソニンはクワン王子の忠実な家臣セオの存在に、なぜか言いようのない胸騒ぎを覚えていた...。  (単行本扉より転載)

三国の次代を担う(だろう)為政者が顔を揃えたことにより、政治的駆け引きの話が物語の中心にどっかと腰を落ち着けた印象の物語でした。  読んでいてこれが児童書であることを忘れさせられそうになること暫し・・・・。  でも為政者の思惑・外交というものの複雑さを難しすぎない言葉で語っているあたり、やはり凄い物語だと感じます。  例えて言うなら「池上彰解説風ファンタジー」とでも言いましょうか・・・・(笑)

今回の物語の中で語られる

「食料を握られるという事は、命を握られることになる。」 

というテーゼはTPP問題に直面している現代とも直結し、そこに著者の社会的視座の片鱗を見たように思いました。  特にそれを感じたのは表紙の絵にもあり、物語の中でも一幅の絵のような描写で描かれる棚田の美しい風景です。  人物名のつけ方、物語の舞台となる三国の関係から朝鮮半島を連想させるこの物語。  どこの国(エリア)を舞台にしているにしろ、これは決して狩猟系民族や騎馬民族のものではありえず、農耕系民族の物語だなぁと感じさせられます。  そうであるだけに、私たち日本人にはどこか懐かしさを覚えさせる物語になっているうえに、ここで語られる多くの社会問題にどこか現代日本社会に重なるものを感じるのは KiKi だけではないのではないかしら。

第一巻の「黄金の燕」はいかにもファンタジーというスタートの物語群だったけど、途中からこの物語はいわば普遍的に人間社会に発生し続けている多くの社会問題を扱う物語に変貌しているように感じます。


それにしても巨山のイェラ王女は凄い人です。  あの年齢で必要とあれば「美しく」も「たおやか」にも「優雅」にも「温かみがあるよう」にも振る舞え、同時に為政者としての厳しさ・狡猾さも持ち合わせられるように自己改造ができるなんていうのは、半端な覚悟でできることではありません。  ここに第三話で彼女がひとりごちたあの覚悟の結果が結実しています。

そんな計算高さみたいなものを発揮しつつも、相変わらず世の中の変化や為政者の気まぐれにより滅びゆくしかないものをしっかりと見つめ、心に残す姿には感動を覚えます。  イェラを見ていると

「知らなかった、気がつかなかった。」

という言い訳が実に偽善的であることに否応なく気がつかされるし、

「気がつかないということは無関心ということ。  その罪は重い。」

というのは真実だなぁと思わずにはいられません。  

そんなイェラと比較すると相変わらずマイペースというか、何と言うか・・・の我らがヒロイン・ソニンちゃんなわけだけど、結局彼女の何気ない一言やちょっとした行動(そこには計算なんていう洒落た物はなく、実に自然に、本能的に何かを言ったり行動したりしているだけなんだけど)が三人の為政者の選択に影響を与えているのが不思議でもあり、もっともでもあり・・・・・。

よくよく考えてみると「巫女」というのは必ずしも為政者その人ではなく(卑弥呼はどうやら巫女兼為政者だったみたいだけど)、為政者の決断に何らかの助言を与える立場だったことも多かったことを思えば、天山を追い出されはしたけれど、ソニンのやっていることは本人にその自覚がないだけで、ついでに言えば巫女という呼び名につきもののある種の儀礼的 & 呪術的デモンストレーションがないだけ(唯一彼女に残っていた儀礼的 & 呪術的デモンストレーションだった「夢見の力」もどうやらこの第4巻で失ってしまったみたいだし・・・・。)で、巫女そのもの・・・・・と言えるような気がします。 

KiKi はどうも不思議だと思っていたんだけど、ソニンは「落ちこぼれて天山から追い出された巫女」だったにも関わらず、このシリーズのタイトルはず~っと「天山の巫女ソニン」なんですよね。  「天山の巫女」は12人でなければならない、自分である程度コントロールできない不安定な「夢見の力」では専門性とは呼べず、天山の巫女であり続けることはできない・・・・という物語の設定に、どこか思考停止というか形式主義的なものを感じます。  そしてソニンは?と言えば、愚直なまでに自分で考え行動する人物なわけで、そこに思考停止に陥った「天山の掟」とでも呼ぶべきものを打破する何かがあったように思えてなりません。   

さて、残すところあと1冊。  ここまでの物語の進行からするとどう見ても平和な大団円・・・・というのとはちょっと異なる道筋を辿りそうな予感がプンプンだけど、楽しみながらしっかりと物語の行く末を確認したいと思います。    

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2014年7月30日 11:47に書いたブログ記事です。

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