仔犬のローヴァーの冒険 J.R.R.トールキン

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先週の日曜日のロングドライブとその後の老人ホーム訪問ですっかり体調を崩し、この1週間はネットにアクセスする元気もありませんでした。  KiKi にとってほぼ持病となっている強い吐き気を伴う眩暈にも襲われ、活字を読む元気もありませんでした。  まだまだ本調子とまではいかないけれど、今日はだいぶ気分がいいので、ここまでずっと放置状態だった読了本を Review しておきたいと思います。

仔犬のローヴァーの冒険
著:J.R.R.トールキン 訳:山本史郎  原書房

51Y4BM3D5CL._SL500_AA300_.jpg  (Amazon)

4歳のマイケルが海岸で、お気に入りのおもちゃをなくしてしまった。  それは鉛でできた犬のおもちゃで、マイケルは海岸で遊ぶ時でさえ、手放したがらないほど気に入っていたものだった。  マイケルをなぐさめ、気を紛らわすため、父親のトールキンは即興で物語を考えた。  それはローヴァーという本物の犬が、魔法によっておもちゃの犬に変えられ、この悪さをした魔法使いを探し求めながら、様々の奇想天外な冒険をした後に、ふたたび本物の犬にもどるという物語だった。  恐ろしい竜、賢い老鯨、海の王者、月の男などが登場するこの魅力的な物語は、トールキン一家のとびきりのお気に入りとなった・・・・。

執筆されてから70年、作者トールキン自身による挿絵とともに、このファンタジー作品がついに発表された。  冗談や言葉遊びがいっぱいで、スリルやユーモアにあふれるこの物語には、無数にいるトールキンファンだけでなく、面白い物語が好きという人なら、きっと満足するに違いない。  (単行本扉より転載)

この物語が書かれたきっかけが、お気に入りのおもちゃをなくしてしまった自分の息子をなぐさめるため・・・・という極めて私的で尚且つ愛情にあふれたものであることを反映し、冒険ものとはいうものの、ハラハラドキドキというよりホンワカホッコリという暖かい空気感にあふれた物語だったと思います。  

モチーフとなっているエピソードの1つ1つは後の「ホビットの冒険」や「指輪物語」に通じるところもあるのですが、どちらかというと「北欧神話」をメインとする西洋神話群や、イギリスの典型的な言葉遊びの「マザー・グース」をかなり意識した(これは当初の対象読者が自分の子供達だった故)ものになっていると感じました。  もっとも肝心の言葉遊びの方はそこかしこに訳者の山本さんの工夫の跡が見える・・・・というだけで、英語ではどうなっていたのかは今の KiKi には知る術もないのですが・・・・。

物語全体もなかなか楽しいのですが、もう1つ魅力的なのはやはりトールキン先生直筆の挿し絵の数々でしょう。  「ローヴァーがおもちゃとなって冒険にのりだした家」という絵はどこか「ホビット村」の絵を彷彿とさせるし、「白竜がロヴァランダムと月の犬を追跡する」という絵はどこか「はなれ山」の絵を彷彿とさせます。  トールキン先生は物語を紡ぐ際に、常にかなりはっきりと、しかも細かい部分までヴィジュアル・イメージができあがっていたことがこれらの絵を見るとよくわかります。  と同時に、トールキン先生が世の中で大切だと考えていたものがどういうものだったのかも、明確に伝わってくると感じます。

物語の描写の中で特に KiKi のお気に入りだったのは満月が海の上に輝きあたかも月に至る細長い道を描いている部分で、その上を飛び続けることにより月に至るとは何ともまあロマンチック!!  そんな「月への旅」を想像するだけで楽しくなってしまいます。

せっかく次男のマイケル君のために作ったお話なのに、肝心のマイケル君は「おもちゃがどうしてなくなってしまったのか?」を説明する冒頭のエピソードだけで満足してしまい、それに続く様々な冒険物語にはさほど興味を示してくれなかったのだとか・・・・。  それにも関わらず、この物語が今ある形で残されるに至ったのは、トールキン先生ご自身がこの物語の創作を楽しみ始めたのに加え、長男のジョン君という続きの物語に興味を持ってくれる聞き手がいたからだったらしい。  

それを反映してか、ローヴァーが冒険の旅に出るあたりから物語の成熟度というか、描写の細やかさ、さらには「どこかで聞いたことがあるような気がするお話」をトールキン流にアレンジした物語進行等々、練られた感が増していきます。  そういう意味では彼らの2人の息子の存在あってのこの物語だし、この物語があってこその「ホビットの冒険」という感じがします。


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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2014年7月 5日 10:35に書いたブログ記事です。

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