天山の巫女ソニン 江南外伝 海竜の子 菅野雪虫

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お天気にはあまり恵まれず、日本各地に災害をもたらしたお盆休みも昨日で終了しました。  KiKi のお盆休み(って今では365日お休み・・・のようなお休みではないような ^^;)も昨日の小さな壁掛け持参の老人ホーム訪問でようやく一段落。  今日からは通常の日々が戻ってきました。  ま、てなわけで読了以来、放置しっぱなしだったこちらの Review を書いておきたいと思います。

天山の巫女ソニン 江南外伝 海竜の子
著:菅野雪虫 講談社

book_Fantasy_Sugano.jpeg (Amazon)

江南の美しく豊かな湾を統治する「海竜商会」。  その有力者サヴァンを伯父にもち、何不自由なく幸せな日々を送っていた少年・クワン。  ところがクワンの落とした首飾りがきっかけとなって、陰謀に巻きこまれていく。  多くの人の心を引きつける江南の第二王子クワンの絶望と波乱に満ちた再生の物語。  (単行本扉より転載)

本編でも一種独特の魅力を放っていた隣国江南の第二王子クワン。  「第二王子」というポジションの割には決して幸せそうではなかった王子の幼少期から本編に至るまでの日々を描いた外伝でした。  クワンの右腕ともいうべきセオとの出会い、そして彼がクワンに献身的に仕えるに至るまでのお話はなかなかに読ませるものがあったと思います。  同じ故郷で暮らしながらも、その故郷に対する想いの乖離による2人の衝突の場面が描かれているのが、物語に一層の深みを与えていると感じました。

同時に、本編ではソニンを引き抜くためにセオが語った、クワンの妹、リアンに起こった災難はどうやら作り話ではなく本当のことだったことがこの外伝で判明。  本編では「作り話も大概にしろ!」のクワンの一言でうやむやになってしまった感があったけれど(でも、その話が本当であればこそのクワンのソニンに対する毒薬製造命令という点で妙に説得力はあった)、やっぱりというか、案の定というか、本当のお話だったのですね。

それにしても、江南の王様はしょ~もない!!   国内の摩擦を避けようとするあまりに、対抗できる彼の力が「鈍感力」とでも呼ぶしかないような対応で、結果、多くのことを動かしているのが自分の利益を害するものに対しての感性だけは鋭い王妃のちょっとした一言(命令とは呼べないどちらかというと独り言に近い呟き)と、それを耳にして勝手に動く重臣たちの思惑ばかり・・・・・とは。  もっとも、そうであればこその「三国中の最弱国」とも言えるのかもしれません。

それにしても本編ではどちらかというと「謎の集団」的な描かれ方をしていた「海竜商会」だけど、実は江南国ではかなり真っ当な商社 兼 水産加工会社だったんですねぇ。  たまたま根は恐妻家の江南王がクワンの母(海竜商会の大ボスの妹)にちょっかいを出して子供まで作っちゃったばかりに、この組織のみならず彼らの本拠地だった地方そのものがとんでもない災難に見舞われることにもなっちゃったわけだけど、本来なら国を富ませる最先鋒だったはずなのに・・・・・と思うと、ここでも江南王の無責任さというか無能さが強調されているような気がします。 

これがもうちょっと覇気のある王様だったら、その国を富ませる集団との結びつきをもっと有効に使う手だても考えられただろうに・・・・・と思わずにはいられません。  もっとも、王様が海竜商会に近づいたのはそもそもその類の思惑があったからなのかもしれませんけどね。  で、結局、正妻である王妃とその取り巻き連中を御すことができなかったが故の悲劇なのでしょう、きっと。

そういう意味ではやっぱり諸悪の根源は王妃とその一族・・・・ということにもなるんでしょうけど、その身勝手さ、考えの浅はかさでしょ~もない王妃様なんだけど、どこか憎めないんだよなぁ、これが。  もちろん国に限らず集団のリーダーとして仰ぎたくないタイプであることは明白なんだけど、実に人間臭いというか、フツーっぽいというか・・・・。  読んでいて常に感じるのは


「ああ、いるいる、こういうタイプ・・・・・  特に見た目が可愛い子に多いタイプ・・・・・」


っていうことだったりします(苦笑)。  まあ、一般人にいるこういうタイプの女性は家族とか恋人といったその人を取り巻く小さな集団が、半ば自主的に振り回されるだけだし、それが他の人に大きな影響を与えるわけでもないから、まだいいようなものの、これがなまじ「王妃様」であり、国政で権力を震う一族の娘だから話がややこしくなるわけですが・・・・。

この外伝を読んで、クワンはある意味で本編で想像していたとおりの人物だったことを確認したにすぎなかったけれど、セオの成長期を見ることができたことが大きな収穫でした。  自分にはないものばかりを持つクワンに対する少年期特有の対抗意識、そしてそれを乗り越えた後に初めて培われていく2人の絆に♀である KiKi には踏み込めないある種の「男の友情」を垣間見て、ちょっぴり感動してしまいました。

最後に・・・・・

このシリーズ、中身も悪くないけどやっぱり装丁が素晴らしい!!  KiKi は元々昨今の、特にYA系やファンタジー系の本の漫画チックなイラストには嫌悪感に近いものを感じてしまうタチなんだけど、この本はその点、文句のつけどころがないくらい素晴らしいと思うんですよね。  アジアンテイスト・ハイ・ファンタジーのお手本にしたいぐらいのセンスの良さを感じます。  このシリーズは文庫も出ているみたいだけど、単行本で揃えたいと思わせる「何か」を放っていると感じます。    

  

 

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