ミオよ わたしのミオ A.リンドグレーン

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「さすらいの孤児ラスムス」、「はるかな国の兄弟」、そして今日のエントリーの「ミオよ わたしのミオ」の3編は KiKi が昔読んだことがあるリンドグレーン本の3強でした。  たまたま NHK アニメの「山賊のむすめローニャ」の影響でこの時期に読み始めたリンドグレーン本。  現在発刊されている岩波少年文庫には子供時代には読んだことのない「エーミル」のシリーズや「わたしたちの島で」なんかもあるんだけど、それは又の機会にとっておいて、とりあえずはリンドグレーンシリーズは一旦終了したいと思っています。  本日の KiKi の読了本はこちらです。

ミオよ わたしのミオ
著:A.リンドグレーン 訳:大塚勇三  岩波少年文庫

Mio_Min_Mio.jpeg  (Amazon)

みなしごとしてつらい日々を送っていた少年ボッセは、ある夜、別世界「はるかな国」へ迷い込みます。  王子ミオとなり、白馬とともに残酷な騎士カトーと戦う少年の耳にひびいてきたのは、王である父の声でした。  心ゆさぶる美しい物語。  (文庫本裏表紙より転載)

子供時代にこの本と「はるかな国の兄弟」を読んだ順番は、今回とは逆でこちらの作品が先で「はるかな国~」が後でした。  こちらの「ミオよ わたしのミオ」はあからさまに死については語っておらず子供心に安心して読むことができたように記憶しているのですが、今回の読書では「はるかな国」という言葉そのものに「あの世」のイメージが強烈に染みついているということも手伝って、どうしてもそういうニュアンスから離れることができないまま読み進みました。

そのせいもあったのか、子供時代には「美しさ」として捉えていた一つ一つの描写が切なさや儚さを伴い、読んでいて胸が痛みました。  子供時代にもこの物語を辛い日々を送っていたみなしごボッセの現実逃避の物語として読んでいたようなところがあったのですが、今回はボッセがどれだけ愛情に飢えていたのか、現実世界の唯一の友達ベンカをどれだけ羨ましく思っていたのか、それらの孤独に苛まれた心が夢見ざるをえなかったのが残酷な騎士カトーとの戦いに赴く冒険の物語だったのだということが子供時代よりもはるかに切実に胸に迫ってきました。

どこかもや~っとした淡い光を思わせるものに包まれている美しい「はるかな国」の描写にはこれがある種の夢であることが暗示されています。  そして、あまりに優しい父王の姿やこの世界で得ることができた親友ユムユムや父王からプレゼントされた美しい白馬ミラミスにボッセが現実世界のウップランド通りに残してきてボッセが好きだった人々(馬も含む)の面影があります。

なぜ王様は大好きだったベンカのお父さんによく似ているけどもっと美しく、もっと優しいのか?  なぜ美しい白馬ミラミスは大好きだったビール工場の老馬と同じ目つきをしているのか?  なぜユムユムはベンカに似ているのか?  なぜ「はるかな国」にある家はどの家もおとぎ話に出てくるような家なのか?  壮絶なカトーとの対決に打ち勝ち、カトーに囚われて鳥に姿を変えられていた子供達が皆無事に戻ったのに、なぜ囚われた子供達のために啼いていたなげき鳥が啼きやまないのか?  それらの全てがボッセの孤独の深さを物語り、同時にボッセの絶望が生み出した幻影であることを感じさせます。


そして本書の題名にもなっている「ミオよ わたしのミオ」という父王の言葉。  ここにボッセが心の底から求めているものの本質が全て含まれていることに否応なく気がつかされるのです。  何らかの苦難に陥り絶望しそうになるたびにミオには父王の「ミオよ わたしのミオ」と呼びかける声が聞こえます。  これは少年の心が生み出し、その寂しい心の空洞の中でこだまのように響く切ない呼び声です。  原語では "Mio, Min Mio"。  全ての音に "M" が含まれリズム感もあるこの言葉に込められているのは自分を無条件で信頼し、必要としてくれている親の心であることがひしひしと伝わってきます。  子供にとって常に親が味方でいてくれて自分の身を案じてくれていると信じられる安心感に勝るものはないのだと思わずにはいられません。

懐かしいおとぎ話のようなストーリー展開(特にユムユムが冒険の途中で窮地に陥るたびに似たようなフレーズを繰り返し、その結果何らかの次の展開が自動的に繰り広げられるなど)と、まるで詩のように美しい情景描写が相俟ってさらっと読み流しても「いい物語を読んだなぁ」という感慨を得られる作品になっているように思うのですが、大人が読むともっとずっしりと心に響いてくる作品であるように感じました。  ひょっとするとこの物語、子供のみならず子供と一緒に子を持つ親に読んでもらいたいと念じながら書かれた物語なのかもしれません。  

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このページは、KiKi (Brunnhilde)が2014年11月17日 11:23に書いたブログ記事です。

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