塩野七生の最近のブログ記事

「背教者ユリアヌス」を読んでしまったことにより、再燃してしまった KiKi の「歴史物熱」(笑)  その勢いでこのブログでも長らく放置状態だった「ローマ人の物語」に着手することになってしまいました。  過去において(もうずいぶん前のことにはなってしまったのですが・・・・ ^^;)「ローマは一日にして成らず」「ハンニバル戦記」「勝者の混迷」と読み進め、エントリーも書いていたので、今回は文庫本にして第8巻。  「ユリウス・カエサル ルビコン以前」からの再スタートとなります。

ローマ人の物語 ユリウス・カエサル ルビコン以前 (8), (9), (10)
著:塩野七生  新潮文庫

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生涯を通じて彼を特徴づけたことの1つは、絶望的な状態になっても機嫌の良さを失わなかった点であった。  楽天的でいられたのも、ゆるぎない自信があったからだ。  そして、男にとって最初に自負心をもたせてくれるのは、母親が彼にそそぐ愛情である。  幼時に母の愛情に恵まれて育てば、人は自然に、自信に裏打ちされたバランス感覚も会得する。  そして、過去に捕われずに未来に目を向ける積極性も、知らず知らずのうちに身につけてくる。  (文庫本第8巻カバーより転載)

ガリア戦役の叙述を試みる私は、キケロが軽蔑した「諸々のことをくっつけて歴史を書く馬鹿者」にあえてなるだろう。  なぜなら、カエサルは、相当に事情に通じている同時代人に向けて書いたのである。  (中略)  私は、諸々のことをくっつけながらも、カエサルの叙述の仕方、ないし彼の肉声に、可能なかぎり近づこうと努めるだろう。  なぜなら、私の書こうと試みているのは、カエサルという人間である。  そして、人間の肉声は、その人のものする文章に表れる。  (文庫本第9巻カバーより転載)

カエサル生涯、自分の考えに忠実に生きることを自らに課した男でもある。  それは、ローマの国体の改造であり、ローマ世界の新秩序の樹立であった。  ルビコンを越えなければ、「元老院最終勧告」に屈して軍団を手離せば、内戦は回避されるだろうが新秩序の樹立は夢に終わる。  それでは、これまで50年を生きてきた甲斐がない。  甲斐のない人生を生きたと認めさせられるのでは、彼の誇りが許さなかった。  (文庫本第10巻カバーより転載)

さすが、塩野さんが「永遠の片想いの相手」と公言して憚らない相手、ユリウス・カエサルの物語だけのことはあります。  文庫本にして、全部で6冊!!!  本日読了したのはその6冊のうちの最初の3冊で、世の中に数ある「シーザー伝」の中でも比較的語られることが少ないルビコン以前(「賽は投げられた!」の前)の物語です。  KiKi はね、どうしてカエサルの「ガリア戦役」を書いた本が比較的少ないのか以前から不思議に思っていたのですが、どうやらその責任(?)の一端はキケロさんにあったみたいですねぇ。  「諸々のことをくっつけて歴史を書く馬鹿者」なんて言われちゃあ、塩野さんのように「熱烈な片想い」でもしていなくちゃ、なかなか書き物をしてみような~んていう心意気は湧いてこないものです(笑)

だからこそ・・・・・というわけでもないのでしょうが、カエサルの残した「ガリア戦記」や「内乱期」以前の物語にも章を割いているのが塩野さんのこの「ローマ人の物語」の楽しいところではないでしょうか?  どちらかというとシニカルな目線を持っていらっしゃる(・・・・と KiKi は感じているのですが)塩野さんの真骨頂なのが「カエサルと金」、「カエサルと女」の章だと思うんですよね。  KiKi はね、人の持っている本質的な部分っていうのはそれが「仕事」に於いても、「私生活」に於いても、「恋愛」に於いても共通して表れると思っているんだけど、そういう観点でこの2つの章を読むと「カエサルがカエサルたりえていた本質」が凝縮されているように思うんですよ。

  

ティベリウスとガイウスのグラックス兄弟は、兄が7ヶ月、弟は2年の実働期間しかもてなかったにしても、そしてその間に実行された改革のほぼすべてが無に帰してしまったにしても、成長一路であった時代を終って新時代に入ったローマにとって、最初の道標、つまり一里塚を打ち立てたのである。  これが彼らの、歴史上の存在理由である。  なぜなら、ローマ人も紆余曲折はしながらも、結局は兄弟の立てた道標の示す道を行くことになるのだから。  (文庫本_第6巻帯より)

ルキウス・コルネリウス・スッラは、「元老院体制」としてもよいローマ特有の共和制という「革袋」を、懸命に修繕しようと努めたのである。  あちこちのほころびもただ単に古くなったがゆえであり、丈夫な革きれをあてて補強した革袋の中には、新しい葡萄酒を入れれば、まだ充分に使用可能であると信じていたのだった。 (中略)  「革袋」はもはや捨てるしかなく、捨てて新しいものを創り出すしかないという考えは、彼らの理解を越えていたのである。  (文庫本_第7巻帯より)

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世界史の授業を受けていた頃、ローマ史の中で「ポエニ戦争」と「カエサル」とその後のアウグストゥスから始まる帝政と五賢帝の時代だけはそこそこちゃんと勉強した自負もあり、そこそこどんなお話も「そうそう、こういう時代だと習ったっけ・・・・。」というような記憶があるのですが、「ポエニ戦争後」から「カエサル登場」までの時代に関することに関してはまったく記憶の欠片にありません。  おおかたその時代を扱っていた授業の時は気を失っていたか、友達に代返を頼んでクラブの部室に篭っていたか、はたまた思春期に入ったばかりで気になる異性のことで頭がいっぱいだったのか、のいずれかであろうと思われます ^^;  

本当であれば「習ってないよ!」と嘯きたいところなんですけど、今 KiKi の手元にある山川出版の参考書(詳説 世界史研究 2003年第11刷)を見る限りでは「内乱の一世紀」という標題で約1ページが割かれているのできっと授業でも何らかの説明があったことでしょう。

で、塩野さんのタイトルが「勝者の混迷」で山川の参考書のタイトルが「内乱の一世紀」ですから、ゴタゴタ、グチャグチャ、斬った張ったのハチャメチャな時代であったこと間違いなしです。  と言うことで、安定成長の時代よりはこういうドロドロした時代に興味が出てきた最近の KiKi にとっては楽しみなシリーズに突入です。

文庫本で2冊のこのシリーズ、1冊目はグラックス兄弟の悲劇と主にマリウスの時代を、2冊目はマリウスとどことなく似ているところもありながら、でも実態はおそらく相反する個性を持っていたと考えられるスッラの時代とそれに続くポンペイウスの時代を扱っています。

う~ん、どんな人たちで何をしたのかはまったく記憶にないけれど、上記の名前だけを見ると、どこかで聞き覚えのある名前ばかり・・・・。  っていうことは、やっぱり受験勉強の丸暗記では何か覚えたことがあるんだろうなぁ・・・・。

 

 

知力では優れていたギリシア人なのに、経済力に軍事力にハンニバルという稀代の名将までもっていたカルタゴ人なのに、なぜローマに敗れたのか。  それを、プロセスを一つ一つ追っていくことで考えていただければ、著者である私にとってはこれ以上の喜びはない。  この第Ⅱ巻(文庫 3・4・5)でとりあげる時代は第Ⅰ巻で述べたローマ人の築きあげたシステムが、その真価を問われる機会でもあったからである。 (文庫本_第3巻帯より)

紀元前218年の5月、29歳のハンニバルは、準備した全軍を率いてカルタヘーナを出発した。 (中略)  大軍を率い象まで連れてアルプスを越えたハンニバルこそ、その後の2,200年、歴史に興味を持たない人でも話には聴いている、有名な史実になった。  だが、彼は2,000年経った後でも拍手喝采されたいために、あの冒険を行ったのではない。 (中略)  なぜアルプス越えを強行したのか、という疑問が頭をもたげてくる。  (文庫本_第4巻帯より)

二人の武将は、左と右に分れて丘を降りた。  史上有名な「ザマの会戦」は、明朝を期して決行されることになったのである。  これは、カルタゴ対ローマ、五万対四万の会戦であることの他に、戦略戦術の上での師と弟子との、はじめての対決でもあった。 (中略)  「ザマの会戦」は、戦役の行方を決すると同時に、地中海世界全体の将来をも決する戦闘になるのである。  (文庫本_第5巻帯より)

 

   

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古代ローマ史の圧巻といえばやっぱりポエニ戦役ですよね~。  実は塩野七生さんが「ローマ人の物語」の執筆を始めたというニュースを聞いたとき、KiKi が一番楽しみにしていたのがこのローマ vs. カルタゴの戦いの物語。  象を連れてアルプス越えをしたハンニバルのお話を是非じっくりと読んでみたかったのです。  彼女じゃないけれど世界史の教科書(および参考書)ではあまりにもあっさりと通り過ぎてしまうこの世界史上の大事件、単行本で一冊丸々、文庫本にして三冊の物語がどんな風に紡がれるのか、興味深々でした。


いや~、圧巻でした。  地図やら布陣図やら図表がそこそこ盛り込まれているために、とってもわかりやすかったし、著者一流の筆致により、ナポレオンが尊敬していたと言われるハンニバルの人となりも、漠然とではあるもののわかってきたような気がしました。

とにかく冒頭が素晴らしいんですよ。  第一次ポエニ戦役がなぜ勃発したのかについて書き起こしている部分の説得力たるやものすごいものがあるんです。  もちろん KiKi も世界地図ぐらいは何度も見たことがあるし、世界史の授業を受けたときには山川出版の図録(年表とか地図がいっぱいの副読本?)を穴の開くほど眺めていたつもりだったけれど、彼女の以下のような記述に勝る状況判断が自力でできた例がないんですよね。

 

長靴を思わせるイタリア半島の「つま先」に、今にも触れそうな感じでシチリアがある。  イタリア本土とこのシチリア島をへだてる海峡は、シチリア最東端の都市メッシーナの名をとって、古代からメッシーナ海峡と呼ばれてきた。  最短距離ならば、わずか3キロ。  本土側の連絡船の発着地ヴィラ・サンジョヴァンニからメッシーナの港まででも、7キロしか離れていない。  この間を結ぶ連絡船に乗れば、コーヒーを注文して、それをゆっくりと飲み終る頃には着いている。

 

そりゃ、近いわ!  コーヒー一杯分の距離に危機が迫っていたら、そりゃ、焦るだろう!  しかもそれが本土防衛のための前哨線であれば何とかしなくちゃいけないと思うだろう!!  で、本来であれば本土防衛のために始まったはずのポエニ戦役がハンニバルという稀代の戦術家&打倒ローマに燃える気概に触れちゃったら、戦争が長引くこともあるだろう!!  まして、本土に上陸されちゃったら「何とかしなくては!」という防衛意識にも火が点いちゃうだろう!!!

 

 

知力では、ギリシア人に劣り、体力では、ケルト(ガリア)やゲルマンの人々に劣り、技術力では、エトルリア人に劣り、経済力では、カルタゴ人に劣るのが、自分たちローマ人であると(中略)ローマ人自らが認めていた。  それなのに、なぜローマ人だけが、あれほどの大を成すことができたのか。  一大文明圏を築きあげ、それを長期にわたって維持することができたのか。(中略) あなたも考えてほしい。  「なぜ、ローマ人だけが」と。  (文庫本_第1巻帯より)

ローマ人の真のアイデンティティを求めるとすれば、それは開放性ではなかったか。  軍事力や建設面での業績は、それを確実にするためになされた表面にあらわれた現象であって、それだからこそ、ローマ戦士の軍靴の響きはとうの昔に消え、白亜に輝いた建造物の数々も瓦礫の山と化した現代になってなお、人々は遠い昔のローマを、憧れと敬意の眼差しで眺めるのをやめないのではないだろうか。  (文庫本_第2巻帯より)

 

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ローマの誕生からポエニ戦争の少し前までを扱ったこの2冊。  この本を KiKi が読んでみる気になったのは上記引用した第1巻の帯に書かれている著者本人の言葉に強烈に好奇心がくすぐられたからでした。  「確かに、なぜローマ人だけが・・・・?」と。

 

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